パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-140
目の前の光景に言葉を失います。その光景にはミィの意志と願いが現れtています。しかし、ミィの想いに気付いたのはまだまだ先のことです。
※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
抗い
部屋の前にある光景。
積み上げられた5つのダンボールが、ミィの意志を表していました。
しばらく呆然として何もすることができません。
ハっと我に返り、何度も呼び鈴を押します。
反応はありません。
明らかに部屋の中には誰もいないことはわかっていますが、ドアを何度もノックします。
「お、おい・・・マジかよ・・・」
最後の砦でもあったミィに見捨てられたという思いが駆け巡ると、ゆっくりと私の中から力力がなくなっていきました。
それでも繰り返し呼び鈴をならしたり、郵便受けの受け口を開いて覗いたり・・・。
虚しく時間だけ過ぎていきます。
全てが終わりました。
メールの返信がなくても、着信拒否されても、心のどこかで許してくれると思っていました。
機嫌は悪くても、部屋には入れてくれるだろうと楽観的に考えていました。
一緒にいることさえできれば、時間が経てば仲直りできると考えていたのです。
全くの思い違い。
というよりも、現実から目を背けていただけ。
向き合うことのできない自分が、辛さや苦しさから逃れるために都合の良いように想像していただけでした。
しかし、目の前には現実が広がっています。
ドアの前に綺麗に詰まれたダンボールが、この先の全てを物語っているようでした。
頭の中は真っ白です。
何も考えることはできません。
そのまま、無意識の内にダンボールを持ち上げます。
最初に1箱。
そして2箱を2往復。
全ての荷物をトランクに積み込んだ私は、とりあえず車を走らせます。
ワナワナと恐怖が体の奥から沸いてきました。
それを何とか掻き消そうと怒りの気持ちを呼び起こそうとします。
だけど現実に打ちのめされた自分には、そんな力は残っていませんでした。
脱力感の中、あてもなく車を走らせています。
途中なんどもミィに電話をしますが、相変わらずプーップーッと話中の音がするだけでした。
とりあえずコンビニの駐車場に車を停めました。
こんな時でもお腹が空いてきます。
しかし、お金はありません。
「これからどうしたらいいんだろう・・・」
そう考えると不安でたまりませんでした。
不安になればなるほど、ネガティブなことばかりが頭に浮かび全身は不安と恐怖に支配されます。
「ミィは何を考えているんだろう・・・」
「オレは見捨てられたんだろうか・・・」
「そんなことはないはず・・・」
「ミィはオレのことが大好きなはずだ・・・」
「大丈夫。明日になればきっと連絡くるさ・・・」
「今日のところは何とかしのごう・・・」
どんなにネガティブな現実も、今目の前にある状況も受け入れることができず、そして向き合うことができませんでした。
「腹減った・・・な・・・」
後部座席に置いてあるペットボトルを取ると少しだけ残っている水を口に含みます。
飲み込んだ水が喉を通る時、少しだけラクになった気がしましたが、すぐにもとの不快な状態に戻りました。
とりあえず、車を走らせ夜を明かす場所を探さなければいけません。
結局、昨日と同じ場所にに車を止めます。
眠るにはまだ早い時間でしたが、シートを倒すとすぐに眠りにつくことができました。
朝、空がまだ薄暗い中目が覚めます。
出勤するには、早すぎる時間です。
2日間、シャワーを浴びていない体がとても不快でした。
昨日の朝のようにペットボトルの水は残っていないため顔を拭くこともできません。
車に積んであった簡易的なシェーバーでヒゲを剃るだけで精一杯です。
会社に出勤するまでの時間、黙っていると支払いのことでいっぱいになります。
自分の消費者金融、携帯電話、そして闇金・・・。
だけど、なす術がありません。
恐怖の時間が過ぎると絶望の時間がやってきます。
「もう、終わった・・・のか・・・?」
自分の消費者金融も支払わなければいけません。
携帯電話も払わなければストップしてしまうでしょう。
そして何より闇金の支払いは3日後です。
大きな絶望感。
大きな失望感。
そして脱力感。
今までのように”なんとかしよう”という気がおきませんでした。
闇金に軟禁された時の記憶がフラッシュバックします。
脱力感に覆われた体の奥の奥から少しだけ何かがうずいてきました。
「ダメダ、これで最後だ・・・なんとかしなきゃ・・・もうあんな思いはしたくない。できるだけのことはしてみよう・・・」
あても根拠もありませんでしたが、最後の力を振り絞り現実に抗う覚悟を決めました。
139話終了です。
あと、もう少しで終わります。