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『スティング』に関する個人的な話

 “アッと驚く大どんでん返し”が魅力の映画は数多く存在する。そんな中でも代表的な一作と言えるのがジョージ・ロイ・ヒル監督、ポール・ニューマン&ロバート・レッドフォード共演の『スティング』だ。このトリオと言えば『明日に向って撃て』が有名で、『明日に~』も大好きだが、『スティング』も大好きな1本だ。筆者は劇場公開時には観られず、初めて観たのは水野晴郎さんが解説をしていた日本テレビの『水曜ロードショー』のテレビ初放送(2時間30分枠だったと記憶)で、ニューマン=川合伸旺、レッドフォード=柴田恭兵(いわゆるタレント吹き替えだが、これが実にハマっていて悪い気はしなかった)、ロバート・ショー=木村幌という吹き替えキャスト。その面白さにすっかり夢中になり、あの伝説のクライマックスなんて本当にびっくりして、思わず拍手したくなった。それほどに爽快だった。その後、テレビ朝日の『日曜洋画劇場』で放送された際は、ニューマン=津嘉山正種、レッドフォード=山寺宏一、ショー=有川博、ソフト版ではニューマン=小川真司、レッドフォード=内田夕夜、ショー=池田勝というキャスティングで、一般的にはソフト版が観られるが、両テレビ放送版吹き替えが入ったブルーレイも発売されているので、テレビ吹き替え版が観たい方にはそちらをオススメしたい。で、テレビ放送やビデオ、DVDなどで何度となく観ていた『スティング』を初めて劇場で観たのは2010年の“午前十時の映画祭”で、その後、上映される度にスクリーンで観るようにしている。
 1936年のアメリカ。レッドフォード演じる詐欺師のフッカーが相棒と違法賭博の売上金を奪ったことから、ショー演じる大物ギャングのロネガンに命をねらわれ、相棒が殺されてしまう。フッカーはかつて相棒から紹介されたニューマン演じるゴンドーフを頼ってシカゴに行く。ゴンドーフはフッカーの話を聞いてロネガンに一泡吹かせるべく、ふたたび動き出すという流れだ。物語は章仕立てで展開し、イラストで描かれた絵をめくり、まるで小説を読むような感覚で進んで行く。フッカーとゴンドーフがかつての詐欺仲間を集めてロネガンを騙す舞台を整えていく姿が実に丹念に描かれ、観ている観客ごとだましてしまうような構成になっている。ロイ・ヒル監督の熟練した演出、スコット・ジョップリンの「エンターテイナー」をアレンジしたテーマ曲ほか、マーヴィン・ハムリッシュが手がけた粋な音楽、オスカーを受賞したデヴィッド・S・ウォードの見事な脚本、ニューマン、レッドフォード、ショー、アイリーン・ブレナンほか、役者陣のアンサンブル演技と、どれをとってもまさに一級品。クライマックスの展開を知ってからでも、何度観ても楽しめる、時を超えた傑作の一本と言っても過言ではない。
 こんな素晴らしい映画に出会えることなんて、そう何度もない。監督、脚本、音楽、撮影、役者と、すべてがそろったまさに奇跡の一本。まだこの映画をご覧になっていない方が本当にうらやましい。その方はあのクライマックスの驚きを味わえるのだから……。
 

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