悪のマジムン軍団が批難する、ヒーロー達の言動|放送15周年 『琉神マブヤー』
昨年5月に、沖縄のヒーロー「琉神マブヤー」が沖縄伝統の「組踊」とコラボするというニュースを聞いてから、続報を楽しみに待っていた。
そして先日、琉神マブヤー放送15周年記念特別プロジェクト『【創作】組踊琉神マブヤー~あけもどろ編~』のメインビジュアルが先日公開された。紅型デザインのチラシ、カッコ良すぎる…
日本を代表する演出家・ 宮本亞門さんと、玉城流3代目家元・玉城盛義さん、山田優樹さんがタッグを組み「琉神マブヤー」の原点を創作組踊で演出するそうです。
もちろん今回の組踊を見るには、チケットを購入する必要があります。しかし、これまでTV放送されたものは、ほとんどYouTubeで視聴することができます!各エピソード20分程度で見れるので、気になる方はどうぞ。
「アンパンマン」には「ばいきんまん」が存在するように、琉神マブヤーにも「マジムン軍団」という敵が存在します。(マジムンとは、沖縄県や鹿児島県奄美群島に伝わる悪霊、”妖怪”の総称)
これまで奪われたマブイストーンは、「めんそーれのマブイストーン」「琉球舞踊のマブイストーン」「ガジュマルのマブイストーン」など。マジムン軍団は、「マブイ(魂)」を奪い、沖縄社会が混乱する様子を見て喜びます。
例えば、「めんそーれのマブイストーン」を奪われると、沖縄の人から「うとぅいむち(歓迎、おもてなしの心)」が失われる。すると、沖縄の人たちは観光客に対して「帰れ〜、帰れ〜」と言ってしまう。
子ども向けではありますが、「こんな沖縄は嫌だ!」みたいなユニークな話としても楽しめるので、県外の方にとっても楽しむハードルが低めです。
琉神マブヤーARISE[第12話] ガジュマルのマブイストーンがでーじなってる!
私の一番好きな作品が、『琉神マブヤーARISE』(2017年)。その中でも、第12話「ガジュマルのマブイストーンがでーじなってる!」のワンシーンがとても心に刺さります。
「ガジュマルのマブイストーン」が奪われた沖縄では、街中からガジュマルなど沖縄固有の植物が消え、ヤシの木だらけに…
異国情緒あふれる景色を見て、マブヤーたちは「海外みたい!」「ちびらーさっさ(きれいだね)」「素敵!」と目を輝かせる。しかし、そんなヒーロー達を見て、悪のマジムン軍団・ハブデービルが放った一言が胸を刺します。
観光客に合わせた、異国情緒あふれる”南国・沖縄イメージ”。ガイドブックに紹介される”沖縄らしさ”とは、果たしていつの時代から続く沖縄なのか。国道58号線沿いに連なるヤシの木のように、つくられた沖縄もあるのではないだろうか…
そして、コロナも落ち着き、県外・海外に気軽に行ける現代。外に出て、その土地の魅力を感じることができるのは、ハブデービルの言う通り、生まれ育ったところがあってこその感情だと思う。だからこそ、沖縄に住む私たちが、大切にしたい「沖縄らしさ」とは何なのかについて考えていきたい。そしてこれは、沖縄に限った話ではない。
『琉神マブヤーARISE』(2017年)では、沖縄の人気芸人ありんくりんの2人がマジムン軍団として演者に加わったこともあり、悪役・敵という存在が少し変わってきている。
第4話「昆布のマブイストーンがでーじなってる!」では、ありんくりん・クリス演じるアカマターデービルが、うまく必殺技の出せない琉神マブヤーに「目的意識をもって、心を込めて打ち込みなさい」とアドバイスをするシーンもあります。
沖縄をはじめ、日本の各地域には、その土地で生まれ育った人たちだからこそ感じることのできる”魅力”があると思う。しかし、その土地に住み続ける人にとってはその”みりょく”も日常である。
それが失われた時に、私たちの地域がどうなってしまうのか、何をこれからも大切にしていきたいかを考えさせてくれる琉神マブヤーは、沖縄の人はもちろん、県外・海外の皆さんにとっても面白い作品だと思う。ぜひ!