ふるさと【エッセイ】六〇〇字 (おまけ)「最高裁判所裁判官国民審査」について
早大EC講座「エッセイ教室」秋講座(全八課題)、2回目の課題、「ふるさと」。タイトルとして、よくあるお題。なので、ストレートに書いては面白くない。「ふるさと」と自分との関係をどのように表現するか。けっこう苦労する作業でもあります。
そこで浮かび上がるのが、北海道の先住民族である「アイヌ」。そして、内地からの移民である我がルーツ。ともに時代の大波にもまれ、「ふるさと」の土地を離れ、異文化に適応しながら生きざるを得なかった。
あらためて「アイヌ民族」を考えると、道産子の私としては身近なテーマであったはずだが、どこまで真正面に向き合ってきたか、疑問もあるのです。
2020年に民族共生象徴空間「ウポポイ」が開業したり、同年に川越宗一の『熱源』が直木賞を受賞したり、さらには、漫画『ゴールデンカムイ』の原作をもとにTVドラマ、アニメ、映画が製作されたり、と「アイヌ」が話題になる機会が増えています。
今回、エッセイ『ふるさと』を考えるにあたって、遅ればせながら「アイヌ」についてもっともっと学ばなければならないと、思いを強くしたのでありました。
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「イランカラプテ」というアイヌ語がある。「こんにちは」「こんばんは」の意味。父の仕事の関係で、道央の五つの小学校に通ったのだが、小三から二年間、旭川近くにある町、愛別にいた頃、「イラン空手部」と覚えた。
と言っても詳しいわけではないが、愛別の近くの観光地、神居古潭や、アイヌの古戦場、石垣山には行ったことがある。小六のときの修学旅行では、登別「クマ牧場」にも行った。そして、四年前の「ウポポイ」オープンの報道で、アイヌのことを思い出した程度である。
実際、教室にアイヌの子がいたかはわからない。最近でも国会議員の差別発言があるくらいだから、六十年前なら秘密だったはず。
しかし、古くから独自の文化と歴史の中で、平和に暮らしていたアイヌ民族を「侵略」したことは事実。片やわが先祖は、明治政府の国策や、貧困など様々な事情から故郷を捨て、極寒の未開地へと移住。命がけで開墾してきたのも事実。そして、アイヌと共に助け合いながら開拓してきたことも、また事実である。
しかし、道産子として知らないことが多すぎる。最近、アイヌをテーマにする小説や映画が注目されているが、遅ればせながらもっともっと理解を深めなければ、と思っている。
先の言葉。アイヌ初の国会議員・萱野茂は、「あなたの心にそっと触れさせていただきます」と解釈。民族の思いが込められている。
(ふろく)
私が誕生したのが、富良野近くの美瑛町美馬牛。小学一年までの4年過ごしたのが、『北の国から』の舞台、富良野市麓郷。この地の開拓が着手されて百年を超えるらしい(というか、100年しかたっていない。私が産まれるわずか30年前だったということになる)。活火山・富良野岳の噴火で一帯は大きな石が転がっており、開拓民は難渋したそうな。なかには、逃げ出す者もいたようだ。その様子を大滝秀治さんが神演技で語る。
「お前ら、いいか、負けて、逃げるんだぞ」
黒板五郎に連れられて麓郷に住むことになる都会っ子の純。東京に戻ろうといろいろ画策し、遊びに来た雪子おばさんといっしょに帰ることになった。布部の駅まで清吉おじさんに送ってもらったふたりは、汽車を待つ間、清吉おじさんから話を聞かされた。昔、いっしょに入植した仲間が農家を廃業して村を出る時、駅まで送りにきた時の話を・・・。
大滝秀治さんが泣かせる・・・
TOP画像:神居古潭
公益社団法人北海道観光機構サイトから
(おまけ)
「最高裁判所裁判官審査」
月曜日に期日前投票に行ってきました。誰に、どの政党に投票したか? 先週書いたように、入れてきましたよ。「反与党が明かな」政党に。その候補者に投票しました。朝日、東京、毎日の新聞各紙の分析によると、自民・公明与党が過半数割れの可能性を予測している。その結果となった場合に連立するかもしれない政党は、「維新」と「国民」。さて、これをヨシとするか否や、です。厳しいご判断を期待したい。
判断と言えば、「最高裁判所裁判官審査」。私は、ある裁判官に「×」をつけてきました。
ところで、「×」を記入したことありますか?
どのくらいの方が審査権を行使されているでしょう。裁判官の横顔や、対象となる裁判に関する情報は、広報紙で配布されるにしても、「国民にはその権利はあるが、国の人選に文句を言われたくない」という、国の消極的姿勢がミエミエじゃないでしょうか。多くは、白紙委任のまま投票箱に入れられているのではないでしょうか。
そこで、紹介したいのが下記サイト。今回、審査対象となっている裁判官の注目案件の判断内容を見られます。さらに「裁判官のプロフィール・信条」「国民審査制度について」なども解説してあります。
NHK「2024年国民審査サイト」
そこで今回、注目した案件をピックアップし、その審査対象の裁判官の判断と私の意見との相違を考えてみました。結果、ある裁判官に「×」をつけることになったわけです。
『役所前広場での護憲集会不許可は憲法違反か』
<結論:「市が不許可としたことは憲法違反ではない」として訴えを退けた>
憲法を遵守しなければならない立場の公務員が、「護憲」集会を反政府的な政治活動としてとらえていると疑われる点で、私は「憲法違反」と判断。したがって訴えは正当と考える。結果、「結論に反対」になる。しかし、「結論に賛成」としているのが、今崎幸彦裁判官。「結論に反対」したのは、(今回の審査対象ではない)宇賀克也裁判官はただ一人だった。よって、今回の審査対象である、今崎幸彦裁判官には「×」になる。
「当選無効なら議員報酬は返還が必要か」
<結論:全額、返還する必要があると判断>
私は返還する必要があると判断するので、「結論に賛成」になる。しかし、今崎幸彦裁判官は、「結論に反対」している。よって、今回の審査対象である、今崎幸彦裁判官には「×」になる。
「臨時国会を召集しなかったのは憲法違反か」
2017年、野党議員が憲法の規定に基づいて臨時国会の召集を求めたにもかかわらず、当時の安倍内閣が3か月余りにわたって召集しなかったことが憲法違反かどうか争われた裁判
<結論:は憲法違反かどうか判断せずに上告を退けた>
私は、憲法には「(招集)期限の明記はないが、招集すべきとある」にも関わらず、3か月経っても開催しなかったのは「憲法違反」と考える。しかも、裁判官の1人は憲法違反になり得るとする反対意見を述べた。それは、先にもあった「宇賀克也」裁判官である。「結論と同意見」が、今崎幸彦裁判官。よって、今回の審査対象である、今崎幸彦裁判官には「×」になる。
そして、
とくに注目すべきなのが、冤罪の可能性がある『名張毒ぶどう酒事件』裁判である。
「昭和36年に女性5人が殺害された『名張毒ぶどう酒事件』で、元死刑囚の10回目の再審請求を妹が行った」
(奥西元死刑囚は2015年10月4日、かねて患っていた肺炎のため、八王子医療刑務所で死亡した 89歳没)
<結論:弁護団が提出した新証拠について、元死刑囚以外の何者かが毒物を混入した可能性を示す証拠としての価値はないとして請求を退けた>
5人の裁判官のうち1人は再審を開始すべきだとして結論に反対した。その裁判官は、これも、「宇賀克也」裁判官だった。「結論と同意見」が、今崎幸彦裁判官。よって、今回の審査対象である、今崎幸彦裁判官には「×」になる。
袴田さんの冤罪が明らかになり、「疑わしきは罰せず」の大原則が、人権擁護の観点からいかに重要かをあらためて思い知らされたはずである。「5人の裁判官のうち1人は再審を開始すべきだとして結論に反対した」とある以上、その1人の判断は、重い。再審再開を決定すべきである。
私は以上の考えから、今回、一人の裁判官に「×」を記入しました。
と、同時に、(今回の審査対象裁判官ではないが)「宇賀克也」裁判官には、「〇」を付けたい気持ちになる。このような裁判官が増えて欲しいと思うのは、私ひとりだけであろうか。
「名張毒ぶどう酒事件」を題材とした東海テレビ製作のドキュメンタリー『いもうとの時間』が、2025年1月4日に公開されます。