【エッセイ】真夜中の住宅街散歩

私の住まいは都会の田舎。
あまり具体的にも言えないが
まあ、街路樹や街灯がほどほどに整備された道があり
なだらかな道も多いので、都会よりの田舎だと思って欲しい。

自宅近辺は夜中でも車が通る車道がある。
血液のように常時巡るそれは、なかなかにうるさい。
ただ、少し道と時間を外せば喧騒は遠ざけられ
寝静まった住宅街の道が存在する。


私は夜のしじまを歩くのが好きだ。
人工的に作られた道で、虫はさほど多くなく
街灯も整備されているので安心して歩ける。
(時折、街灯に照らされた謎の小影にビビったりもするが)

一人の時間、一人の場所、一人の空気が得られる
貴重な息抜きと言える。
人目を気にせず草花を愛でられるのもいい。暗いが。
(昼の散歩も悪くないが、人目も多いし少々まぶしすぎる)


昨晩に気づいたのは、たまたまちょうどよく
街灯に照らされた花木があって。
美術品の展示場のように思えた。
周囲は暗く、そこだけにスポットを当てる演出。
公園の花木はその周囲も明るいことが多くて、少し違うように思う。

そのように美しく目に映ったのは
白いモクレン、若木のサクラ、ハナミズキが思い出される。
ただまあ、偶然的ポジションでそう映る場所があるだけで
そういったものを探す楽しみもあるな、といった
ていどの話のオチでもある。


その散歩道の中には
十数年単位で進めている工事中の道路がある。
今は静かだが、いずれ自宅近辺のように
車が常時走るようになるのだろうな、と想像したら
「私の息抜きが減るのだな」と少し寂しく思った。

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