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パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-129
痛恨の敗戦の後、絶望を叩きつけられましたが、残金8万7千円が入っている財布を見て改めて勝負することを考えます。私は導かれるように地獄へ突き進んでいきました。
※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。
裏切り
駐車場に車を停め、部屋まで歩いています。
いつもなら寝ているはずのミィが起きて待っている気がして、少しドキドキしました。
部屋の前に着き、音をたてないようにそっと鍵穴にカギを挿し込み、ゆっくりと回します。
”カチッ”となった瞬間、なんともいえない気持ちになりました。
幸いにして部屋の電気は消えています。
いつもの通り、ゆっくりと寝息をたてているミィを見て少し安心していました。
シャワーを浴びながら明日の朝、ミィに言われることを想定しながら言い訳を考えました。
ベッドに入り、少しだけひんやりとした部分に体を滑り込ませると、今まで寝ていたミィが目を覚ましドキリとします。
「あ、まさくん・・・。お疲れ様・・・」
そういうとまたすぐに眠りに入っていきました。
そんな彼女を見ていると、心の奥で何かがうずきます。
私の行動全ては彼女を裏切る行為です。
なんだか、自分の存在が許せなくなってきます。
しかし、ここまで来て正直に打ち明けるわけにはいきません。
私がしなければいけないことは、パチンコ・パチスロで勝ってミィのカードから引き出したお金を元通りにすることです。
いつもならゆっくりと聞こえてくるミィの鼓動を感じながらスゥーっと眠ることが出来るのになかなか眠りにつくことができませんでした。
様々な不安が押し寄せてきます。
自分の支払いは、何も済ませていません。
10日経つと闇金の支払いも待っています。
早く抜け出したくてたまりませんでした。
気がつくと数ヶ月前まで苦しみ、やっとの思いでミィに助けられ普通の生活ができるようになったのに、また同じことで苦しんでいるのです。
そして、私の中にある思いが駆け巡ります。
「マタ、ツラクテクルシク、キョウフヲカンジテ、イキテイカナキャイケナイノカ・・・」
久しぶりに感じるこの感覚がさらに私を狂わせていきました。
朝になり、目を覚ますといつもの通り、キッチンに彼女が立っています。
ほとんど眠れず、重たい頭が不快でした。
「あ、まさくん、おはよう。早く用意しなきゃ遅れるよ!」
「あ、うん・・・。わかってるよ・・・。」
彼女の少しぶっきらぼうな言い草に少し”イラッ”とします。
最近は、以前のような優しさを感じなくなりました。
近くにいるのに孤独を感じます。
気持ちが通じ合わないような、嫌な雰囲気・・・。
おそらく私のせいでしょう。
ミィは何も変わっていないはずです。
それなのにきっと私より孤独を感じていることでしょう。
本当はもっと私と楽しく暖かい生活をイメージしていたはずです。
最近は2人の時間が特に減っていました。
彼女は私の仕事が忙しくしょうがないと思って我慢しています。
闇金から借金をし、取立てに苦しみ、車で生活をするような状況のなかから、なんとか立て直そうと頑張っている私を何も言わず信じているのです。
だからこそ、私のためにカードで借金をし一緒に生活することを受け入れたはずです。
その時の彼女にとって、それしか方法がありませんでした。
私は、その思いとは真逆の行動をとっています。
言ってみれば”裏切り”の思いと行動を彼女は知らずに受け止めているのです。
彼女の孤独は、そこから生まれているでしょう。
シャツのボタンを留め、ネクタイを結んでいるとミィがおにぎりを握りながら私に話しかけてきます。
「まさくん。私のやつ、支払いしてきた?明細ちょうだい」
本当は全てバレている気がして、彼女を見ることができませんでした。
129話終了です。
あと、もう少し続きます。