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パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-123

ミィのカードから引き出した10数万円、闇金からの借入元金合計13万円。思い描いていた私の虚像が跡形もなく崩れるまでもうすぐです。

※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。

イルミネーション

打ちのめされた翌日、重たくなった体を無理やり動かし、シャワーを浴びます。

確実に悪くなっていく状況のなか、自分以外の状況は変わりなく時間が進んでいくことがさらにに気分を落ち込ませました。

「まさくん、これ、おべんとう」

いつもと変わらないミィの姿が余計に胸を締め付けます。

会社に着きタイムカードを押して自分の席についても気分は変わりませんでした。

むしろ、営業の準備をしているとさらに気分は最悪になっていきます。

闇金のこと、ミィのカードのことが重くのしかかり、仕事のことなどどうでもよくなってきます。

脱力感が不快でしたが、どうすることもできません。

その日の業務が終わり、ミィを迎えにいき、家路につきます。

「おつかれっ、まさくん」

「あ、おつかれ・・・」

真っ白な雪に彩られた、街路樹にイルミネーションの電飾がキラキラと輝いていました。

その光はもうすぐ訪れるであろうクリスマスへ向けてのワクワク感や希望に満ち溢れています。

私がいつも行く場所にある赤や青や黄の電飾とは真逆の光を放っていました。

「家に着いたら、すぐごはんにするね。今日はまさくんバイトだもんね」

「あ、うん・・・」

考えてみると最近はバイトにほとんど行っていません。

また、あの臭いや関口のことを考えると、重くなった暗黒の気持ちがさらに暗く沈むのを感じました。

あからさまに機嫌が悪くなります。

と、同時にミィにとても申し訳ない気持ちになりました。

ミィは何も悪くありません。

少しだけ渋滞している信号待ちで彼女が一言つぶやきます。

「そういえばまさくん・・・。今月カードのやつ返してくれたよね・・・?」

「か、返したよっ!なんでっ!」

思わず強い口調で怒ったような返しをしてしまいます。

ミィは一瞬”ビクッ”と体を震わせ、視線を私からそらし青に変わる信号を見つめました。

「あ、うん・・・いや、明細くれなかったなぁと思ったのよ・・・ちゃんとしてるならいいわ・・・」

「・・・」

「まさくん、信号青・・・だよ」

「あ、うん・・・」

一番、触れられたくない話題を振られ動揺してしまった私は、信号が変わったことに気付きませんでした。

そして、その動揺を隠すために、つい怒ってしまったことが情けなくなります。

急いで発信しようとアクセルを踏みましたが、後続車にクラクションを鳴らされたことも、動揺に拍車をかけました。

「ヤバイ・・・ミィにバレるかも・・・」

「どうしよう・・・。」

「闇金の借金と利息分、いくらになるんだろう・・・」

「闇金に手を出してしまったら、追い出されるかもしれない」

「ミィが借りてくれた借金がさらに増えたことがわかったら・・・」

ネガティブなことがグルグルと頭の中を駆け巡り、私は追い込まれた気持ちになります。

そして、そんな自分を隠すために焦っていました。

その日を境にミィとの間に少しずつ溝ができ、距離が離れていきます。

彼女が私に接する時にあきらかな不安を感じるようになっていきました。

その思いが強くなるほど、孤独を感じるようになります。

近くにいるのに気持ちだけが遠くに感じる感触・・・。

私はなぜだかわかりませんでした。

彼女の不安を感じることができなかったのです。

毎日の会話も少しずつ少なくなっていき、いつものミィではなくなっていきました。

そして数日が経ち、給料日の前日。

本来なら少しは気持ちが高ぶるはずでしたが、私の気持ちは沈んだままです。

自分の消費者金融などの支払い、ミィのカードの返済、駐車場代、闇金の支払いなど、これらを済ませるとほとんど手元にはお金が残らないでしょう。

もしかすると足りないかもしれません。

そう考えると、怖くてなってきます。

しかし、どれだけの支払いがあるか計算することをあえて避けました。

現実から目を背けることでしか、自分を保つことができなかったのです。

考えれば考えるほど苦しくなります。

「どうにかなる・・・」

根拠のない、その思いでやり過ごすしかありません。

明日支払いの闇金に前日連絡をすると、ほんの少しだけ気持ちが軽くなります。

とりあえず、給料があるので支払いができなくなる苦しみがないというだけです。

その日、ミィを迎えにいつもの場所で待っていました。

今までは急いで駆け寄って来ましたが、最近は歩いて私の車に向かってきます。

車に乗り込んでからも、「おつかれさま」の一言の後は会話が少なくなっています。

今までの明るく優しいミィが少しずつ、変わっていくのが私の気持ちさらに追い込みました。

そんな彼女が恐れていた一言を発します。

「ねぇ、まさくん。明日は給料日でしょ?今月は私の支払いのやつの明細、忘れずにもってきてね」

私の中で大きなうねりがおこります。

走りすぎていくイルミネーションの光が、一瞬全て消えてあたり一面が暗闇に変わった気がしました。


123話終了です。


あともう少し続きます。

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