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久々にニコニコ動画を見て、もう洞窟に戻ってもいいのかなと思った話

最近、高校生の頃を思い出すことが増えて、
ふとニコニコ動画を久しぶりに立ち上げて、シュタインズゲートのMAD動画を見てみた。


思い返せば、高校生の時は毎日ニコニコ動画を見ていた気がする。

大学生頃からYouTubeを見るようになって、それからはニコ動はほとんど見なくなった。

久しぶりにニコ動を見て、「もうここに戻っていいかもしれない。でも戻ってもいいんだろうか」という気持ちになった。

というのは、ニコ動の持つこの圧倒的な「社会の外」感に、
もう浸っちゃっていいのか、もうちょい外で頑張るべきか、という迷いがあるのだ。
「社会の外」というのは、具体的に表現するのが難しい感覚だけど、
ビジネスにおける効率化が図られて無いというか、
世間一般に評価されるほどに垢抜けて無いというか、
大多数の人間が受け入れるにはバリが多いというか、
ノイズが多くて洗練されてないというか、
どう考えても世間の本流になり得ないというか、
圧倒的に感じる隅、端っこ、ガラクタ感。
みたいな感じかもしれない。
なんかこう、普段触れるものとは違ったつくりをしている、というのを感じるのだ。


僕が高校生の時は、毎日ニコニコを見ていた。
学校で誰とも話せず、友達もおらず、ぐるぐると日々の反省と焦燥感が頭の中で渦巻いていた僕は、
そのノイズを打ち消すためにノイズ(ニコ動)を家に帰ってからずっと見ていた。

温泉に行っても、散歩をしてもネガティブな感情に支配されるから、
無駄な情報量が詰まったニコ動を見続けることで、無駄な思考を洗い流していた。

ニコ動の何の役にも立たないカオスな、でもどこかおかしくて面白い空間は、
日々自己否定し消えてしまいたいと思っていた僕にとっては唯一と言っていい安全地帯だった。

ニコ動にいれば自分を卑下する必要はなく、謎の技術で1円にもならない機械を作る人や、アニメOPに現れる米職人や、アニメのMADを見て楽しむことができた。

思い返せば、面白い動画はたくさんあった。
もこう先生の厨ポケ狩り講座、
倭寇のポケモン信長の野望シリーズ、
レオモンの金コイキング縛りシリーズ、
幕末志士、
シュタインズゲート、
名曲ボカロの数々、、

著作権的にNGで、いずれはBANされる運命の動画たちもあったが、
それでも企業が正式にコラボして作られたものでは味わえない切れ味の動画は、
端的に言って面白かった。

ニコ動は閉じた世界で、社会から隔絶されている感覚があった。

社会で起こったことを切り抜いてMAD動画にしてはしゃぐけど、
社会そのものについては触れなくても生きていける世界。

ただただ隅の目立たないところで、ニッチな趣味や嗜好に全振りして、
周りの目を気にしなくてもいい世界。

そんな閉じた世界に僕はどっぷりと浸っていた。


それから浪人を経て大学生になると、僕は自分を変えることに躍起になった。
高校生の頃は誰一人話さず過ごす日々で、社会に参加するどころか周囲の人間関係すら築くことができなかった。
それじゃダメだと、大学生になったら自分から社会に参加していくんだと意気込んでいた。

美容院に行って店員さんと会話をしながら髪を切った。
服を買って、コンタクトにして、周囲からよく見られるための格好を気にかけた。
バイトをして、様々なルールに縛られながら、歳の離れた人たちと会話した。
サークルに入って、男女問わずに話しかけた。
わざわざ友達を誘って飲み会を開いた。
Twitterで、LINEグループで、面白いと思われるための返しをした。

YouTubeのおすすめに上がってきたものを見て、
Twitterでいいね数が伸びている投稿を見た。
テレビのバラエティを見るようになった。

気づいたらニコ動を見るのをやめていた。



社会という輪の中に完全に入った僕は、
ニコ動という洞窟に潜る意味を失っていた。
別に洞窟に戻らなくたって、明るい世間の中で、日々新しいエンタメと、
友人たちとの会話と、バイトとサークルで日々は埋まっていく。

忙しいからニコ動見るよりもおすすめをサクッと見れるYouTubeの方が楽になった。
そしてそのままニコ動を見なくなって大学を卒業した。


そして現在、久しぶりにニコ動を見たのは、
自分がどこまでやれるのか試したいと意気込んで入った会社を転職して、
何かもう、閉じていってもいいかなあ、なんて気になってきたからかもしれない。

大学生になってから今まで、社会の輪にしっかり入って生きてきたけど、
そろそろ戻ってもいいかな洞窟の中に、と思っている節がある。

というのも、やはり社会というのは疲れるのだ。

社会っていっても色々あるけど、僕にとっては、
朝起きて決まった通りの時間に出勤すること、
周りの人が驚かない服装、髪型、表情を身につけること、
誰にも迷惑かけないように列を乱さず人混みと同化して電車に乗ること、
周囲の人間に対してちょうどいい表情、発言、声の大きさ、思想を持って接すること、
時間とコストに常に気を配りながら適切な行動と発言をすること、
移動すること、ものを買うこと、全てにお金と労力が発生すること、
働いてもさもしいけど働かないと生きていくのが大変なこと、
帰ってきて疲れてるけど何もしないで寝るのは虚しいこと、
結局家事やら何やらで自由な時間もあまり無いこと、
平日の疲れで土日はなんかずっと体がだるいこと、、、

みたいなことが、社会だなと思う。
で、それが本当にめんどくさいのだけど、めんどくさいとか言えないというか、
言ってもしょうがないみたいな雰囲気なのも本当にめんどくさい。

僕は高校生の時、自分は学校で誰とも話せず3年間を終える人間だから、
社会でまともに働けるわけがない、と絶望していた。

今思えば、社会性が無いというのはまあ確かに高校生の時点ではそうだったとは思う。
実際、大学生の時に喫茶店のバイトをクビになってるし、新卒で入った会社を1年半で辞めているから、会社で働くのに向いてるかと言われたらそうでは無いかもしれない。
ただ別に引きこもりたい訳では無いし働かないと金が無くて困るので、
それなりにやってればある程度はやり方が分かったというだけだろう。
それを人によっては社会性を身につけたとか成長とか言えるというだけで。


そうなってくると、ニコ動という洞窟に戻ってもいいかもしれない、
という気持ちと、
あともう少しだけ社会という外の世界で踏ん張るべきだろうか、という迷いが生じてくるのだ。

そもそもニコ動が社会の外にあるアングラ的存在なのに、
社会のことを「外の世界」と認識してる時点で、自分は日々無理をしているんだろうなあとも思う。

かといって洞窟でずっと過ごす勇気もないから、洞窟でのんびりしつつも結局は
すごすごと外の明るい世界に出て行かなければならない。
洞窟と外を行ったり来たりしながら過ごしていくのだ。

世間一般で何が流行ってて、話題のバラエティが何で、
令和世代に何が人気で、社会現象になるものは何で、
最新のエンタメ、Netflix、アマゾンプライム、
話題のTikTokの動画、YouTuber、流行りの楽曲、、

今やTwitter(X)も社会の一部になってしまって、正論強者が持て囃されてるのが見てて辛くなって見なくなってしまった。
社会的成功が何よりの目的だと当然思っている人、社会と自分が一体になっていると信じて疑わない人、世間一般における正しさを何より大事にする人、
そういう人たちの投稿にいいねがたくさんついていて、もうここには居られないなと思った。

確かに好きなバラエティ番組もあるし、ある程度ミーハーな方が話題も尽きないし、結局その方が楽だったりする。
でも、それだけではやっぱ生きていくのはしんどいな、と思った。
試してみたけど、社会を当然のように受け入れて生きるのは無理そうだ。
やっぱり心の底ではどうでもいいと思ってしまう。

社会への反感ではない。むしろ、社会とか特段意識せずにその繋がりと情報の中で当たり前のように楽しんで生きている人になりたかった。
エンタメだけじゃなく、仕事においても、人間関係においても。
こんだけ疲れるし眩しいってことは、やっぱり自分は陽の人間ではないんだろうと思う。

ただ閉じてしまっていいのかという迷いは、
社会に対するチューニングを辞めてしまった時点で、どんどん社会からずれていって自分の殻の中でしか存在できなくなるのではないかという不安によるものだ。

結果的にそうなってしまう運命だとしても、もう少し抵抗した方がいいのではないか、なんて思ってしまう。

もっと社会一般に認められる価値、お金なのか人脈なのか地位なのか、、
そういうのを求めて頑張るべきなのか。

でももうめんどくせえなあなんて思ってきている。
そんな時久しぶりに開いたニコ動は、変わらず湿った薄暗い場所だった。


久しぶりにニコ動を開いて、シュタインズゲートのMAD動画を見た。
コメント機能だけで作ったというこの動画は、何度も消されているのだけど、
その尋常ではない愛とクオリティによって、見るたびに感動して泣いてしまう。

社会という正しい世界においては、そんな著作権グレーな動画を見て感動する僕は叩かれはされずとも肯定されるはずのない存在だ。
それで別にいい。

社会という日の光に当たった瞬間消えてしまうような洞窟の中で、何の利益にも社会的価値にも繋がらないような動画たちが存在している。
それでもういい、と思ってしまう。

仕事とか、お金とか、人間関係とか、とっても大事だけど飽き飽きする社会の中で生きていくけれども、
たまにでいいから、正しくても正しくなくても、どっちでも良い洞窟の中でダラダラしていたい。












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