パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-122
恐怖と苦しみの中、ギリギリで返した、闇金の返済。ひとときの安心感に包まれましたが、またすぐそこにある、地獄に私は気付いていませんでした。
※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。
欠片
ちいさな雪の粒が、舞い散るなか、エンジンを止め入り口に向かいます。
また、絶対に勝たなければいけない状況でしたが、それよりも”ただ、打ちたい”ということに支配されていました。
大きな、恐怖や苦しみの後に来る、この瞬間がとても心地よく感じます。
ザーっという雑音に体が包まれると、いつもと同じく苦しみなどない気がしました。
ゆっくりと飲み込まれる、甲高い音やノイズが心地よく体の奥に染み込みます。
そのまま、スロットの島に足を運び、サンドに札を吸い込ませメダルが下皿に置かれるとそこからの記憶は、遠くに消えていきました。
時間の感覚は、この”場所”だけのものです。
どのくらいの時間が経ったのかわからなくなり、財布のなかから綺麗に札が消えた時、いつものように無心で席を立ち、この時間の流れが終わりを告げます。
22時が過ぎ、車に戻ったあと気持ちと体が大きく切り離された気がしました。
「なんでだよ・・・」
投資2万5千円。
引いたのはレギュラーボーナス一回のみ。
いつものことですが満たされることは、ありませんでした。
気持ちも財布のなかも・・・。
全てカラッポです。
大きくため息をつき、エンジンキーを回します。
窓に張り付いている小さな粒の氷が気になりましたが、気にせず車を走らせました。
そのまま家路に向かいます。
せめてもの救いは、9日後に来る闇金の支払い時に給料日があることです。
ジャンプであれば何とかしのぐことはできます。
しかし、元金は残ったまま。
その10日後には、同じ苦しみを味わいます。
また、支払いを済ますと手元にはお金が残らないでしょう。
それに、ミィのカードから勝手に引き出した借入残高は減ることがありません。
それを想像するだけで、改めて恐怖と苦しみが全身を支配しました。
「いいかげん、ミィのカードにお金を戻さないとバレてしまう・・・」
「闇金も早く返さなければ・・・」
「給料なのに何ものこらない・・・」
「パチンコ・パチスロが打てない・・・」
「ということは、借金返せないじゃないか・・・」
ネガティブな想像に、気持ちが押しつぶされそうになりました。
駐車場に入ると、昼間に降り積もった雪が私の車を停める場所に積もっています。
軽くでも除雪をしなければ、いけません。
「クソっ!ついてないっ!!」
日中、少し気温が高く、夜になると冷え込んだため、硬く重くなっている雪がよけいに私の心を重く沈ませました。
重くなった雪をスコップで掻きながら、頭に浮かぶのは、恐怖や苦しみのことばかりです。
いつ、バレるかわからない、ミィのカードから勝手に引き出した10数万円。
闇金に借金をした金額、5万×5万×3万で合計13万円。
これをなんとかしなければ、この先ずっと恐怖と苦しみは私の体を支配し続けるでしょう。
ここから逃れるためには、一気にケリをつけるしかないのです。
その方法の行き着く先は・・・パチンコ・パチスロでの勝ちしかありません。
しかし、その軍資金は底をついているのです。
周りが全て覆われて身動きができませんでした。
前にも後ろにも横にも動けないのです。
全てが終わりのような気持ちになります。
重たくなったスコップを動かす力が残っていませんでした。
まだ、積もった雪が残ったまま強引に車を所定の位置に収めます。
車の底に固まった雪がすれる音がなんとも不快です。
見上げた空のように、真っ暗な闇はさらに漆黒へと染まっていきました。
大きなうねりに身を任せるだけです。
その先には、想像しがたい現実が潜んでいます。
もう、プライドの欠片も残っていません。
122話終了です。
もう少し続きます。