#39 "あんこのおまじない"
1.本日、3月5日は「啓蟄」
本日、3月5日(土)は、二十四節気の啓蟄(けいちつ)。
「蟄」は、虫などが土中に隠れている状態を意味し、「春の気配を感じて、土中で冬ごもりしていた虫たちが、穴を『啓(ひら)』いて、地上に出て来る時候」ということで、名付けられたようです。
暦の上で春の始まりとされる「立春」や「雨水」を過ぎても、なかなか気温が上がらず、梅の開花も遅れていましたが、2月最終週からの気温急上昇を受けて開花が進み、早咲きの桜は、ほころび始めました。
立春時に比べると、日照時間も1時間余り長くなりました。
「1月はイク、2月はニゲル、3月はサル」
1-3月は特に時間の経つのが早く感じますが、3月に入り春らしい穏やかな陽気になって来ました。
2.”あずきの声を聞けえ”
昨年11月に始まったNHKの朝ドラ「カムカムエヴリバディ」も残り1か月、「安子-るい-ひなた」3人の半生、ほぼ100年を描くストーリーも佳境に入りました。(朝ドラは2005年の「ファイト」以来、欠かさずに見ています。)
番組では、ルイ・アームストロングの”On the Sunny Side of the Street”がモチーフとなるテーマ曲として流れ、「あんこのおまじない」も、祖父(杵太郎)から父(金太)ー娘(安子)ー孫(るい)ーひ孫(ひなた)へと、時代を超えて受け継がれていきます。
「あんこのおまじない」は、第7週(第35回)でロバート(村雨辰剛さん)によって、英語に訳されました。英語で聴くとまた違った味わいがあるものになっています。
番組と連動して放送されている”ラジオで!カムカムエヴリバディ”は、講師の大杉正明先生の軽妙な解説と、AIさん、天野ひろゆきさんの掛け合いで、ユニークな英語講座になっています。
2月28日(月)の講座で「あんこのおまじない」英語訳が紹介されました。
3.啐啄同時(そったくどうじ)
「あんこのおまじない」は、キャリア支援の現場でクライアントと向き合っているとき、正にそうだな、と思いながら、心の中で口ずさんでいます。
”啐啄同時(そったくどうじ)”という言葉があります。
もともとは、禅宗の教えで、「師匠と弟子の呼吸が一致するときに、悟りが得られること」に由来する言葉です。
「啐」は、鳥の雛が孵化するときに殻の中から鳴くこと。
「啄」は、母鳥が外から殻をつつくこと。
鳥の雛が孵化するには、「啐」と「啄」が同時である必要がある。
啐啄同時とは、雛と親鳥が、機を得て相応じること。
20年前、キャリアコンサルタント養成講座で、生涯の師となるY先生から紹介されて読んだ松永真理さんの著書「なぜ仕事するの?」の中で、松永さんが取り上げており(角川文庫:P159-160 )この言葉を知りました。心に響く言葉として当時のブログにも書き留めています。
4.クライアントの力を信じる
”あんこのおまじない”、も”啐啄同時”も、キャリア支援に相通じる考え方だと思います。
クライアントの力を信じる
・先走りしない
・予断を持たない
・クライアントが主役、キャリアコンサルタントは傍役
・クライアントの「言葉」の奥にある「気持ち」に応える
・クライアントの態度、表情、仕草から、心の声を聴く
・クライアントには、答えを見つける力があると信じる
自分のこれまでの経験や似たケースに思いがめぐり、つい先読みしてして、「聴くこと」がおろそかになって我に返ることがあります。
そんな時は、”啐啄同時”と自分に言い聞かせています。
”あんこのおまじない”も、『待つこと』の大切さに気づく良い教えになりました。
”「あずきがあんこになる時」はクライアントに行動変容が起きた瞬間"
と言えます。
”あんこのおまじない”と”啐啄同時”
土中で冬ごもりしていた虫たちが、穴を啓いて地上に出て来る「啓蟄」にも、通じるものがあるかも知れません。