空【エッセイ】六〇〇字
4月9日から始まった早大オープンカレッジ「エッセイ教室」の3回目のお題が、「空」(600字)。さて、あなたなら、何を書きますか?
父親は、米の検査官をやっており、進学で上京するまで、道央8か所で過ごし5つ目の町、北竜町にいた。60年前の、小学5年のこと。それまでは年度初めに転校していたが、4年の3学期からだった。学年1学級の、街はずれの学校。
桜が散った5月中旬。校庭の端で花壇作りが始まった。校長先生発案の、課外授業だ。4年から6年までのお花畑。われわれの割り振りは中央。クラスで決めた花が、向日葵。種まきから始める。水遣りや雑草抜き、肥料やりを当番制で。発芽から蕾までが、2か月。夏休みが始まるころ大きくなり、休み中には、花が咲く。
発芽のあと、真ん中なので踏まれることを防ぐために、縄で囲いを作ったのだが、事件が起きた。ある朝、様子見に行くと、全部取り払われていたのだ。「誰がやった?」と、捜査しようとした。が、犯人が現れた。校長先生だった。そして、言った。「みんなの花壇です。どうして、ほかと仕切りを作る必要があるのでしょう。世界の空がひとつのように、地面も、みんなのものです」と。
9月。父は、最短の9か月で、鉄道で2駅目の町へ転勤。しかし私は、校長先生の助言もあり、年度が終了するまで通えることになった。
40年前。北竜は、町興し事業が成功。いま、「ひまわりの里」になっている。緯度は、ウ〇〇〇ナとほぼ同じ。かの地でも、夏には青空に向かって、大輪を咲かせられるだろうか———。
(写真は、北竜町の「ひまわりの里」)