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パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-133

十分すぎると思った軍資金はあっという間に底をつき、新たに闇金で借金をしたお金もその日のうちに溶かしてしまいます。あるゆることにおいこまれ、あきらめの境地で家路に着くとミィにも追い込まれてしまいました。

※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。

フラッシュ

ミィが「電車でいくから・・・」と家を飛び出し、一人で車に乗り込んだ私は冷え切った車内で呆然とフロントガラスの曇りが消えるのを待っていました。

彼女は明らかに怒っている様子です。

本当は怒っているのではありません。

おそらく彼女は”不安”なのでしょう。

ミィは私を信じ、私に委ねました。

それが、裏切られているかもしれないと感じています。

得体のしれない恐怖と不安は、人を不安定にするのです。

とりあえず、今日中にミィの支払いを済ませなければいけません。

しかし、財布に入っているのは、まるで満たないわずかなお金。

このまま支払いができなければ、消費者金融から連絡が行くでしょう。

そうすれば私のやったことがバレていまいます。

私はこの事実に恐怖しました。

いくら、ミィでも増えた限度額を勝手に引き出し、毎月の支払いは利息のみの状態で残金はほとんど減っていない。

この状況がわかれば彼女は落胆するでしょう。

私はその先にある孤独をはっきりと感じ取りました。

なんともいえない脱力感の中、営業にでます。

得体のしれない違和感と、どんな意志も通用しない脱力感が不快です。

1秒でも早く何とかしたいという気持ちに支配されます。

他の自分の支払いもありますが、目の前にあるミィの支払いのことに支配され、正常な判断力を失っていきます。

昼近くになり、いつも行くコンビニの駐車場に車を停めました。

エンジンを停めた瞬間、携帯電話が震えメールの着信が入ります。

”まさくん。今日は残業あるの?支払い忘れないでよ”

営業で気がまぎれ、少しだけ忘れかけていた恐怖や苦しみがあらためて吹き出してきました。

そしてミィの支払いのこと以外、何も頭に浮かばなくなってきます。

しかし、お金はありません。

私は無意識にスポーツ新聞を開いていました。

そして携帯電話を開き電話番号をプッシュします・・・。

5件目の闇金。

元金総額18万円。

これがそれぞれ、10日おきに5割の利息が複利で増えていくのです。

仮に10日後にすべて返済するにしても、元金、利息合わせて27万円。

1ヶ月間ジャンプすると合わせて50万円以上の支払いをしなければいけない計算になります。

これがさらに続くと・・・。

いや、そうなる前に私の人生は終了です。

また、さらわれて支払いが出来るまで監禁されるかもしれません。

もう、ミィは助けてくれないでしょう。

私は5件目の闇金に手をだしました。

財布の中にある、闇金から借金したお金を見つめ安心しています。

というよりも闇金の入ったビルから出た瞬間すべての恐怖と苦しみから解放された気分になっていました。

全てのドス黒い霧が、一瞬晴れていきます。

急に視界がクリアになり、体が軽くなった感覚。

心のどこかで、生まれている危険信号。

もう自分で判断は出来なくなっていました。

時間の流れが遅く感じることに少しイラつくだけです。

営業を終えていつもより、少しだけ早く会社に戻ります。

「おつかれさまです。只今、戻りました」

事務所に入ると、営業の人間は誰も戻ってきていません。

視界に入るのは、佐々木さんの背中だけ。

私は、意識的に視線をそらして自分の机に向かいます。

終了業務を進めていると、少しずつ他の営業が戻ってきました。

社内には、ざわざわした話し声、パソコンのキーボードを叩く音、受電のコール音。

そしてかすかに聞こえる電話応対する佐々木さんの声。

一瞬、頭の中に目をふさぎたくなるような光が現れ、そしてあの頃の記憶がダイジェスト映像のように過ぎていきます。

オスの攻撃本能だけを刺激する体のライン、ブラウスの隙間からのぞく水色の下着や乳房の膨らみ、下半身で上下する頭、全身を這う舌先、全てを溶かすような吐息・・・。

最後に触れることのなかった、内ももにあるネコの顔のタトゥーの映像が現れパッと消えてなくなります。

この映像は焼印のように”記憶”に張り付き、こびりつきました。

終了業務を終えて会社を出るとキーンと冷えて乾いた空気が風景を明るく映し出しています。

そしてまた、ノイズに吸い込まれていくだけでした。


133話終了です。


あと、もう少しで終わります。

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