空白【エッセイ】六〇〇字
早大オープンカレッジの「エッセイ教室」。夏講座の2回目のお題が、「空白」。空白・・・。しばらく頭が空白状態だったが、最初に浮かんだのが、過日の書きおろし「裏窓」。600字から(タイトルと氏名の行の)40字を削り、リライトした。もうひとつが、今回の夏休みをテーマにしたもの。どちらにするか、決めかねている。
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初日の絵日記は、祖母の寝室で聞いた、汽車の警笛と連結音だった。函館本線と根室本線の分岐点・滝川での、夏の想い出である。
60年前。小4のとき、旭川近くの愛別にいた。休みが始まってすぐ、祖母が迎えにきてくれた。母がホームで、手を振る。親元を離れるのは、初めて。涙が止まらなかった。
実家には、母の弟夫婦がいて、叔父は、小学生向けの学習塾を営んでいる。なので、同い年ぐらいの子たちが多く来ていた。さらに、1軒置いた隣に伯母の家があり、中学生や歳が近いいとこが3人いて、勉強や遊びの相手になってくれ、寂しさは、消えていった。
ある日。叔父が、塾の子たちと、いとこと一緒に、1泊で海水浴に連れて行ってくれた。留萌の近くの浜益。浜に咲く花を、絵にした。後で、従姉に、ハマナスと、教わった。
夜は、宿泊先の寺の講堂で寝るのだが、その前に出し物がある。叔父を囲み車座になり、得意の幽霊話の会だ。授業のときは、落語のような語り口。が、夜は一変し、怖い。キャー・ギャーと騒ぎ、布団を被って、聞いた。
休みが終わりに近い日の夕方。親子が訪ねてきた。宿題の依頼だ。従姉妹2人と叔父と机を囲み、捩り鉢巻きよろしく、格闘。その子は、私の日記を書き写した。幽霊の話も。
祖母と戻る日。街を眺め、涙を流し続けた。
コロナ禍。日記に何が描かれるのだろうか。