『バッドボーイズ』に関する個人的な話
『ザ・ロック』『アルマゲドン』『パール・ハーバー』『トランスフォーマー』シリーズほか、最新作の『アンビュランス』などの監督作のほか、プロデューサーとしても数々の作品を送り出してきたマイケル・ベイ監督。CMやプロモーションビデオで名を馳せ、映画監督としてデビューしたのが1995年の『バッドボーイズ』だ。マーティン・ローレンスとウィル・スミス共演のバディ(相棒)ものの刑事アクションで、筆者はまだ浜松町にあったころのソニーピクチャーズの試写室で観て、観る前はまったくノーマークだったが、意外な拾い物という感じでかなり面白かった。その後、レンタルビデオで観て、レーザーディスクを買って観た。日本では大ヒットとはならなかったと記憶しているが、アメリカではヒットしたことで、2003年には続編となる『バッドボーイズ2バッド』、2020年には第3作となる『バッドボーイズ フォー・ライフ』が公開されている。テレビで初放送されたのは、1999年9月11日にフジテレビの『ゴールデン洋画劇場』で、ローレンス=神谷明、スミス=大塚明夫、ティア・レオーニ=小山茉美、チェッキー・カリョ=玄田哲章というボイスキャストだった。ちなみにソフト版はローレンス=山寺宏一、スミス=菅原正志、レオーニ=田中敦子、カリョ=銀河万丈だった。先日、テレビ東京の『午後のロードショー』で“ゴールデン洋画劇場”版が放送されたので、久々に観てみた。正直、神谷さんのローレンスは上手いのだが、ちょっとイメージが違うような気がした。大塚さんのスミスは、大塚さんがスミスの声を演じることが少ない分、レア感にあふれていて、意外にも合っているように感じた。
舞台はマイアミ。マイアミ市警の奥深くに保管されていた1億ドル相当のヘロインが何者かに盗まれる事件が発生する。このことが外部に漏れる前の72時間以内に、ローレンス演じるマーカスとスミス演じるマイクの刑事コンビに捜査させる。マイクはコールガールの元恋人に最近金回りのいい客がいないかどうかを探らせるが、レオーニ演じる親友のジュリーと共に客の元に行ったマックスがカリョ演じるフーシェの組織の仲間に殺され、それを目撃したジュリーがフーシェたちに命をねらわれる。ジュリーはマイクに間違われたマーカスに保護され、マイクたちと共に行動するが、ふとした隙にジュリーはフーシェたちに拉致されてしまうというのは大まかな物語。
横移動ほか、縦横無尽にあおるカメラワーク、テンポの速い編集、大爆発、破壊、銃撃戦、夕景をバックにした決めカットなど、監督デビュー作からマイケル・ベイ節が炸裂する。ローレンスとスミスの軽快でテンポのいい会話、ダイアナ・キングの「シャイ・ガイ」ほか、ノリのいい音楽に乗せた展開など、バディものの王道を行く物語は楽しく、飛行場の倉庫での銃撃アクション、滑走路でのカーアクション、そして、マーカス&マイクVSフーシェの対峙など、クライマックスの畳み掛ける展開は、まさにマイケル・ベイならではで、後のアクション映画にも影響を与えているのもうなづける。そして、当時はまだそれほど有名ではなかったレオーニが、後に国務長官から初の女性大統領になる姿が描かれ、6シーズン続いたテレビシリーズ『マダム・セクレタリー』のタイトルロールを演じる(プロデューサーも兼任)なんて、このころには想像もつかなかっただろう。
このころから独自のスタイルを確立し、ヒット作を連発してきたマイケル・ベイ監督。次第に製作費も増えていき、やりたい放題状態になっていくが、個人的には『バッドボーイズ』のような映画の方が好みだ。ウォルター・ヒル監督の『48時間』と並べても遜色のない、バディムービーの快作であることは間違いない。