パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-27
取引先のトラブルが早めに解決し、会社をでたのは13時半すぎ。ミィのことを考えサプライズで夕食を先に作って待っていようか一瞬考えた私でしたが、急に現実が頭を支配し追い詰められた感覚に陥りました。
そこでパチンコ・パチスロ依存症の私がとる行動は一つです。駐車場に車を止めましたがもちろん自宅の駐車上ではありません。今まで何度も後悔してきたこの行動。今回はどうなるのでしょうか。
※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。
幻想と代償
家賃の未払いや電気代などの生活費の支払い、そして何よりも闇金ヘの借金である元金9万円と9日後に迫る利息合計の4万5千円の恐怖が全身を支配した時、私がとる行動は一つです。
その恐怖に支配された体を救ってくれるのは、パチンコ・パチスロだけでした。パチンコ・パチスロを打つという行為がその恐怖から私を救ってくれました。
いうまでもなく、その行為は私を救ってくれません。さらに私を追い詰めます。
車を降りてホールに入ると、今日の状況など確かめもせずに一目散にいつも打っているキングパルサーの島に歩いていきます。
本来ならばイベントでもなんでもない平常営業で、立ち回りには十分気をつけなければいけませんが、体を支配する恐怖が大きければ大きいほど「勝つ」ことよりも、「パチンコ・パチスロを打つ」ということが一番になっていました。
キングパルサーの島は、12台あり半分の台が埋まっていますが、空いている台はどの台も128ゲームの連チャンゾーンが抜けた台ばかりでした。
そんな中1台だけ310ゲームの台を発見し、迷わずその台に座ります。
「万が一、天井まで打っても、約3万ちょっとで天井到達する。その後連チャンすれば大丈夫」
当然ですが、このゲーム数から打つと期待値も何もありません。「勝つ」ことを考えれば打つべきではないのです。しかしこの時の私は勝つことよりも、大当たりを引くことに集中していました。
単純に128ゲーム付近から打つよりも310ゲームから打ったほうが天井に近いというだけでその台を選んでいます。
少し冷静に考えて計算すればマイナスの期待値になる計算も、パチンコ・パチスロ依存症になると出来なくなるのです。
パチンコ依存症・パチスロ依存症にとって最優先なのは、「勝つ」ことよりも「打つ」ことです。
財布からお金を取り出し、勢いよくレバーを叩きスタートしました。ストップボタンを押す指にも心なしか力が入っています。
「まぁ512ゲームまでには当るだろう・・・」
キングパルサーはストックがあると、128ゲームごとにストック放出が振り分けられ、そのゲーム数で当る仕様でしたので、そのように想像していました。
もちろんなんの根拠もなく、天井ゲーム数に振り分けられることも十分に考えられます。もっといえばストックがない場合は内部的にボーナスが当ってから放出抽選をするので、天井ゲーム数を超えることも考えられましたが、ストックがあると勝手に思いこんでいます。
私の目論見は外れました。512ゲームでは当りませんでした。この時の投資は7000円。しかし、まだ財布に4万千円ある私はまだ余裕があります。
「ちっ512ゲーム抜けたか。まぁだけど大丈夫だろ」
改めてですが何の根拠もありません・・・。
もうすでにホールに入る前までにあった恐怖感はなく闇金や支払いのことは忘れ、目の前のレバーを叩くことに集中しています。
お金がコインに変わることに何の躊躇もありませんでした。
恐怖や痛みをこの時だけは感じることはありません。全てを楽にしてくれる「幻想」に身を委ねることがパチンコ依存症・パチスロ依存症にとっては術なのです。
しかしこれは紛れもなく幻想でそこには大きな「代償」が張り付いていて、すぐにさらに大きな恐怖や痛みを伴って自分を襲ってきます。
しかし、依存症の私はその代償よりも幻想に身を委ねるしかありませんでした。
白の支配
気がつくとゲーム数は800ゲームを超え投資金額も2万円になろうとしています。この時すでに先ほどまであった安心感や抑揚感は消え、冷静さを失いイライラが増していきました。
「くそっ!いつになったら当るんだよっ!」
しかしここで止めるわけにはいきません。天井ゲーム数まではしばらくありますが、自分が投資した台をみすみす、捨てるわけにいかないのです。
そして投資が進むたび少しずつイライラが脱力感に変わっていくのがわかりました。
そんな中、1200ゲームを超え投資金額が3万円を超えた時、やっと液晶に「WIN」の文字が表示され、ボーナスが確定します。
「ビッグボーナスで頼む・・・」
しかし、ボーナスはレギュラーボーナス・・・。
3万円投資して得たコインは約100枚、金額にして2000円という結果でした。
しかしまだ希望は捨てません。キングパルサーはストックさえあれば128ゲーム以内にボーナスが引ける可能性が設定1でも70%を超えていたため、ここで終わりというわけではありませんでした。むしろここから連チャンする可能性の方が高かったのです。
「よしっここから!」
勢いよく再スタートしたのも束の間、70ゲームを過ぎてコインがなくなり再投資がはじまります。
このあたりから完全に焦りの色が見え隠れしてきました。このあと128ゲームを超えると次は天井までいつ当るかわかりません。
「たのむっ何とか128ゲーム以内に当ってくれ!」
そんな私の願いは空しく液晶にはWINの文字は現れませんでした。
入店するまでは5万円近く財布にはいっていましたが、気がつくと1万6千円になっています。
私の出した答えは・・・
「続行っ!!」
手持ちの金額では天井ゲーム数まで回せないので当りを引けるとは限りません。しかしその前に天井まで回しているのでストックはあるはずです。次にボーナスを引ければ連チャンする可能性は大でした。
もしここで止めるとこれまでの投資が無駄になってしまいます。自分の次に座った人が低投資でボーナスを引き連チャンされるのもイヤでした。
これはパチンコ依存症・パチスロ依存症の方が負ける原因の一つです。自分の投資がかさんだ時、もう勝ち目はないとわかっていてもさらに投資をしてしまう・・・。そしてさらに傷口を広げるように負けてしまいます。
それまで何度も同じ失敗をしているのに・・・。
ここからは、1000円が50枚のコインに変わるたび頭のなかが真っ白になっていきます。しかし投資は止めることが出来なくなっています。
もっと言えばここでこの台を止める気力もなくなっていますが、レバーを叩く気力もなくなっていきました。
こんな時パチンコ依存症・パチスロ依存症の私は「打っている」のではなく「打たされている」のでした。
そして財布の中からお金が消えていくたび、さっきまで消えていた、現実が体を覆ってきます。
未払いの家賃や電気代などの生活費の支払い、そして利息含めて12万まで膨らんだ闇金への借金。
どんなに頭の中から掻き消そうとしても、お金がコインに変わる度に大きくなり改めて私の体を恐怖に包みこんでいきました。
以上27話終了です。
改めてですが、これがパチンコ依存症・パチスロ依存症だった頃の私の立ち回りと心の動きです。このブログの他の記事でも書いていますが、パチンコ依存症・パチスロ依存症の人が求めているのは「安心感」になります。
普通の人は「安心感」を得るために休息をとったり、コミュニケーションをとったり、何か努力して安心感を得ますが、依存症になると頭ではわかっていても、安心感を得るための行動は全てパチンコ・パチスロになっていしまいます。
そしてこのように追い込まれた状況では、ほとんどの場合勝つことはできません。
これを繰り返し、生活も心もボロボロになっていきます。
さあ今回も最悪の状況になっているパチスロですが、残りわずかな所持金、一体どうなるのでしょうか。
まだまだ続きます。