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日本人は御洒落でいられるものなのか3

前回、前々回と「日本人は御洒落でいられるものなのか」と私見を述べています。

今回は、サプライサイドのほうに焦点を当てて、私見を述べようと思います。

大人らしいけど大人しい服が増えた

前回、「大人らしいけど大人しい」傾向について述べています。

デコラティブトレンドなのに派手じゃない。
マストレンドとして体感できないのです。
これは私だけの体感では無いようです。

南充浩(みなみみつひろ)さんはこう仰います。

一昨年くらいから、黒い服ばかり購入していて、すっかり「黒」ばかりになってしまった。

理由は、各ブランドの色展開が少なくなっており、黒・グレー(グレージュの場合も)・ベージュくらいの3色展開ばかりだと感じる。たまには他の色も買いたい(着たい)と思うのだが、売っていない物は買えないのである。

下記ブログより筆者引用。
一昨年とは2022のこと。

黒、グレー、ベージュは、所謂「売れ筋」です。
売れ筋でないものが売られなくなってきている、というのが現実です。

これはとりもなおさず、良く言えば「各社が販売効率をより高めるため」といえる。何せ、ユニクロの実店舗を見ていても、アンドエスティやアーバンリサーチネット通販を見ていても、高い確率で残っているのはベーシックではない色物商品である。

となると、売る側とすれば「明るい色や派手な色のアイテムは危険」だと考えるようになる。また買う側も「珍しい色物は買っても似合うかどうかわからない」とか「コーディネイトが難しそう」とかそんなふうに考えがちで、黒などの定番色を買ってしまいやすい。

同上。

私の体感だけでなく、各社の実際の傾向として、現実にあるようなのです。

派手な色物を特価で売っても利益が出ないから、そうなっていくということです。

「大人らしいけど大人しい服」は、実際に増えているということなんです。

似たような服では価格競争が激化する

しかしながら似たような服では、価格競争以外の競争が出来ません。
価格競争のみが激化していきます。

2010年代後半から特に利益率の向上が各社ともに課題となっている中で、値引き販売を減らすには「売れにくそうな色物」を減らす、もしくは無くすことが最も効率的だと考えられるのも当然といえる。

だが、その結果、全ブランドがほぼ同質化してしまい、ブランドごとの区別ができにくくなるという現象も起きており、その傾向は年代が進むごとに強くなっていると感じる。

同上。

だが、こうなるとより価格競争が激化する可能性が高い。

なぜなら、例えば黒無地の長袖Tシャツがあったとして、パッと見た瞬間はどのブランドでもほぼ同じに見えてしまうと、一番安い物、もしくは割安感が高い物を選ぶ消費者は増えやすい。

理由はパッと見た瞬間の価格差が分かりにくいからだ。当方のテリトリーならジーユーかワークマンかユニクロということになる。

同上。

「パッと見た瞬間の価格差が分かりにくいから」一番安い物も高く「見える」のです。

ファッション系YouTuberが「黒なら高見え」と、強調するのも無理はありません。

黒なら「大人らしい御洒落」であることもあって「黒一択」になりがちです。

価格競争以外で戦う

けれども、それでは見分けがつきません。
見分けがつかないからこその「高見え」です。

見分けがつかないということは、価格競争という土俵で戦う羽目になるということです。
価格競争以外の土俵で戦えなくなってしまっては大手以外は敗北です。

南充浩さんはこう仰っています。

たしかに触ってみれば素材感が違うとか、試着してみれば着用感やサイズ感が違うというブランドはある。だが、触ってみるとか試着してみるとか、というアクションを起こすのはかなり興味を惹かれた人に限られる。アイドマの法則ではないが、最初に注意を喚起するのは「色」「柄」「形」なのである。

一見して違いを認識するからこそ、触ってみたり、試着してみたりという行動につながる。大して興味も持っていないのに「とりあえず生地を触ってみる」とか「とりあえず試着してみる」なんていう行動は、店頭リサーチ中の同業者か生地関係のオッサンくらいしかとらない。

同上。

各社ともに「余裕がない」からベーシックカラーに特化しがちなのだろうが、ジーユーがベーシックカラーに特化してしまった現在、価格競争に呑み込まれないためには、数量を間違えない程度のアクセントカラーの商品の必要性は高まっているのではないかと思っている。

同上。

レンガ色でない鮮やかな赤は必要なのです。
売り場を鮮やかに彩るために。
そして、大手に埋没していかないために。

最終的に特価になってしまう運命はあります。
(コーデに組み込みにくいからです。)
しかしながら、「売れないからつくらない」では価格競争以外で戦えません。
弱者の戦略がとれないことになります。

価格競争以外で戦うなら、派手な色をつくって、目立つ必要があるのです。
派手な色もつくっておかないと埋没なんです。

たまには派手で良い

ここで、令和の森ガールの話に戻ります。

令和の森ガールは何故大人しいのか。

売っていないからなんですね。
売れる見込みがないものをつくらなくなってきたために、体感できるほど着ていないわけです。
大人らしい森ガールはいるけれども、それだけ。

服飾の主役は女性なので、たまには派手で良いと思います。

男性は所詮、額縁や花瓶に過ぎません。
女性は絵画や生花として咲き誇って良いのです。

「大人らしい」も「大人しい」も結構な話です。
けれども、たまには派手で良いのです。

買い支えがなければ、売れる見込みがなければ、売られることさえなくなります。
特に中堅ブランドではそれが顕著になります。

撤退や壊滅を防ぐには、「大人らしい御洒落」に拘泥せずに、たまには派手でいることです。

大人気(おとなげ)ない服が、大人気(だいにんき)になったって構わないでしょう。

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