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#71 ”Word of the year 2022”に思う

1.”Word of the year 2022”が出揃った

 2022年のユーキャン新語・流行語大賞に『村神様』が選ばれました。
シーズン最終打席での劇的な56号ホームランと三冠王の達成など、村上宗隆選手の今シーズンの活躍は神がかり的とも言え、大賞に「村神様」が選ばれたのは順当だと思います。
 一方、海外の辞書出版大手4社の”Word of the Year 2022”も出揃いました。
Merriam Webster(米): ”Gaslighting”(ガスライティング)
Oxford(英): ”Goblin mode”(ゴブリン・モード)
Cambridge(英): "homer"(ホーマー)
Collins(英): "Permacrisis"(パーマクライシス)
 「新語・流行」の定義や選ばれた背景、選考基準も一様ではなく、単純比較はできませんが、その結果には色々と考えさせられます。
 Word of the year 2022は、各社ホームページで公開されています。
本日はMerriam Websterが選んだ”Gaslighting”について考えてみたいと思います。
*******************************【Word of the year2022】各社HPで掲載(該当ページにジャンプします)
ユーキャン新語・流行語大賞『村神様
Merriam Webster  ”Gaslighting
Oxford Languages  "Goblin mode"
Cambridge Dictionary  "homer"
Collins  "Permacrisis"
三省堂 今年の新語『タイパ
小学館 大辞泉『キーウ

2."Gaslighting"と米映画「ガス燈」”GASLIGHT"(1944)

2-1 ”Gaslighting”ーメリアム・ウエブスターの解説

メリアム・ウエブスターは、ホームページで”Word of the year2022”に選んだ”Gaslighting"について解説しています。(以下HPから抜粋)

”Gaslighting”出現の背景
In this age of misinformation—of “fake news,” conspiracy theories, Twitter trolls, and deepfakes—gaslighting has emerged as a word for our time.
「フェイクニュース」や「陰謀論」「ツイッタートロール(中傷や攻撃的な書き込み)」「ディープフェイク」など、誤った情報であふれている時代を映し出す言葉として出現

定義
Gaslighting: psychological manipulation of a person usually over an extended period of time that causes the victim to question the validity of their own thoughts, perception of reality, or memories and typically leads to confusion, loss of confidence and self-esteem, uncertainty of one's emotional or mental stability, and a dependency on the perpetrator
被害者に自身の考えや現実の認識、記憶の正当性を疑わせ、混乱を招いたり自信や自尊心を失わせたりして、感情や精神を不安定にさせて加害者に依存させる心理的操作

近年の用法の変化
But in recent years, we have seen the meaning of gaslighting refer also to something simpler and broader: “the act or practice of grossly misleading someone, especially for a personal advantage
最近はもっと広い意味で使われている。「特に自身の利益のために、人をミスリード(欺く)している行為や習慣」など

Merriam WebsterのHPから抜粋

2-2  イングリッド・バーグマン主演 米映画「ガス燈」(GASLIGHT)(1944年)を観る

ここ数年、”Gaslighting”で形容される代表的なものに、「誤った情報で相手を操作する」トランプ前米大統領の手法があります。

Gaslightingの語源は、1938年の英戯曲「ガス燈」に由来するとされていますが、その後映画化された1944年の米映画、イングリッド・バーグマン主演の「ガス燈」(GASLIGHT)をDVDで観てみました。

1982年にイングリッド・バーグマンが67歳の誕生日当日に亡くなったあと、
映画評論家の淀川長治さんが、追悼のメッセージと共に、
是非見てほしい作品として「ガス燈」を紹介しています。

「ガス燈」は秀作でした。本作品で、初めてのアカデミー主演女優賞を受賞したイングリッド・バーグマンも美しい。その美しさゆえに、Gaslightingの怖さを感じる作品でした。
CINEMORE 「ガス燈」(ネタばれ注意!)

本作品から、70年以上が経ち、世の中も大きく変化した2022年に、
何故、”Gaslighting"が、”Word of the year"となるのか??

3.”Gaslighting”を乗り越える

2022年、Gaslightingを辞書で"look up"(調べた)頻度は前年比1740%の増加を示しました。それも、年間を通して一貫した増加基調だったとのこと。
 どういう状況で、どういう心理で、”Look up"(調べた)のか、「陰謀論」や「フェイクニュース」など誤った情報が氾濫する中で多くの人が辞書を引いたのは、不安心理の現れではないでしょうか?
 否応なしに、溢れんばかりの情報の渦中にさらされ、「スマホ一つで、ありとあらゆる情報が手に入る」状況にある人達からのSOSサインのように感じます。

コロナ禍も3年を迎えた今年、次の一歩を踏み出すためのヒントを探したいと思いながら出逢った本の中で、印象に残った本3冊について触れておきます。
見えないものを見る抽象の目細谷功

思考停止社会ニッポン苅谷剛彦

やわらかく、考える外山滋比古

細谷功
・スマホによる視野狭窄から抜け出すこと。
・具体↹抽象の視点を持つこと。
・「無知の無知」に気づくこと
苅谷剛彦
・「鎖国」「自粛」「平和ボケ」というキーワードで「わかったつもり」に
  陥りがちな「思考の習性(クセ)」を知ること
外山滋比古
・あえて対象から離れてみること
・使い慣れた言葉から抜け出すこと(日常言語圏からの脱出)

 Word of the year、日本で言えば流行語大賞ですが、縦軸(時間軸)で言葉の変化を見て、横軸(空間・世界)で比較対照して見てみると、日本の流行語大賞は、芸能・バラエティ、スポーツが中心で、海外のそれと比べ「見るべきもの」を見ていないのではないか、と感じてしまうのです。
 3氏の著書での提言をミックスしながら考えてみることに、Gaslightingを乗り越えるヒントがあるように思います。
 まずは、小さな実践から


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