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『シェルブールの雨傘』に関する個人的な話

 ジャック・ドゥミとミシェル・ルグランといえば、スティーヴン・スピルバーグとジョン・ウィリアムズ、ロバート・ゼメキスとアラン・シルヴェストリ、ティム・バートンとダニー・エルフマン、日本で言えば宮崎駿と久石譲というような、映画監督と映画音楽家の名コンビの一組だ。『ロバと女王』『モン・パリ』『ベルサイユのばら』などの作品で手を組んでいるが、このコンビの作品で人気の高いミュージカル映画が、日本で1964年に公開された『シェルブールの雨傘』。フランスの名女優カトリーヌ・ドヌーヴの出世作となったこの映画は、第17回カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した。筆者がこの映画を初めて観たのは、テレビ朝日の土曜の深夜に放送されていた『ウィークエンドシアター』という映画枠で、飯星景子さん(当時は飯干恵子名義)が解説をしていて、映画館で上映する字幕のままで放送され、いたく感動し、それ以来、好きな1本となった。その後、CDサイズのケースに入ったDVDを買い、リバイバル上映、デジタルリマスター版上映、『第三回新・午前十時の映画祭』での上映と、上映されるたびに行って、観るたびに新たな感動に浸っている。
 映画は4部構成。第一部「旅立ち」は、アルジェリア戦争真っただ中のフランス。ニーノ・カステルヌオーボ演じる自動車整備工場に勤める20歳のギィと、ドヌーヴ演じる母親の傘店を手伝う17歳のジュヌヴィエーヴが結婚を誓い合った恋人同士で、ある日、ギィに招集令状が来たことでふたりが別れ別れになってしまう姿が描かれる。第二部「不在」は、ギィと離れ離れになってしまったジュヌヴィエーヴがギィの子供を妊娠し、手紙が来ないことを不安に感じていた。そんなとき、マルク・ミシェル演じる宝石商のカサールがジュヌヴィエーヴに結婚を申し込む。ジュヌヴィエーヴの気持ちは次第にカサールに傾き、子供を一緒に育てようというカサールのプロポーズを承諾したジュヌヴィエーヴが結婚式を挙げるまでを描く。第三部「帰還」は、足を負傷して除隊となって戻ってきたギィがジュヌヴィエーヴが結婚したことを聞いてショックを受ける。彼はふたたび務めた自動車整備工場を辞め、傷心の日々を送っていたが、エレン・ファルナー演じるマドレーヌに支えれられ、かねてからの夢だったガソリンスタンドを開くまでを描き、そして、エピローグへとつながっていく。
 上から舗道を映し、雨の降る中をさまざまな人々が傘を差して行き交うオープニングからしてシャレているし、映画全体が赤や青、黄色など、鮮やかな色で彩られ、ミシェル・ルグランのテーマ曲をメインにした、バリエーションたっぷりの音楽が流れる中で、出演者のセリフが歌で表現されている。通常のミュージカル映画はセリフと歌が共存している形だが、今作はセリフがすべて歌という、当時としてはかなり斬新な演出がされている。ストーリーはいたってベタというか、王道のラブストーリーだが、映画全体が音楽になっていることで、これまでのミュージカル映画とは一線を画したものになった。メインを演じるドヌーヴもカステルヌオーボも歌は吹き替えだが、あまり違和感は感じないし、ドヌーヴの美しさには思わず目をくぎ付けになる。エピローグのストーリーに関してはあえて触れないでおくが、何とも切ない、まさに名シーンといえるものになっている。筆者はそのラストシーンを観るたびに、毎回、ウルっときてしまう。
 ドゥミ監督とルグランの音楽、ドヌーヴの出演作といって思い出されるもう1本が、ドヌーヴの実姉フランソワーズ・ドルレアックと共演した『ロシュフォールの恋人たち』。『ニュー・シネマ・パラダイス』のジャック・ペラン、『ウエスト・サイド物語』のジョージ・チャキリス、『雨に唄えば』のジーン・ケリーが共演するという、映画ファンにはこたえられない作品だ。『シェルブール~』を観ると、『ロシュフォール~』が観たくなるというのは映画ファンの心理。『ロシュフォール~』に関しては、今後、そう遠くないうちに取り上げてみたいと思う。

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