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チャールズ・チャップリン『ライムライト』&『街の灯』

 チャールズ・チャップリンと言えば、バスター・キートンやハロルド・ロイドと並ぶサイレント映画時代を代表するスターのひとりで、監督、脚本、音楽、主演と、マルチな才能を発揮して数々の作品を生み出してきた。筆者が初めてチャップリンの作品を観たのは実家(秋田県)にいたころ。秋田テレビの日曜日午後2時からの『サンデーロードショー』という枠で、TBSの『月曜ロードショー』のチャップリン作品特集が遅れで放送されたときのこと。秋田テレビでは荻昌弘さんの解説ではなく、独自で製作した(と思われる)小森のおばちゃまこと小森和子さんの解説付きという、ローカル局にしては何とも豪華なものだった。ちなみに、小森さんが映画解説をする『洋画パトロール』(当時は“洋パト”と略していたと記憶)という番組も放送されていて、よく観ていたものだった。
 そんな数あるチャップリン作品の中でも筆者が大好きなのは、1951年の『ライムライト』と1931年の『街の灯』だ。テレビ放送で初めて観た『ライム~』はチャップリン=高橋昌也さん、クレア・ブルーム=紀比呂子さん、バスター・キートン=益田喜頓さん、シドニー・チャップリン=西沢利明さんというボイスキャストで、チャップリンの声=高橋さんというイメージが何となく今も残っている。『街の灯』はもちろんサイレント映画なので吹替はないが、観たときはいたく感動したものだった。その後、何度もテレビ放送されているが、3月にTOKYO MXで“チャップリン特集”と題して放送されたのでかなり久しぶりに観た。ちなみに、『ライム~』はMX2での放送で、CMは中盤に1回のみ、『街の灯』は同じくMX2でノーCMという、ファンとってはありがたい放送だった。
 『ライム~』はチャップリン演じる老道化師カルヴェロがブルーム演じるバレリーナ・テリーの自殺未遂を救うところから始まる。足が動かないと思い込んでいる彼女を励ますうちに、ふたりはひかれ合うようになる。そして、テリーは歩けるようになり、バレリーナとして成功していく……というのが大まかなあらすじだ。チャップリンが劇中で見せる至極の芸の数々(ノミの芸など)が素晴らしく、素顔で老道化師を演じる姿は現在の姿をさらけ出しているように見え、主演としてはある意味、集大成ではないかと思える。「この人生はどんなにつらくとも生きるに値する。そのために必要なものは勇気と創造力とほんの少しのお金だ」ほか、印象に残る名ゼリフも多い。チャップリン自身が作曲した「テリーのテーマ」の美しいメロディーに乗って描かれる物語はどこかもの悲しさを感じさせ、一世一代の芸を見せるクライマックスは胸を締め付けられる。さらに、ワンシーンだけだが、サイレント時代のライバルであるキートンとのツーショット(それもセリフあり)は映画ファンにとってはたまらない。
 『街の灯』はチャップリン演じる放浪紳士がヴァージニア・チェリル演じる目の不自由な花売り娘と出会うことで始まるふれあいがメインストーリーとして描かれる。そして、ハリー・マイヤーズ演じる酔ったときとシラフの態度が違う富豪の騒動に巻き込まれたり、娘のためにお金を稼ごうと出場するボクシングシーンなどがコメディー部分。サイレント映画らしい豊かな映像表現は今観直しても新鮮で、終幕、目の見えるようになった娘が放浪紳士の手の感触から気付いてからの名ゼリフ(「You?(あなたでしたのね?)」、「You can see now?(見えるようになった?)」、「Yes,I can see now(ええ、見えますわ)」は何度観ても涙腺が緩む。
 チャップリンは1977年の12月25日に亡くなってしまったが、彼の残した作品はこの先も語り継がれるだろうし、彼のコメディー要素はザ・ドリフターズや志村けんほか、後の世界中のコメディアンたちにも受け継がれている。チャップリンの作品が色褪せないのは、徹底して作り込まれたコメディーとしてのクオリティーの高さと、人間を見る視線の鋭さではないだろうか。子供からお年寄りまで楽しめる映画を作り出した彼の才能は本当に偉大だと改めて思う。

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