偽【エッセイ】六〇〇字
某国前大統領「花札」氏の置き土産か、「フェイク」という言葉が、独り歩きしている。何が事実で何が嘘かと、「迷子」になり、思考停止に陥っているひとが、多いような。
ところが、フェイクを逆手にとった、ユニークなネット・メディアがある。「虚構新聞」である。「実際にありそうで、実は存在しない」ネタを記事にして、掲載している。4月1日、ある記事を流した。「『人の為 ニセモノだから できること』フェイクな薬が秘める可能性」。プラセボ製薬の「プラセプラス」の、薬の紹介。成分は還元麦芽糖で、薬効は、「薬効がない」こと。なんじゃあ~それ~、と思うかもしれないが、大いに真面目なのだ。
子どもの頃、こんな話があった。「未開人に鎮痛薬と言って、歯磨き粉を与えたら治った」という。真偽のほどは定かではないが。
似たような話が、その薬。何十錠、何百錠と飲まずにはいられないオーバードーズ(過剰服薬)に悩むひとに、いつも飲んでいる薬に混ぜて飲ませる。寝られないと思い込んでいるひとに、睡眠薬と言って飲ませる。副作用よりも、その「人のため」かもしれない。薬に要する税金の、大幅削減にもつながる。
「プラセボ」というのは「偽薬」という意味らしい。また、「偽」の漢字は、人の為。
私は、下痢止め「ストッパー」をポケットに常備しているが、「偽薬」でも良いのかも。
普段フェイクを流している「虚構新聞」が、4月1日に、事実の記事を掲載したのだった。
※画像は、マンハッタンのハイライン横のビル。散策中に発見。ビルの窓枠を監獄にし、トランプが収容されているアート作品になっている。(ハイライン:廃止されたセントラル鉄道の支線の高架に建設された線形公園)