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『小さな恋のメロディ』に関する個人的な話

 製作国のイギリスやアメリカではヒットせず、日本(特に)やラテンアメリカ系の国でヒットした映画がある。原題は『Melody』、邦題は『小さな恋のメロディ』。監督は主にテレビ界で活躍したワリス・フセイン。プロデューサーは後に『ダウンタウン物語』や『ミッドナイト・エクスプレス』、『炎のランナー』や『キリング・フィールド』、『ミッション』などを手がけるデヴィッド・パットナム、脚本は『ダウンタウン~』、『ミッドナイト・~』、『バーディ』、『ミシシッピ・バーニング』、『ザ・コミットメンツ』など、数多くの監督作を持つアラン・パーカーという、今、考えても豪華なスタッフがそろっている。筆者は最初の劇場公開時は観ていないが、3度目のリバイバル上映時(ニュープリント版が売りだった)に秋田県秋田市の今はなき映画館・秋田ピカデリーで、ルッジェオ・デオダート監督、カルロ・ルーポ主演の『フィーリング・ラブ』(未だにソフト化、テレビ放送もあまりされていないので知らない方も多いのでは)と2本立てで観た。その後、テレビ朝日『日曜洋画劇場』の吹き替え版(マーク・レスター=内海敏彦、トレイシー・ハイド=杉田かおる、ジャック・ワイルド=永久勲雄)、ビデオ、レーザーディスク、DVD、そして、2015年4月の“第三回新・午前十時の映画祭”、2019年6月にKADOKAWA配給での再上映と、もう何度観たのかわからないぐらいの回数に達している。
 物語はレスター演じるダニエルがハイド演じる少女メロディに恋をし、ワイルド演じる友人トムとの友情に葛藤するというのがあらすじ。ダニエルとメロディの恋から結婚、そして、駆け落ちというクライマックスに続いていく。最初はロンドンの公立学校に通う11歳の男女が結婚して逃げるという興味だけだったのだが、かなり時間が経って観直すと、ダニエルは中流階級、メロディとトムは貧乏な家庭で暮らし、ロンドンにおける格差社会や大人という権力に対する反骨という、社会派の重いテーマが根底にあることがわかる。そして、ダニエルとメロディの初々しくも切ない恋を盛り上げるのが、ビージーズの「メロディ・フェア」、「イン・ザ・モーニング」、「若葉のころ」、「ギブ・ユア・ベスト」、「ラブ・サムバディ」、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングの「ティーチ・ユア・チルドレン」ほか、劇中に流れる音楽の数々だ。実家にいたころ、サントラとセリフ入り(対訳付き)のアルバムがあってよく聞いていたものだ。そんな曲たちを巧みに映像と組み合わせる演出が素晴らしく、今でもサントラは時々聞いてみたくなるほどの魅力にあふれている。
 その当時は人気があったマーク・レスターもトレイシー・ハイドも現在は映画界からは離れているし、ジャック・ワイルドは2006年に亡くなっている。でも、『小さな恋のメロディ』はこれからも映画ファンの心を捉えて離さず、何度も観たくなる作品であることは間違いない。個人的にも大好きな1本で、映画館でリバイバル上映されたら観に行くだろう。サントラだって何度も聞くだろう。それほど、筆者にとっては思い入れの深い1本なのだ。

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