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パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-117

改めて踏み入れた、地獄への道のり。

もう後戻りはできません・・・。

※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。

ボリューム

恐るおそるサンドに入れた最初の一万円札も、2枚目を入れる頃には、恐怖心のカケラもありません。

ミィのカードから引き落としたお金のことも、闇金からまた借金してしまったことも全て頭の中から消えていきました。

大当たりを引くことができたのは2万6千円を投資した時です。

これまでのイライラが全て吹き飛び、リールに揃う7図柄を見て安堵しました。

「よしっ、こっから連チャン!!」

しかし、その思いも虚しくはじめに攻撃を仕掛けてきたのはラオウです。

しかも、剛掌波・・・。

「えっ・・・?」

ケンシロウは無残にも膝をつきます。

単発・・・でした・・・。

100枚ほど増えたコインを前に呆然としています。

「いやっ、ここから復活・・・っ!!」

しませんでした。

そして、ダラダラと当たりと投資を繰り返しながら一向に増えないコインを前に頭の中が真っ白になって行きます。

気が付くと22時をすぎていました。

投資は38,000円。

ここからの逆転は、ほぼ不可能です。

投資をチャラにするのも難しいでしょう。

だけど、投資を止めることはありません。

勝ちとか負けとかどうでもよくなっています。

ただ、目の前にあるサンドから出てくるコインを筐体にいれ、レバーを叩き、ストップボタンを押すだけ・・・。

正常な判断などできません。

正確に言えば、判断などしていないのです。

お金が尽きるまで、打ち続ける・・・。

パチンコ依存症・パチスロ依存症の、いやパチンカスの典型的な症状でした。

この先起こるであろう、出来事がなにも想像できず、今目の前にあるパチスロ台を回すことだけ・・・。

そして時間が経ち、

「お客様、閉店5分前です・・・」

私は、残り数枚になった下皿のコインを回し、余った1枚のコインを下皿に投げ入れ席を立ちました。

店内には、いつも閉店前に流れるメロウな曲が流れています。

どこかで耳にしたことはありますが、曲名はわかりません。

無心のまま車に戻ります。

冷え切った車内が、憔悴しきった私の心をさらにえぐってきました。

財布を見ると残り、3,000円。

合計47,000円の負けでした。

約4時間で私の思惑は全て泡のように消えてなくなっています。

変わりに生まれたのはさらに大きくなった恐怖と苦しみでした。

ミィのカードには10万円以上戻さなければいけません。

10日後には闇金の支払いが待っているのです。

その恐怖と苦しみが体中を駆け巡り、重くのしかかってきます。

「どうにかしなきゃ・・・」

この頃から、「パチンコ・パチスロを止めたい」と思わなくなってきました。

「早くどうにかしなきゃ、早く楽になりたい」という思いに支配され、それが全て「パチンコ・パチスロで勝たなきゃいけない」に勝手に変換されるようになります。

車にセットしてあるCDからは布袋の「ESCAPE」が流れてきました。

ちらつく雪の中、ボリュームを上げ駐車場を後にします。

おにぎり

朝、目が覚めるといつもの風景が広がっています。

なにも変わらない風景。

だけど、私は確実に闇へと染まってきています。

「まさくん、今日、おにぎりちょっと大きめ笑」

「あ、うん・・・って、でかすぎじゃない?」

少しだけ楽しく場を盛り上げようと、ミィがふざけていつもの倍くらいの大きさのおにぎりを作って見せてきます。

きっと疲れている私を見て、心配になったのでしょう。

そんなちょっとした気遣いが帰って私の胸を締め付けます。

「今日まさくんバイトでしょ?また、直接会社から行くの?」

「いや、今日は大丈夫だよ。帰りは迎えに行くからいっしょに帰ろう」

「ホントっ?よかった!」

本当は、お金があればまたミィにウソをつき、そしてバイトをサボり打ちに行きたいところでしたが昨日の負けを考えると無理です。

財布には3千円しかありません。

いつものように営業をこなし、夕方になると終了業務を終わらせタイムカードを押します。

事務所を出る瞬間、佐々木さんの背中が見えました。

昨日えぐられた気持ちは、へこんだままです。

いつもの場所でミィをまっていると、駆け足でこちらに向かってくるのが見えました。

途中、滑って転びそうになるのを見て、一瞬だけ微笑んでしまいます。

「ふぅ。まさくん、おつかれさま。危なくさっき転びそうになったよ笑」

「うん、危なかったな。見てたもん」

「マ、まじかぁ笑。まさくん雪降ってから転んだ?」

「いや、まだ。コケそうには何回もなったけど・・・笑」

「そうかそうか笑、実はわたし1回コケた笑」

「気をつけろよぉ笑」

一瞬、昨日までのことを忘れそうになります。

ミィと自分の周りだけ暖かい空気に包まれ、全てを吹き飛ばしてくれているようでした。

でも、それは一瞬で私の中にある闇は、幸せな気持ちに浸ることを許してくれません。

すぐに、罪の意識やミィのカードのこと、そして9日後にある闇金の返済日に支配され、微笑を奪っていきました。

「まさくん。だいじょうぶ?つかれてるの?顔色悪いし・・・」

「あ、うん。大丈夫だよ・・・」

「たまにバイト休んで、体少し休めたら?最近残業も多いし・・・」

「あ、うん、大丈夫だって」

「あ、ゴメン・・それなら、いいけど・・・」

ミイのちょっとした気遣い優しさも、闇を大きくさせるだけでした。

追い詰められた気持ちの私が思うことは、ひとつ・・・。

スロット打ちたい・・・。

愛にあふれているはずの車内が、よけいにイライラを大きくしていきます。

私の中にあるちっぽけでウソのプライドも最近は顔をだしてきません。

全て、恐怖や苦しみが生み出す闇が覆っているからです。

少しずつ自分が誰かすらもわからない感覚になっていました。

部屋に着き、食事を取りながらへこんだ心を埋めたい衝動に駆られます。

食事が終わり、食器を洗っているミィを後ろから抱きしめていました。

そして激しく体中をさわり、指触りのよいセーターの中に手を入れます。

「ちょっちょっ、まさくん!ど、どうしたのっ!、だめ、ダーメ。バイトでしょ?」

私はかまわずブラジャーのホックを外しそのまま続けました。

「まじ、まじでちょっとまってよ。まさくん!まだ茶碗洗い終わってないよぅ」

洗剤で泡だらけの両手を一旦流し、心配そうに私を見つめながら抱きしめてきます。

「どうしたの?まさくん?いつもそんなにらんぼうしないじゃない?つかれてるの?会社でなんかイヤなことあったの?なんでも言っていいのよ」

ミィのカードを使い、返済したはずのお金や上がった限度額いっぱいまでお金を引き出したなんて言えるはずがありません。

また闇金に手を出し、9日後に返済があることも同じです。

言えば、きっと私のことをキライになるでしょう。

”失ってしまう・・・”

この恐怖はさらに私の闇を大きくさらに暗くしていきます。

私は、何も言わず強引にミィをベッドに押し倒して着ている服を剥ぎ取ると、今までにないほど無理やり体を押さえつけます

そんな私の行動を少しだけ寂しい目をして見つめ受け入れてくれました。

すぐに私はそのまま彼女の性器を舐め、強引に挿入しすぐに果てます。

ミィはお腹に出された液体を、すぐにティッシュで拭き取り、そして悲しい表情をしながら、だけど精一杯の優しさを私に向け、ギュッと抱きしめてくれました。

「まさくん・・・。バイト遅れるよ・・・」

「うん・・・」

すぐに着替えてバイトに向かいます。

私の気持ちの中のへこみは結局、埋まりません・・・。

その後の数日間、大きくなる恐怖や苦しみに耐えながら過ごします。

頭にあるのは、

「パチ打ちたい・・・」

恐怖や苦しみを消してくれるのは、パチンコとパチスロだけです。

勝てば今ある闇は全て消し飛ばすことができるでしょう。

バイトの給料日の翌日の朝、急に2日後に迫った闇金の支払いのことで頭がいっぱいになりどうして良いかわからなくなりました。

バイトの給料は一度サボったので1万円。

しかし、闇金の支払いは最低でも2万5千円が必要です。

フラッシュバックのように闇金の怖さが頭の中に現れました。

「ミィ、ゴメンたぶん今日は残業になるわ・・・」

「うん、わかった・・・。無理しちゃイヤよ・・・」

部屋の空気が少しずつ冷たくなるのを感じながらも、どうすることも出来ない自分が情けなくなってきました。

もう2度と以前のような幸せな空間が戻らない気がしてきます。

ミィがそばにいるのに孤独を感じました。

そばにいるのにだれもいない・・・。

その日の夕方、久しぶりの高揚感を感じながらいつもの場所に車を走らせます。

きっと次こそは、失ったものを取り返すことができるはずです。

ここに来た時だけは闇はその影を潜めてくれています。


117話終了です。


もう少し続きます。

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