「選挙」(前篇)「あなたは幸福ですか?」【エッセイ】二四〇〇字(本文)
※画像:「東京新聞」朝刊デジタル版(3/24)ノルウェーの選挙小屋の様子。市議(右)の話を小学生たちが聞いている=ノルウェー・オスロで(by ジャーナリスト 鐙麻樹氏)
「あなたは、幸福ですか?」「そう、幸福。よかった。私も、いちおう幸福です。国を憂えていることはたくさんあるけど・・・」「では、あなたの周りのひとたちは、幸福そうですか?」「あっそ、幸福そう? そうですか。失礼しました・・・。幸福そうでしたら、言うことありませんね・・・」
いえいえ、続けますよ。ヒゲじい。(笑
冒頭からちょっとお遊び過ぎましたが、(汗)「選挙」をテーマに、(5,000字超えるので)前・後篇の2回に分けで投稿します。
※
「幸福」と「幸せ」、似た言葉ですが違いがあるようです。自分で「幸福」と感じることはできる。しかし他人に対しては、幸せそうかどうかは指摘できても幸福そうかの判断はできない、ということになるようです。
ところが、他人の「幸福」を判断することができないにも関わらず、国連機関から毎年(2012年から)「世界幸福度報告」としてランキングが発表されています。そもそも、どのように測定しているか。かならずしも的確とは思えませんが、ひとつの目安としては参考にはなると思っています。
【2022年】最新世界幸福度ランキング(WEBメディア「ELEMINIST」から)
【2022年】最新世界幸福度ランキング TOP10
測定要因となっているのが、
「客観要因」
・「1人当たり国内総生産」
・「健康寿命」
「主観要因」
・「社会的関係性」:社会的支援の充実(社会保障制度など)
・「自己決定感」:人生の選択における自由度
・「寛容性」:他者への寛容さ(ボランティア・寄付活動など)
・「信頼感」:国への信頼度(腐敗を感じる程度)
「客観要因」は、数値化できるのでわかりやすいですが、「主観要因」は、「主観」だけに不確実性があります。なお、「主観要因」の数値は、アメリカの調査会社ギャッラップ社の世論調査が元データになっているようです。
各要因別の日本の順位(2022年 世界54位)
「1人当たり国内総生産」:28位/145国
「健康寿命」:1位/141国
「社会的関係性」:48位/146国
「自己決定感」:74位/145国
「寛容性」:127位/146国
「信頼感」:28位/140国
(福井県立大学地域経済研究所のコラム)
行動経済学者の友野典男氏は、この結果は日本人の気質が反映されていると指摘する。「日本人は控えめな気質ですから、“あなたはいま幸せですか?”と聞かれても、“それなりに幸せだけど、もっと上がいるから”と考えます。他国のように、恥ずかしがらずに“イエス!”と断言できる人が少ないのです」と。確かに、“あなたはいま幸せですか?”と質問されればそうかもしれないが、もっと複合的に質問することで、その「気質」とやらは排除できるでしょう。また、その日本人気質が影響したとしても、少なくても上位になるとは思われません。
日本は2010年代前半は40位台をキープしていたが、後半には50位台に転落しています。低下し始めたのは、どなたかが総理になってからのように思いませんか? 政府に批判的な放送局や番組に圧力をかけ報道の自由度を押し下げたこと(いま大きな問題になっていますよね)も影響しているのかもしれません(下掲の「東洋経済オンライン」参照)。2023年に少し回復したようだが、先進国としては低いままです。この「世界幸福度報告」が、日本の幸福度を的確に表わしているとは思わないが、先進国に比べて自慢できる状態ではないということだけは言えるのではないでしょうか。
そして同サイトは、日本人の働き過ぎについても、こう分析する。幸福度上位の国では、プライベートな時間が多いのです。
「CNNサイト」では、こうも指摘します。
一番大きく幸福度を下げる原因は、「多くの国民は『将来不安』を抱えている」ということではないかと思うのです。その不安は、特に経済的要因(「年金」や「子育て・教育費」、いまの生活費も)。そして、国への「信頼感」が低く、不安があれば貯蓄するので貯蓄率が高くなるはず。しかし、貯蓄率に影響する要因が複雑にします。つまり、「将来不安」を抱えていても、「貯蓄するだけの所得がなければ貯蓄率は下がる」「高齢化の国は、退職者が増えるために貯蓄率が下がる」「物価高で余裕がないので貯蓄率は下がる」となるためです。さらに「消費性向」も絡んでくる。一概に貯蓄率だけでは判断できないのでしょう。その実態を示すデータを探しましたが、見当たりませんでした。このことは宿題にさせてください。
冒頭に戻ると、「あなたは、幸福ですか?」と訊かれれば、「いちおう幸福です」と答えます。いや、「幸福と思いたい」と言ったほうがいいのかもしれない。「日本は好きだけど、国を憂えていることはたくさんあるけど・・・」と付け加えて。
あなたはどうですか? 気持ち的には世界何位くらいですか? 世界1位というひともいるかもしれません。でも、あなただけが幸福ならそれで良いわけではないですよね? なんらかの事情で幸福でないないひとたちがいるなら、そのひとたちも幸福になれるように、国に対して要求したいものです。国を変えたいものです。その「共助」となるもののひとつが、「選挙」と、考えます。「隣の芝生は青く見える」で、諦めるのではなく、幸福度上位国の「青い芝生」から学びましょう。
(つづく)