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『ストリート・オブ・ファイヤー』に関する個人的な話

 昨今、上映時間が2時間30分~3時間近くという長尺な映画が数多く公開されているが、1970年代~1980年代にかけて90分~100分台のアクション映画で気をはいた監督のひとりがウォルター・ヒルだ。1975年に初監督した『ストリートファイター』(93分)から始まって、1978年の『ザ・ドライバー』(91分)、1979年の『ウォリアーズ』(93分)、1980年の『ロング・ライダーズ』(100分)、1981年の『サザン・コンフォート(未公開)』(106分)、1982年の『48時間』(96分)、1985年の『マイナー・ブラザース/史上最大の賭け』(97分)、1986年の『クロスロード』(99分)、1987年の『ダブルボーダー』(105分)、1988年の『レッドブル』(105分)、1989年の『ジョニー・ハンサム』(94分)、1990年の『48時間PART2/帰って来たふたり』(95分)などがある。その中でも、筆者が『48時間』と並んで好きな1本が1984年の『ストリート・オブ・ファイヤー』(94分)だ。最初の劇場公開時には観られなかったが、再上映していた今はなき新宿京王2に何気なく入って観たら、そのあまりの面白さに94分があっという間に過ぎていったほどだった。その後、再々上映や、名画座でハーバート・ロス監督、ケヴィン・ベーコン主演の『フットルース』との2本立てを何度も観た。その後、ブロックバスターという名目で発売された10500円(高っ!)のVHSビデオを買い、レーザーディスク、DVDと、何度も観た。地上波ではフジテレビの『ゴールデン洋画劇場』でテレビ初放送され、マイケル・パレ=池田秀一、ダイアン・レイン=山本百合子、リック・モラニス=納谷六朗、エイミー・マディガン=戸田恵子、ウィレム・デフォー=石丸博也という声優陣の吹き替え版だった(後にVOD版で小山力也、藤本喜久子、真殿光昭、朴璐美、咲野俊介という布陣の吹き替え版もあり)。そして、2011年に『第二回午前十時の映画祭』で、2018年にはデジタルリマスター版も公開され、ふたたび大きなスクリーンで観られたのが嬉しかった。
 物語はいたってシンプル。人気ロック歌手のエレン(レイン)が凱旋ライブ中にストリートギャングの“ボンバーズ”に拉致され、かつてエレンの恋人だったトム(パレ)が街に戻ってきて、女性兵士のマッコイ(マディガン)と共にエレンを救出するというもの。オープニングの「Nowhere Fast」を皮切りに、ノリのいい音楽が流れ、ワイプを使った場面転換、テンポのいい編集でロックの女王の救出劇を展開していく。終盤はボンバーズのリーダー・レイヴン(デフォー)とトムのハンマーから素手での戦いという1対1の対決で、そして、トムが歌手を続けるエレンを見つめながら街を去っていくという、まさに西部劇のテイストだ。主役のパレとレインを囲んで、芸達者なモラニス、脇でキラリと光るマディガン、敵役としてインパクトを残すデフォーなど、個性派俳優が揃っているのも魅力で、当時はまだ無名だったビル・パクストンがチョイ役で出ているなど、今観るとさまざまな発見もあるというのも楽しい。さらに魅力なのはライ・クーダーが担当した音楽だ。ギターを使った渋いサウンドはまさに“A ROCK & ROLL FABLE(ロックンロールの寓話)”に相応しいカッコ良さで、ボーカル曲が入ったサントラ以外でまとめて聞きたいと思ってしまう。
 1984年に初公開されてから約40年近くの年月が経っている。それでも何度でも観たいと思ってしまうのは、この映画がシンプルで良く出来ているからではないか。94分(エンドクレジットを抜くと90分以内)の中にアクション、ラブストーリーほか、さまざまな要素をギュッと凝縮させ、テンポのいい展開で一気に見せ切る。このころのウォルター・ヒル監督のキレ味鋭い演出はカッコいいし、観ている者をシビれさせる魅力に満ちている。今度は『48時間』の4Kデジタルリマスター版なんて、どこかで上映してくれないだろうか。朝10のスタッフのみなさん、もしくはどこかの配給会社のみなさん、何卒よろしくお願いします。

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