ピーター・ハイアムズ脚本&監督『カプリコン・1』
1973年の『破壊!』で脚本も手掛けて監督デビュー。1979年『ハノーバー・ストリート/哀愁の街かど』、1981年『アウトランド』、1983年『密殺集団』、1984年の『2010年』からは撮影も兼任するようになる。その後は1987年『シカゴ・コネクション/夢みて走れ』、1988年『プレシディオの男たち』、1989年『カナディアン・エクスプレス』、1992年『カウチポテト・アドベンチャー』、1994年『タイムコップ』、1995年『サドン・デス』、1997年『レリック』、1999年『エンド・オブ・デイズ』、2001年『ヤング・ブラッド』、2004年『サウンド・オブ・サンダー』、2009年『ダウト~偽りの代償~』、2013年『マキシマム・ソルジャー』など、数々の作品を発表してきたピーター・ハイアムズ監督。2009年には息子のジョン・ハイアムズが監督した『ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション』で製作と撮影で参加している。そんな彼が注目されるきっかけになったのが、1977年のサスペンスアクション『カプリコン・1』だ。出演は『破壊!』のエリオット・グールドほか、ジェームズ・ブローリン、ブレンダ・ヴァッカロ、サム・ウォーターストン、O・J・シンプソン、ハル・ホルブルックほか。撮影をビル・バトラー、音楽をジェリー・ゴールドスミスが担当している。
筆者がこの映画を最初に観たのは何度目かの放送となったカット編集された吹き替え版。テレビ初放送は1981年1月11日のテレビ朝日『日曜洋画劇場』で、グールド=中田浩二さん、ブローリン=広川太一郎さん、ヴァッカロ=藤田弓子さん、ウォーターストン=筈見純さん、シンプソン=樋浦勉さん、ホルブルック=小林勝彦さんというボイスキャスト。ちなみに機内上映版も作られていて、グールド=森川公也さん、ブローリン=中田浩二さん、バッカロ=山田早苗さん、ウォーターストン=津嘉山正種さん、シンプソン=玄田哲章さん、ホルブルック=大木民夫さん。この機内上映版、スターチャンネルさんあたりで発掘されないだろうかと期待している。
人類初の有人火星探査船カプリコン・1が打ち上げられようとしていた。ブローリン演じるブルーベイカー、ウォーターストン演じるウィリス、シンプソン演じるウォーカーという宇宙飛行士3人が乗り組んで発射の時刻が近づくが、3人は誰にも見つからないように機外に連れ出され、砂漠の真ん中にある無人の古い基地に連れて行かれる。無人のままカプリコン・1は打ち上げられ、3人は基地内で芝居をさせられることになるというのがあらすじだ。前半は政府の陰謀で悪事に加担させられる3人、NASAの職員が異変に気付き、グールド演じる記者のコールフィールドが調査に乗り出して命をねらわれるなど、サスペンスタッチで進んでいく。後半、3人が基地を脱出して逃亡、コールフィールドも真実に近づいていくが、結局、クライマックスまでは劣勢が続いていく。そして、ブルーベイカーたちを追うヘリコプターとコールフィールドが乗る農薬散布の飛行機のスカイチェイスはもう迫力満点で、ヘリの追撃をかわすのが“あるもの”というのも思わずニヤリとさせる。その飛行機を操縦するのがテリー・サバラス(特別出演とクレジット)のにも驚かされる。サバラスといえばスキンヘッドがトレードマークだが、帽子を被っているので言われてみないとわからない。劣勢が続いてラストに向かって徐々に形成が逆転してからの展開は、ジョン・フランケンハイマー監督の『フレンチ・コネクション2』と似たところがあって、同じような爽快感が味わえる。さらに、サバラスと同じ特別出演というクレジットで『エアポート’75』のカレン・ブラック(知人の小玉大輔さん@eigaoh2激押し)も出演し、映画全体に流れるゴールドスミスの音楽にテンションが上がる。
この『カプリコン・1』、日本では1977年12月17日というお正月映画として公開されたが、日本以外は1978年に公開された。前はアメリカでの公開前に日本で公開されるということはよくあったものだ。日本での公開バージョンは129分で、現在、DVDソフトで観られるのは124分。2019年12月18日に発売された『カプリコン・1《特別版》』ブルーレイには129分の日本公開版本編の素材が収録されているという。日本での劇場公開版は未見なので、どの部分が増えているのか、俄然、興味がわいてきた。今後、機会があれば観てみたいし、4Kデジタルリマスター版などで映画館の大スクリーンで上映されないかと密かに期待している。