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ほとけさまのおしえ「草取り」

 この時期、お寺の住職や坊守が頭を悩ますことの一つに「草取り」があります。

 夏の太陽が降り注ぎ、雨水を吸い込んだ地面が温められると、草が大いに繁り「鬱蒼と」茂みができるほどになります。

 また、種をつけだすとズボンの裾についたりして「取り除くのに一苦労する」こともあります。

 そんなことにならないように、こまめに草取りをしていけばよろしいのでしょうが、この酷暑の中、夏のお参りに疲れた身体を動かすことが出来ずに茂らせてしまうのです。

 朝夕の暑さが幾分和らぐこの時期から少しずつ始めようと思いますが、なかなか気持ちが前に向きません。

 そんなときに「心がけていること」が一つあります。

 それはとりあえず草むらにしゃがんで、自分の「手が届く範囲だけ」草取りをしようということです。

 つまりは「半径四十センチの円の中」だけ草取りをしたらその日はそそくさと終わるのです。

 それを毎日繰り返していれば、いずれは広い境内の草も取り除くことができるはずです。

 実際にやってみると、何日に一回かはサボりますが、ちょっとずつきれいになるのは楽しいもので、意外と続いています。

 仏教には「一隅を照らす、これ即ち国宝なり」という言葉があります。

 これはどんな小さな光であってもまずは「自分の身の回りを照らすような心がけでいなさいよ〜」という意味です。

 延暦寺を開かれた伝教大師「最澄上人」が、この世の人びとの幸せを願ってこの教えを示されました。

 この精神は沢山の方々の心を動かし、その生き方を前に進めている教えでもあります。

 しかし簡単そうに見えて、周りを照らそうとすることは意外と難しいのです。

 近しい人に限って相反したり、隣の国に限って威嚇や軍事侵攻をしたりしているのが現実です。

 まずは自分の周りから照らしてみる。

 ともすれば忘れてしまいがちなその心持ちをあらためて思い起こしながら、コツコツと毎日の草取りに励んでおります。


☆今日の一句☆

 幸せの
   石は足元
      転がりて

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