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パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-128

思惑が全て外れた勝負に負け、打ちのめされた気持ちで店を後にしました。今までに感じたことのないほどの脱力感に包まれ家路につきます。

※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。

タイムリミット

雪がちらつく中、停めている車に向けてトボトボと歩きます。

車の窓に張り付く雪のように真っ白でした。

車に乗り込み、冷え切った社内で財布を確認します。

ここに来る前にあった13万円は8万7千円になっています。

マイナス4万3千円。

それよりも、私の心を追い込んだのはミィのカードのことでした。

「どうしよ・・・ミィに明細渡せないや・・・」

今日は直接バイトに行くことになっています。

このまま時間をどこかでつぶさなければいけません。

「フゥ・・・」

大きなため息の後、エンジンキーを回します。

フロントガラスに薄く張り付いた氷の膜が、駐車場に設置されているライトに照らされてとても綺麗に見えました。

いつもバイトをサボり、バイトが終わるまでの時間をつぶす場所に行き車を止めます。

何か策を練らなければいけませんが、頭には何も浮かびません。

黒いモヤがグルグルとうごめいているだけです。

とりあえず携帯電話のアラームを本来バイトが終わる時間にセットし、眠りにつこうとしましたが、なかなか寝付けませんでした。

「ふう・・・」

出てくるのは良い策ではなくため息だけです。

私は眠るのをあきらめ、改めてどうすれば良いか考えます。

しかし、やっぱり良い考えは浮かびません。

当然です。

どんなに考えても、財布にあるお金は増えません。

この当たり前の事実に打ちのめされそうになります。

そして帰った後、ミィにどんな言い訳をすればよいかという不安が生まれてきました。

先月は何とかごまかすことができましたが、今月は無理でしょう。

ミィにも明細を渡すように言われていました。

帰ってすぐは寝ているでしょうが、明日の朝に渡さなければ言われるはずです。

その時、最適な言い訳が必要になります。

「どうしよう・・・」

ここで「ハッ」としました。

本来はバイトにいっているはずなのです。

ギリギリまで残業が続いて、そのままバイトに行ったことにしようと思いました。

それで今日は支払いができなかったことにすればいい・・・。

本来の支払い日までは、まだ”5日”あります。

それまでに返済すれば問題ないはずです。

ミィには、そのように言い訳をし、何とかしのごうと思いました。

今日は負けましたが、幸い財布の中には、8万7千円があるのです。

まだ、タイムリミットまで5日間あります。

この間に増やせば問題ありません。

悩む必要などないのです。

根拠はありませんが、豊富な軍資金がのこっています。

明日からの5日間で8万7千円も負けるはずがないと考えていました。

あたりまえですが根拠のない策。

しかし、黒い闇に包まれた頭の中が一瞬でクリアになった気がしてきます。

パチンコ依存症・パチスロ依存症、特有の答えです。

全ての思考の行き先は、”打つ”そして”勝つ”

それが最適な答えと感じてしまう。

この行き先に何の疑問も感じないのです。

温まった社内で、急に眠気が襲ってきました。

アラームがなるまで2時間位は残っています。

フロントガラスから外を見ると、先ほどまで降っていた雪がやみ、グレーの雲の隙間から月明かりが、小さく見えていました。

私の頭の中も、黒くうごめくモヤの中から光が見えているようです。

だけど、私は気付いていません。

光なんてないのです。

私の中に見えていた光は、もっと黒くどす黒い全てを飲み込む暗黒の入り口でした。


128話終了です。

あと、もう少し続きます。

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