「反社会的」
対象:まともな人
目的:「反社会的」という言葉の意味を説明する。社会に存在する反社会的な物事に対する理解を深める助けをする。反社会的なものを「反社会的である」と形容することに躊躇わないようになる助けをする。
「反社会的」は単独では使われていないことが多い
「反社会的」という言葉は、(2023年現在の)日本では広く使われていない。一般に使われる場合は、「反社会的勢力」「反社会的組織」「反社会的行為」のいずれかで、「〇〇は反社会的である」という表現自体は理解可能であっても、厳密な意味は、定まっていないと言えるだろう。
「反社」は暴対法に由来する
一方、日本には、「反社」という俗語がある。「反社」とは、「反社会的勢力」の略で、歴史的には、まず「暴力団対策法(暴対法)」によって定義され、その後意味が拡張されて、反社会的な方法で経済活動を行う集団を広く「反社」とみなすようになった。
「反社会的」の意味は広い
暴力団をはじめとする「反社会的勢力」が「反社会的」であることに疑いはないが、他にも、反社会的な性質を持つ個人、集団、あるいは言論や行為は、世界にあまりにも多く見られる。それらをはっきりと「反社会的である」と識別してかつ明言することは、反社会と戦う上で、極めて大事な基本的な部分である。
社会心理学では、「向社会的行為 (pro-social behavior)」「非社会的行為 (non-social behavior)」「反社会的行為 (anti-social behavior)」という概念がある。向社会的行為は社会のためになる行為、反社会的行為は社会を劣化させる行為、非社会的行為はどちらでもない行為を意味する。
英語でも日本語でも、一般には「反社会的行為 (anti-social behavior)」、あるいは「反社会性人格障害 (anti-social personality disorder)」という用語が広く使われるが、いずれにしろ、「反社会的 (anti-social)」という形容は、頻繁に見られなくても、その意味は自然に、直感的に、一義的に理解されるだろう。
いずれにしろ、「反社会的」が指す意味は、「反社」よりもずっと広い。
「反社会的勢力」の定義は意外に難しい
また、広い意味での「反社会的勢力」を、厳密に定義するのは、意外に難しい。そもそも、「勢力」を定義することも難しいが、その上に、反社会的勢力はゆるく広く連帯する。関係があるともないともいえない、しかし利害は共通し、悪意も共有する。その一方、関係は不明瞭である方が、証拠隠滅には都合がいい。
自民党や旧統一教会などの「反社会的な勢力」からすれば、広義での「反社会的勢力」が指す対象は、狭いに越したことはない。そういった意図を持つこと、意味を意図的に狭めて「我々は反社ではない」と言い逃れたい、そうした態度自体が反社会的である。安倍内閣の閣議決定は、そういった消極的な姿勢そのもので、自民党が自ら進んで反社会的である、と宣言したに等しい。
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