#35 「この道」と『このみち』
1.本日は立春
本日(2月4日)は二十四節気の「立春」。暦の上では春の始まりですが、日本海側地域の天気は大雪が報じられています。厳しい寒さが当分続きそうですが、それでも、『春』と口にすることで、自然と春が近づいて来るような気になります。
日照時間が1年で最も短い「冬至」から約1か月半が経ち、日一日と、日の出は早く、日の入りは遅く、日照時間は長く、なってきました。少しずつ梅の開花も始まり、桜の開花も楽しみです。
2.「この道」と『このみち』
NHKのEテレ「100分de名著」(25分x4回シリーズ)は、私のお気に入りの番組です。司会はタレントの伊集院光さんとNHKアナウンサーの安部みち子さん。毎回『指南役』の解説には、色々な気づきを得ます。10年以上、視聴していますが、1月は作家・翻訳家の松本侑子さんを『指南役』に迎えての「金子みすゞ詩集」でした。
1回目の放送で、松本さんは、金子みすゞの詩の特徴として、①視点の移動・逆転、②対比、③比喩のすばらしさ、の3つを挙げました。「なるほど!」:3つの観点から作品を読んでみると、これまでにない味わいと気づきがありました。
最終回で、松本さんは、最後に紹介したい作品として、北原白秋の詩「この道」と対比させる形で、金子みすゞの『このみち』を紹介しました。
北原白秋の「この道」は、山田耕筰作曲の童謡としても、広く親しまれていますが、松本さんは、北原白秋の「この道」を、「過去へのまなざし」(少年時代へのノスタルジー)を感じさせる作品と評する一方、金子みすゞの『このみち』は、「未来へのまなざし」(希望)を感じさせる作品として高く評価します。私は、番組を通じて、初めてみすゞの『このみち』を知りました。
一連の「榎(えのき)」、二連の「かえろ(蛙)」、三連の「案山子」は、弱いもの・孤独なものの象徴であり、「みち」の先には、それぞれ、「大きな森」「大きな海」「大きな都」があろう、とし、最後の四連は、「明るい未来を信じてみんなで歩いて行こう」というみすゞのメッセージである、松本さんは解説します。
『このみち』は、①視点の移動・逆転、②対比、③比喩のすばらしさ、全てが際立っています。4回に渡る番組を通じ、松本さんの深い洞察を交えた解説は、これまで金子みすゞ作品を、表面的にしか読んでいなかった私にとって驚きでもありました。コロナ禍が続く中、金子みすゞの作品を、改めて読み直してみたいと思います。
3.現在-過去‐未来
「この道」と『このみち』ー2つの作品を読んでみると、改めて時間はつながっていることに思いが至ります。「現在-過去-未来」ー渡辺真知子さんの「迷い道」の歌詞さながらの悪戦苦闘の開発の日々が続く中で、「過去」に立ち戻ることで、一気に「未来」への視界が広がった経験を述懐されたノーベル化学賞受賞者、吉野彰さんのことを昨年10月11日のnoteに書きました。
”CONNECTING DOTS”
2005年6月スタンフォード大学卒業式で、スティーブ・ジョブズが行った講演は、感動的な内容でした。今でも、時々YouTubeで視聴します。
”CONNECTING DOTS”
点と点が自分の歩んでいく道の途上のどこかで必ずひとつに繋がっていく、そう信じることで君たちは確信を持って己の心の赴くまま生きていくことができる。結果、人と違う道を行くことになってもそれは同じ。信じることで全てのことは、間違いなく変わるんです。
「現在-過去-未来」ー時間はつながっている。そして、人生に起きること、全てに意味がある。100年に一度の感染症パンデミックとされる新型コロナとの遭遇にも、意味を見出す。そんな、思いで、立春の今日を過ごしました。