パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-119
闇金の返済日を明日に控え、やむなしに新たに闇金で借金をします。借りた金額は3万円。返済は可能ですが。その後には5千円しかのこりません。そして10日経つとすぐに支払日が来るのです。追い込まれた私がとった行動は・・・。
※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。
正夢
ミィにメールを入れた後、すぐにバイト先に電話をいれ休む旨を連絡します。
いくらなんでも、休みすぎです。
そろそろクビになるのではと少し心配になりました。
しかし、一度パチンコ・パチスロへのスイッチが入ってしまった私は、考えを改めることはできません。
向かう先は、いつっもの場所でした。
資金は3万円。
遊びで打つには十分な軍資金ですが、勝たなければいけません。
たとえ少しでも勝つしかないのです。
軍資金が2万5千円を下回った場合はその時点でジ・エンドです。
いつもの通り入り口のドアが開くと。雑音が全身を包みます。
緊張感が希望に変わる瞬間のようで心地よさを感じました。
しかし、これは幻です。
心の奥でそう感じながらもそれを無理やりかきけしました。
この時点から正常な脳の動きが、別のものにかわっています。
だんだんと白く変わっていく記憶のなかで、興奮だけがグルグル全身を駆け巡っていくのです。
自分だけ時間の流れがゆっくりになった気がしました。
ここから記憶という脳の機能が一時的にストップします。
どのくらい時間がたったかわかりません。
車に戻ると、先ほどまであった3万円がキレイになくなっていました・・・。
何も感じることができません。
苦しみも恐怖も全て感じることがなくなりました。
それどころか、自分自身さえもなくなったようです。
すべて終わりのような気がしてきます。
案外、終わりというのはあっさりしているものだと思わずつぶやき、コンビニの駐車場に車を移動させバイトが終わる時間にアラームをセットし、眠りにつきました。
夢を見ています。
いつかミィがもう一度行きたいといっていた海の近くです。
車を走らせていると、助手席でミィがはしゃいでいます。
それを私はただ微笑み見つめています。
楽しそうな彼女をみて、ただただ幸せを感じていました。
明かりの少ないトンネルの向こうに小さな光が見えてきます。
その向こうには、目的の海が広がってました。
トンネルを抜け、道路脇に車を止めると真っ先にミィがドアをあけ、砂浜に向かってはしっていきます。
「まさくーん、早くっ!」
季節はずれでだれもいない海岸線で彼女が叫んでいます。
私は車のキーを外しドアをしめると、小走りで彼女に近寄っていきました。
「ちょ、ちょミィっ!」
彼女は私の言葉に耳を傾けずひとりで海の中に入っていきます。
あわてて捕まえようとすると、彼女はいません。
「えっ・・・」
私は、一人で波打ち際にたたずんでいます。
波が来るたびに私の足が濡れていきます。
不思議と冷たさは感じません。
急に不安と恐怖に全身がつつました。
そして、後ろに気配を感じます。
ハッとして振り向くと男が立っていました。
「逃げられると思ってんの?」
恐怖の中へ
朝起きるとさらに現実が襲ってきます。
今日支払うお金がありません。
重い鎖がさらに全身を強く締め付けていきました。
「どうしよう・・・」
どうすることもできません。
「ま、まさくん・・・どうしたの・・・?」
「あ、う、うん・・・」
「顔色悪いよ・・・具合悪いの・・・??」
「いや、大丈夫だよ・・・ごめん、ちょっと疲れてるのかも・・・」
「会社休んだら・・・?」
「いや、大丈夫だよ」
「・・・うん」
ミィが心配するほど憔悴していたのでしょう。
彼女に対する罪悪感も重なり、さらに深く私の気持ちは沈んでいきました。
熱いシャワーを浴びながらも私を締め付ける重たい苦しみは、消えることがありません。
いつものようにミィを送ったあと会社に向かいます。
重たさは消えませんが、なぜか闇金の重圧感を感じなくなっていました。
あまりにも追い詰められ、脳の機能がエラーを起こしたようです。
今日この後、闇金の支払いなどない気がしてきました。
次第に体も軽くなっていきます。
いつもの通りに営業に向かうことができました。
そして、一件目の営業先から出て車に戻った時、携帯電話が激しく震えだします。
電話番号を見ると闇金でした。
全身の毛穴から恐怖が噴出してきます。
そして体から力が抜け、また重い鎖につながれ身動きができません。
脳の動きもストップします。
「どうしよう!!!」
「やばい!!」
「どうしよう」
「どうしよう」
携帯電話の震えはとまりません。
「どうしよう」
「どうしよう」
電話にでても言い訳が思いつきませんでした。
今、頭にあるのは恐怖だけです。
そして、一度着信が止むと、すぐにまた携帯電話が震え出します。
しかし、電話にでることができませんでした。
体が硬直し、車を動かすことさえできません。
携帯電話は、それでも震え続けます。
10分が経ったころ、やっと鬼のような着信が止みます。
私はホッと胸を撫で下ろし大きく深呼吸をしました。
少しだけ頭の中が動き出し、思考し始めます。
ここで「ハッ!」としました。
もしかすると会社に電話をかけられるかもしれません。
また、脳の動きが止まりパニックになりました。
会社にバレるわけにはいきません。
どうしたらいいかわからなくなりました。
「どうしよう」
「どうしよう」
「どうしよう・・・」
すると、また携帯電話が震えだします。
電話番号をみると会社でした。
とりあえず、電話にでます。
「あべです、お疲れ様です」
「おつかれさまですぅ~」
佐々木さんではない事務員です。
「なんか、男性の方なんですけど折り返し電話希望というかたから連絡ありましたよ」
「あ、あ、はい・・・」
「じゃぁ、電話番号いいますね、△2□ー×5×6、木村さんという方でした」
「は、はい・・・すいません」
「はい、ではお疲れさまです」
闇金の電話番号でした・・・。
このまま闇金に対して無視を続けると、大変なことになることを察知します。
私は意を決しました。
改めてその電話番号でいっぱいになった着信履歴を確認すると、リダイヤルボタンをおします。
すぐに低い男の声が響きました。
「はい、地獄金融」
119話終了です。
もう少し続きます。