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パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-9

ついに闇金の返済日。

しかしお金はありません。

その旨闇金に連絡すると、とりあえず来いと呼び出されます。

相手は闇金です。

何をされるかわかりません。

絶体絶命のピンチ!

この状況をどう乗り越えるんでしょうか?

※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。いやほとんど実話です。名前や団体名、組織名等は仮名になってます。読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。

入り口

階段を上りながら徐々に恐怖が増してきます。

この後何が起こるか分りません。

なぜだかわかりませんが、ここで私はある行動をとります。

階段を上りきり踊り場のところでおもむろに携帯電話を取り出しました。

「削除完了・・・」

電話帳に入っている彼女の連絡先、着信履歴、メールの履歴を全て削除しました。

この時私は「彼女だけは絶対に守らなくてはいけない」という気持ちに駆られたんだと思います。

なにをされるかわかりません。

この時自分ができるのは、自分の中から彼女の存在を消す事です。

そうすれば相手に知られる事はありません。

逆にそうしないと彼女の事を守る事はできませんでした。

ここでも私は無力です。

入り口の前に立ちノックした瞬間、一瞬どうにかなるような気になりました。

相手も人間です。

しかも、無い袖は振れません。

たかだか75,000円位でなにかする訳無いはずです。

相手にとっても少しまって回収した方がいい筈です。

「すみません3日、いや2日待ってくださいなんとかします」

「あぁっん!で大丈夫なのか?」

「だ、だいじょぶです」

「しょうがねぇな。じゃぁ3日待ってやる利息はもらうぞ」

「は、はいありがとうございます」

「よし、じゃぁ行け」

「はい失礼します」

・・

・・・

・・・・・そんなわけありません。

恐怖

おそるおそるドアをノックしノブをひねります。

「しつれいします・・・あべです・・・」

「おう座れ」

「は、はい」

「で、金ないって?」

「・・・はい」

この時すでに先ほどまでのお気楽な妄想は吹き飛んでいました。

そして、ここに来たのを後悔していました。

次の瞬間!

ダーンっ!

机に思い切りこぶしを振り下ろします。

「なめんじゃぁねぇーぞゴルァッッ!!!!!」

「おめぇが返すっつーから貸したんだろうが!それが金ねーだ?あん?都合いいこと言ってんじゃねーぞ」

あまりにもの唐突な出来事に背後にもう一人寄ってきている存在に全く気がついていませんでした。

ガシャーン!!

背後の一人が私の椅子を蹴り上げました。

私は床に転げ落ちます

「すっすいません、どうにかしますどうにかします」

「はぁ?適当な事いってじゃねーぞごらぁ。どうにもできなくて金ないっつって来てんだろうが」

「俺らは普通の金融屋じゃねえ。お前がどうなろうと絶対に回収する。」

「い、いや、まだ連絡ついてない友達とかいます。その人から借りれるかもしれません」

「はぁ?かもしれませんだぁ??お前まだふざけてんのか?」

「いやっ絶対大丈夫です。すいませんすいません」

「信用できねぇ」

「連絡つけば連絡つけば大丈夫です」

「じゃぁ早く連絡しろ」

「は、はい。でもまだ仕事中みたいで何度か携帯に電話は入れてるんですが・・・」

初めての経験でした。

こんなのは漫画や映画の中の出来事だと思っていました。

ただ、確実に言える事はこの人たちは私の事を人間だと思っていません。

本当にどんな事があってもどのようにしても回収するというのは嘘ではなさそうです。

早くどうにかしてこの場を立ち去らないといけません。

「す、すいません」

「なんだ」

「できるだけ早く借りるためにその人の職場の近くで待とうと思います・・・」

「ダメだ」

「えっ?」

「本当にお前が金、用意できるまで一歩もここからださねぇ」

もう一人の男がまくし立てます。

「返すっつーから金貸したのにその日にありませんって言うようなやつ信用しねぇんだ!」

正論です。

ぐうの音も出ません。

私は待つしかありませんでした。

ちなみにその連絡しようとしている人とは2年近く会っていませんしそれほど仲が良かったわけではありません。

久しぶりに連絡してきてお金を貸してくれと言われてすぐに貸してくれるような間柄ではありません。

それでも賭けるしかありませんでした。

今、自分は頭の先から足の先まで恐怖に支配されています。

「本当にどうなんってしまうんだろう・・・」

心底後悔しました。

しかし、自分のやった事を反省する余裕はなくこの状態から早く抜け出したいと言う気持ちだけです。

この後二人は一旦いなくなり私は携帯電話を握り締めて電話が来るのを待っています。

15分・・・

30分・・・

一時間・・・。

電話が鳴る気配は一向にありません。

一時間半・・

二時間・・・。

その間も薄暗い事務所の中には怒号が響きます。

「○○さん今日支払日。どうしたの?なんだゴルァふざけんなよ○△×□☆◎っ!!」

「テメェゴラっっぜってーゆるさねーぞ」

その度に自分はビクつき体の力が抜けていきました。

そして3時間が過ぎた頃先ほど私の椅子を蹴った男が近づいてきます。

時間は19時をまわっていました。

「もう待てねぇ。」

「えっ!?」

「用意しろや」

「金用意できないんだろ。じゃやあしょうがねぇ作らせてやる。言っただろどんな事しても回収する。お前がどうなろうとしらねぇ」

もう全てが終わりました。マグロ漁船に乗せられるんでしょうか。

タイに行って腎臓でも売られるんでしょうか?

漫画で見た強制労働施設に売られるのでしょうか・・・。

そんな事は無いと思っていました。

話には聞いた事はありますが都市伝説だと思っていました。

しかし、先ほどまでこの世の物とは思えないほどの怖い顔していた二人が哀れみの顔で私を見つめています。

この時私の中の恐怖は限界点を超えました。

もう自分の中で恐怖を上手くコントロールできない状態です。

そういう時、人間は全てを受け入れます。

受け入れると言うよりは「諦めてしまう」という感覚です。

初めての感覚でした。

「早くしろ」

「はい・・・」

この時私は携帯電話を握り締めながらこう思います。

「最後にあいつと話したかったな・・・」

そう考えると涙が一粒だけ頬を伝いました。

そして立ち上がった時です。

「!」

「ちょっとまってください!!」

ポケットの中の携帯が生き物のように震えています。


9話終了です。

当時の事を思い出すと吐きそうになりますね(苦笑)

自分の馬鹿さ加減、パチンコ・パチスロ依存症の恐ろしさ・・・。

そして闇金融の恐ろしさ。

当時はかなり社会問題化していて残念ながら取り立ての厳しさから命を落とす人もいっらしゃいました。

最初の頃は警察も「民事不介入」といってまともに取り合ってくれませんでしたね。

うーむ・・・。

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