パチ依存症をこじらせて闇金から借金してた頃の話-135
全てが悪い方向に動き出していることに気づき、押し寄せる悪い予感に耐えながら時間が過ぎていきました。もうどうすることもできません。
※この物語は半分フィクションですが出てくるエピソードは実際に体験したことです。
いやほとんど実話です。
名前や団体名、組織名等は仮名になってます。
読んでいて気分を害したりする場合がありますのでその辺をご了承の上ご覧下さい。
侵入
それから、寝るまでの間一言も言葉を交わしませんでした。
二人だけの間にある空気が、どんよりと重くのしかかってきます。
今まであった暖かく優しい、包み込むような空気は存在しません。
私の全てが”不快”に支配されていました。
しかし、この空気を払拭する術がありません。
時計の針が0時を回るころ、彼女は何も言わずベッドの端のほうに体を縦にして布団をかぶります。
私もすぐに部屋の電気を消し、ベッドに向かいました。
もしかすると、体をあわせればこの空気を以前のようにできるかもしれないと思い、彼女を背中から強く抱きしめましたが、何も言わず強い力で硬直させ私を受け入れることをしませんでした。
あいかわらず背中を向けた彼女と、自分の間に出来た隙間に冷たい空気が流れ込むの感じます。
この時二人をつなぐ何かがなくなっていることが浮かんできましたが気付かないフリをしました。
部屋にある空気が変わらないまま朝を迎えます。
昨日、生まれた不快感は残ったままです。
会話がないまま、時間が過ぎていき会社に向かう時間が迫ってきます。
恐怖や苦しみが混じった不快な気持ちはさらに大きくなっていきましたが、せめてもの救いは、いつも通り私のおにぎりがキッチンにあることでした。
それを見た時少しだけ私の心は落ち着きましたが、同時に彼女は何も言わずにドアを閉め一人で会社に向かいました。
玄関のドアを閉める音が聞こえた瞬間から、現実が押し寄せてきます。
「ヤバイ、ミィの支払いできなかったんだ・・・」
「カード会社からミィに連絡がいったら、全てがバレてしまう・・・」
「そうなったら、なんて言い訳しよう・・・」
「いや、言い訳なんてできない・・・」
「とりあえず今月の支払いだけでもしなきゃ・・・」
「だけど、金ない・・・どうしよう・・・」
「闇金で借りるしかないか・・・」
「いや、待て。もうこれ以上は返せなくなる・・・」
「ていうか、今月何も支払いしてない・・・」
「自分の支払いはどうしよう・・・」
「それより、次の闇金の支払いも考えなきゃ・・・」
「やっぱり闇金で借りて、パチンコで勝って・・・」
様々なネガティブが脳内を駆け巡り、思考回路の熱がどんどん上がっている気がしました。
そして限界を超えた時、プツンと音を立てて思考が停止します。
視線を遠くにしながら玄関のドアを閉め、会社に向かいました。
会社に着くと何も変わらない光景が目の前に広がります。
いつも聞くノイズとは違う、少しザワザワした音に溶け込みながら営業の準備をし、会社を出ました。
いつもと同じ時間の流れと風景は、自分の中にある危機感を曖昧にします。
ミィの支払いは相変わらず脳裏に残ったままですが、どうにかなりそうな気がしました。
だけど本当は違います。
私は抗うことを止めただけです。
なす術がない状態でどうすることもできなかったのです。
不安も興奮もありません。
流れる時間が止まっているような気がします。
しかし、私が感じているのは虚構です。
現実はしっかりと、私に向かってきていました。
スーツのポケットにある携帯電話が激しく震えるのを感じた時、体中の毛穴からネガティブな何かが侵入するのを感じます。
体中が震え、ハンドルを握る手にはびっしりと汗が滲んでいました。
恐るおそる携帯電話を手に取ると、メールの着信ランプが点滅しています。
「まさくん、話ある。できるだけ早く帰ってきて」
135話終了です。
あと、もう少しで終わります。