最後の椅子は誰のもの?
Bリーグ・B2の昇格争い、プレーオフ進出争いは最終局面に入った。先週末までの結果を以て、すでに佐賀バルーナーズ、アルティーリ千葉、越谷アルファーズと、各地区の上位チームがプレーオフ出場を決めてしまった。その中での注目は東地区3位と、そこに端を発するワイルドカード争い。毎節の星取りで簡単に順位が入れ替わる状態にあり、その熾烈さは増すばかりだ。
そんな中、3月13日を以てBリーグの補強期限も締め切られたため、ここからメンバーの入れ替えの発表がない限りは各チームの残った戦力のやりくりによる勝負が注目されていく。
そんな中で順位表を見てみると、その激しさが分かるかと思われる。
東地区の3位から5位の西宮・福島・青森に加えて、西地区4位の愛媛までもが相星。1試合の勝敗が、大きな浮き沈みを生みうる状況となっているし、それぞれの争いには、まだ山形や福岡も荒らせる位置にいる。福岡はさらに言えば、この戦線でつまずいてしまうと、バンビシャス奈良、香川ファイブアローズ、アースフレンズ東京ZとのB3降格レースに巻き込まれかねない位置に来てしまう。となれば、できるだけ目線は高く保っておきたいところのはず。
補足しておくと、東地区の2位・越谷アルファーズと西宮は10ゲーム以上が既に離れていて、流石にここが逆転することは現実的ではないかと思われる。
一方、西地区については、3位の熊本ヴォルターズと愛媛のゲーム差が5。こちらを切り取れば、まだ一波乱あってもおかしくはない位置関係だ。だが、今回については、あくまで「東3位・ワイルドカード争い」に絞ってコラムを展開していきたい。
順位が下のチームから紹介し、その冒頭となる福岡編のみ無料公開とさせていただく。テイストとしては、先に公開されている、こちらの記事を参照いただきたい。
本題の前に
ライセンスについて
3月14日にBリーグの理事会が開かれ、2023-24シーズンに向けたB.LEAGUEクラブライセンスの判定・交付の結果が発表された。今回の記事で取り上げられたチームの中では、
以上のようになっている。B2ライセンスとなった青森・愛媛にとっては、自チームの昇降格そのものについてはここで話が終わってしまうのだが、それと競技成績は別の部分。むしろ「コート内が頑張っているのだから」というクラブやその周りへの押し上げになっていってもいいポイントだろう。
また、山形のほか、今季の編成に当たって経営陣が予算オーバーを先んじて公言していた福島がB1ライセンスの継続審査となっている。両クラブがどの状況であるかは、それぞれが詳細を説明するコメントが出ていないので、現状「何が原因」と断ずることはできない。
というところがあるとしても触れておきたいポイントが1つある。今季のライセンス判定における財務基準では、売上高や赤字以外に、今季からはB1ライセンス取得に当たって、債務超過の解消がマストとなっている。
これにより、健全で強い財務体質が求められるわけで、ここからどう問題を解決できるのか、あるいはこれによってチームが目指す昇格への道が阻まれてしまうのか、という部分では注目し続けておきたいところだ。
ちなみにB2勢で言うと、これまで赤字体質が抜けていなかった佐賀(西地区1位)や、債務超過を抱えていた熊本(西地区3位)などがB1ライセンスをしっかり獲得している。いずれも、経営体制の転換からチームが生まれ変わりつつあることを示した、とも言えるため、ここに続いていけるかが注目される。
それぞれの順位のタイブレーク
相星ながら、東地区での順位とワイルドカードでの順位には、少々違いが生じている。まずはここの整理からしておくことにしよう。
タイブレーク①東地区4・5位
タイブレーク②ワイルドカード1~3位
地区をまたいだ順位決定のため、ワイルドカードについてはややいびつなかたちではある。なお、順位の決定方法についてはこちらを参照されたい。この後にも触れるが、青森と愛媛はまだ2試合の対戦を残しており、仮にそこで愛媛が2勝すると、3クラブとも当該対戦での勝率が5割となる。その場合のタイブレークは当該試合全てでの得失点差が考慮されることとなる。
WC5位 ライジングゼファー福岡
外国籍PGである#23マーベル・ハリスが2季ぶりにBリーグに復帰し、さらに秋田でのB1経験を経て#7ジョーダン・グリンもチームに復帰。ここに#32ドリュー・ゴードンと、アジア特別枠として#20グレゴリー・スローターを加え、さらに日本人ビッグマンとして#43永吉佑也が加入。得点の取り方にかけては、かなり期待値の高いシーズンインのはずだった。
ところが、このメンバーを擁しながら、持病レベルにインサイドでの強度を確保できず、平均トータルリバウンドは35.8で目下リーグ最下位。特にシーズンを通じて、要になってほしいはずのゴードンがピリッとしない場面が多かったのと、日本人選手で永吉以外の選手のアンダーサイズに悩まされていた感は大きい。あと永吉も永吉で基本的に消え役になってしまう場面が多く、他の選手が取れなければ自ずとポゼッションは獲得できず。
#22石橋侑磨と#24本多純平と190cmプレイヤーは2人いるけれど、そうは言ってもこの2人も主戦場はウイング。また、#6大塚勇人や#88重冨周希を起用すると、ハリスとの共存をなかなか果たせず、コートバランス的に浮くところがまあまあ見られた。そしてハリスを外すとなると今度はボールが止まるということで、どうにもこうにも。それが数字に表れているのがアシストで、1試合平均16.4はやっぱりリーグ最下位。平均得点も実はリーグワースト2位。ちなみに平均アシストはB1・B2を通じて最も少ない。
その一方で、グリンやハリスも個人でこそ点は取ってくるものの、相手のパワーを受け止めきれるほどの強度にあふれた形は見出せず。「せめて岩手に行ったジェラルド・ビバリーがいれば…」なシーズンが続いていた。
その編成を改めたのが、1月26日のこと。ゴードンとの契約を解除し、アメリカGリーグでの経験も長い#33ステファン・ジマルマンとの契約に至った。
試合でもパフォーマンスのあるところを見せ、サイズ面やリバウンドの目処が立ったか…に見えたのもつかの間、3/7に練習中の負傷で左肩関節亜脱臼と診断されてインジュアリーリスト入り。一難去ってまた一難。
ということで、今季4クラブ目の所属となる#42ケビン・コッツァーが加入。渋いブルーワーカーが入ったことはシンプルに光明ではあるのだが、「やっぱりバタついたら簡単にはチーム状態が上がらない」というのが現れてはいる。
で、そのコッツァーについては現状ある珍記録達成が目されていて…それは下記ツイートやその引用などを参照いただきたい。
福岡の残り試合
降格ダービーから抜け出したい奈良と4戦、香川と2戦残していて、これ次第ではワイルドカードからの脱落どころかそちらへのダービー参戦が現実味を帯びてしまう。東京Zもすさまじい勢いでまくりをかけているだけに、試合を「取りきる」ことが改めて重要となるはず。一方でいかにもな上位戦は、長崎との4戦を残すのみ。残るは愛媛との直接対決だが、ここの星取り次第で上にも下にもブレ放題。
東が東で混迷している中、逆に一気呵成に抜け出すチャンスはある、逆ブーストもかかりうる、アンバランスな状況だ。
福岡の一手
福岡についてははっきりしているポイントとして、ハリスの存在をどう定義するか。チームとして当てはめることも大事だが、それで彼の長所が消えかねないのならば、誰にブルーワーカーをさせるかというところに尽きる。
同じくパワー系PGのレイナルド・ガルシアを抱える佐賀バルーナーズは、彼を自由にプレーさせる一方で、他の編成で冒険をしすぎず。ファイパプ月瑠、満原優樹、チェイス・フィーラーといった、他クラブでもしっかり評価を受けてきた実力者・仕事人たちをラインアップに揃えていること、また彼以外にも西川貴之という強烈な個性を抱えていることが、快進撃を支えていると言ってもいいだろう。
方や福岡からすると、そこに対する現実的な回答を見出せず、強いて言えば編成で片っ端から冒険をしてしまったまま最終局面まで来てしまった。ただ、ここでコッツァーが加入したことで、今抱えているメンバーでできることとのバランスを取りながらの采配は可能になっていくはずだ。
例えば彼のミニッツが30分あるとして、その30分に誰の守備貢献を頼るか。現状のメンバーで志向できる部分としては、多少コートバランスを重くしてでも永吉とコッツァーを併用して強度を増していくこと、そしてグリン&スローターとのツープラトンを形成するのも一手ではないかと思える。グリン自身の強度レベルを考えれば、登場時にはある種の固定砲台に専念してもらう方が、無理のないところにも思える。アシストはもっと減るかもしれないという懸念はあるのだが。ここまで来てしまえば、持っているパーツはパーツとして、あとはそれをどう活かして料理するかの世界のはず。
ハリスに関してもう一言付け加えると、熊本在籍時にはPGに石川海斗というもう1人のキングがいたこと、佐々木隆成という新たな突き上げもあった一方で、当時の熊本には帰化枠ビッグマンとしてファイサンバの存在もあった。現状の福岡は逆にガード陣はロールプレイヤーに長けた存在も多く、スローターの存在でオンザコートをもう1枚増やせる利点はある。
5人全員でのバスケット、という点から見れば少し遠くなってしまうものの、強烈に武器となる個を潰す、というリスクを含んだまま戦うことも、恐らく良い結果を生まない。ここからの福岡がどういった着地を狙っていくかが、そのままチームとしてのラストスパートに残されたスタミナを表すだろう。
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