パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-41
打てないことにより、”ピンチ”を回避していた私でしたが、それもいつまでも続きません。今度は思いがけず、「打てないはずの状況」から一変して「打てる状況」になったのです。その状況に私は思わずテンションを上げました。まだまだピンチは続いて絶対に負けられない状況ですが、私はどういう行動をとっていくのでしょうか。
※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。
フェイク
ミィが仕事が忙しく今日会う予定でしたが、会えなくなりました。本来はパチンコが打てないはずでしたがこれで打つことが出来る状況です。
私はとてもテンションがあがりました。パチンコ・パチスロが打てる時には、違和感は陰を潜めてくれます。
パチンコ屋の駐車場に車を停めて、小走りでホールの中に入っていきます。私はじっくり台を吟味する余裕はありません。とにかく早く打ちたくてしょうがない気持ちでした。
しかし今日はイベント日のため、店内は混雑しています。空き台を探すのは大変でした。しかも冷静に考えると財布の中には1万3千円しか現金がありません。当然これが全財産です。消費者金融も限度額がいっぱいです。ミィにも3万円借りているので、改めて借りるのは、ほぼ不可能でしょう。
パチスロコーナーを見ましたが、満席でした。パっと見ですが、どの台もすぐには空きそうもありませんでした。
しょうがなくパチンコの島に向かいます。するとパチンコもほぼ満席になっています。しょうがなく店内をウロウロしていました。
私は焦っています。やっと打てると思っていたパチンコが思わぬところで足止めを食らっているのです。わたしは少しずつイラつき始めています。この時、勝つことはどうでもよくなっていました。絶対に負けられない戦いでしたが、私の一番の目的はなんでもいいので、パチンコ・パチスロを「打つこと」になっていました。
10分ほど店内を回り、私は店を出ようとしました。他のパチンコ屋に移動を考えたのです。その時一台のパチスロに座っていたサラリーマンがボーナス終了後に席を立とうとしています。台はいつも打つキングパルサーでした。
「あ、あのうヤメるんすか?」
「あ、はい。打ちます?」
「イイんすか!?」
キングパルサーはボーナス後128ゲーム以内に連チャンする確率が約70%以上あります。これはラッキーだと思いました。もちろん連チャンしないことも考えられますが、これを打たない手はありません。
サンドにお金を流し込み、気合を入れてレバーを叩きました。
ここで勝たなければ、支払いができません。このチャンスは間違いなく自分に運気が向いている感じがします。
気がつくとすでに90ゲームを超えていました。少しずつ焦りの色が出てきます。
「お、おかしいな・・・」
台のデータランプを見ると5連チャンしていました。ストック切れも考えられます。
「いや、大丈夫だろう・・・128ゲームまでに連チャンするはず」
しかし110ゲームを超えても、反応はありません。連チャンゾーンの128ゲームに向けてレバーを叩く手にも、ストップボタンを押す指にも力がはいります。
125ゲーム・・・・
126ゲーム・・・
127ゲーム・・
128ゲーム・・・・。
ボーナスは来ませんでした。
ケツイ
この時点で投資は4千円。財布の中の残金は9千円。私は続行するか迷いました。ストック切れの可能性もありますし、9千円では当然天井までは回せません。
私は席を立ちました。珍しく冷静な自分がそこにいました。しかし私はパチンコ依存症です。本当に冷静ならば、台を改めて吟味するか、ここで終了にするべきです。
一万円しか資金がないのですから、勝とうと思うのであれば終了すべきです。またイベント日のため良い台は空きそうにありません。
私は店内を回り空き台がないか探します。しかし先ほどからあまり時間が経っていないのもあり状況はさほど変わりませんでした。空き台はほぼ無い状態です。
それでも10分くらい店内を歩いていると一台空いているのを見つけました。急いで車の鍵を上皿に投げ入れます。
台は吉宗(もちろん4号機)です。データランプをみると290ゲームで捨てられています。履歴を見てもモードは読めませんが、565ゲームまでのゲーム数解除に期待しました。
4号機の吉宗はビッグボーナス一回の出玉が最高で711枚でそれが天国モードに入れば早いゲーム数でのボーナスが期待できて最高でも193ゲーム以内のボーナスが期待できます。
リスクはかなり大きい台でしたが、ツボに入れば短時間で5千枚、6千枚と獲得することが可能でした。未払いの支払いも一気に返せるということです。
しかし、思っている565ゲーム以内にボーナスが来るゲーム数が選択される可能性は約10%ちょっと。冷静になれば打つべき台ではないのは明らかでした。
しかし、一気に勝てるかもしれない何の根拠も無い期待と、早くパチスロを打ちたい衝動が冷静な判断を鈍らせました。
もっと言うと、この台を打つならば先ほど打っていたキングパルサーの方が、当る可能性は高いはずです。
私は少し震えながらコインサンドに札を流し込みます。札を流し込んでコインが出てきた時にもう後には引けないと心を決めました。
ゲーム数が進んでもほぼ反応がありません。途中一回だけ高確率(ゲーム数解除の前兆ゾーン)に入りましたが、あえなく外れました。
そして、530ゲームが過ぎた時2回目の高確率に入ります。
私は一心不乱にレバーを強打していました。ボタンを押す指にもいつも以上に力が入っています。
「た、たのむっ!当ってくれ!!」
願いは届かず、ハズレでフィニッシュです・・・。
またもや絶対に負けられない戦いに敗れました。呆然として怒りも沸いてきません。そして財布の中には、小銭が少し・・・。
さらに深い地獄への入り口に立っていました。
部屋に着きスーツを脱ぎ捨てるとすぐに布団に潜り込みます。もうどうしたら良いかわかりませんでした。
ここで今までに数え切れないほどつぶやいた一言が口から出てきます。
「もうパチンコやめよう・・・」
私は心底後悔しました。「あの時そのまま店をでていれば」「キングパルサー128ゲーム抜けた時で帰っていれば」「そもそもパチンコを打ちに行かなければ・・・」しかし過去を変えることはできません。
どんな結果であれ、支払いは溜まっていきます。家賃は今月払わないと2ヶ月分滞納です。携帯も同じく2か月分、ガス代も水道代も同じでした。そしてミィには3万円です。
何よりも次の給料日まで収入はありません。そうなると食事代もないということになります。
全てが上手くいっていません。予定ではパチンコ・パチスロで勝ち、滞納分の支払いを全て終わらせるつもりでした。
私は少し冷静になり考えます。
「そもそもパチンコは勝てない。その証拠に今までいくら負けてきたんだ。消費者金融の借金だってほとんどがパチンコの負け。て考えると200万近いじゃないか・・・。いや闇金とか考えるともっとか」
ここで私を苦しめているのは、改めてパチンコ・パチスロと考えます。そして今まで何度も気付きながらも止められない自分の弱さを責めました。
「ダメだオレは生まれ変わろう。絶対にもうパチンコ・パチスロは打たない!」
私はパチンコ・パチスロを自分の生活を犠牲にしてまで止められないのは、自分の弱さやだらしなさと思っています。今までもそう思ったことはありましたが、プライドが邪魔して気付かないフリをしてきました。
そして私はその弱さを克服し性格を改めようと決意しました。こんな情けない気持ちになるのは、もうまっぴらだと思ったのです。
しかし私は気付いていません。私はパチンコ依存症・パチスロ依存症なのです。私の根底にある問題は、自分の弱さや性格の問題ではありませんでした。このことに気付くのは数年先になります。そしてこのことが、さらに地獄の苦しみに私を導いていきました。
興奮し中々寝付けないなか、改めてたくさんの不安が押し寄せてきます。未払いの支払いのこと、ミィへの借金、そして今月の生活費。
私は不安に何とか立ち向かおうとしました。どうにかしようと思えばどうにか出来ると無理やり考えます。
もちろん何も根拠がなく、何も術もありませんが、とりあえず気持ちだけは保とうとしました。
携帯電話のメールが鳴ります。
「今、帰ってきた!疲れたー。まさくんもう寝たかな?おやすみなさい」
この瞬間、少し怖くなります。ミィにも3万円返さなければいけません。何とか不安に耐えていた気持ちが崩れそうになりました。
私はすぐに携帯電話を閉じ、返信をしませんでした。
こんな時私は優しい気持ちになれません。そして早くも先ほどの決意の気持ちが消えそうになっています。
41話終了です。
典型的なパチンコ依存症・パチスロ依存症の症状です。お金のピンチをパチンコ・パチスロで何とかしようとしています。とくに打てない状況が続き、それが打てる状況になった時には、勝ち負けよりも「打つ」ことを優先してみさかいがなくなってしまいますね。
もう一つ「もうパチンコ止めた」これはパチンコ依存症のお得意のセリフですね。すぐになくなる決意になりますが・・・。
状況をさらに悪くした私ですが、本当の地獄はこれからです。
まだまだ続きます。