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時価総額のみによる東証再編

<経過措置終了時期を明確化>

東証は2023/1/25、プライム市場などの上場基準に満たなくても暫定的に上場を認める『経過措置』を、実質4年で終わらせる案を発表しました。経過措置は2025年3月に終了し、その後1年間の改善期間を設けます。基準を満たさなければ監理、整理銘柄に指定され上場廃止になります。

↓東証再編の経緯等は以下のnote『東証再編は日本の大損害』をご覧ください。
https://note.com/masanori1980/n/nb7b0fdba12e3

東証は2022年4月、プライム、スタンダード、クローズの3つの市場に再編しました。プライムは大株主や役員などの保有分を除く流通株式ベースで時価総額100億円以上、スタンダードは10億円以上といった基準を新たに設けました。
この際すでに東証に上場している企業に対し、プライムなどの基準に満たなくても暫定的な経過措置として、上場を認めました。経過措置の対象は2022年12月末時点でプライムが269社、スタンダードが200社、グロースが41社あり、各市場の1割から2割を占めます。
東証は当初、経過措置は『当分の間』とし、期間をはっきりさせていませんでした。今回経過措置の終了時期を明らかにしたことにより、経過措置適用の上場企業は対応を迫られることになります。3月期決算の場合は2025年3月まで、9月期決算なら2025年9月までとなり、それぞれその後、1年が改善期間となります。

今回の東証の決定は私は好意的に感じます。なぜなら人間はお尻に火がつかないとやらない生き物だからです。『当分の間』という経過措置の場合、締切が決まっていないためいつまでも改善はされないと思います。締め切りが迫ると人間は途端に集中力が高まります。2025年3月まで残り2年となりますが、経過措置対象企業に取って、この2年間の集中力は非常に高いものとなるのではないでしょうか。

<基準が満たせなければ上場廃止に>

上記までに基準を満たせなければ監理・整理銘柄に指定されて上場廃止となります。監理銘柄と整理銘柄の指定は通常3ヶ月以内ですが、特例として指定期間を6ヶ月としました。既存株主が保有株を売ることのできる機会を確保するためです。
プライム上場の経過措置企業は、新しい制度が始まってから6ヶ月間は審査なしでスタンダードに移れるようにします。一方、スタンダードの経過措置企業にはグロースへの移行救済措置はありません。グロースはスタートアップなど成長企業を対象にし、市場の性質がスタンダードと異なるためです。
計画達成までの期間が今回定めた猶予期間を超える企業は、猶予期間が終わっても計画の期間中は監理銘柄に留め、上場廃止にしない特例を設けました。 
 
<PBRの改善も開示>

東証は企業に企業価値向上に向けた意識改革も促す予定です。PBRが1倍を割れるなど株価の低い企業に対し、資本コストを踏まえて企業価値を高める取り組みや、進捗状況を開示するよう要請します。1837社のプライム上場企業のうち半分の922社がPBR1倍以下です。TOPIX500構成銘柄のうちPBR1倍割れは43%と、米S&P500(5%)や欧州STOXS600(24%)より遥かに高いです。PBRが1倍を割っている原因はROEが8%を達成できていないからです。TOPIX500構成企業の40%はROEが8%以下です。一方15%以上のROEを計上する企業が378社あり、これらの会社はS&P500と比べても遜色ありません。 

<英文開示も義務化>

プライムだけが対象だった英文開示をスタンダードやグロース企業にも求めます。

<市場は4つもいらない> 

私見ですが、プライムは日本を代表する銘柄であるべきで、正直全上場会社数の1割、400社から500社が適切な数値なのではないでしょうか。ここまで厳選すれば、海外の機関投資家もプライムのインデックス指数等を見て日本の株式市場を再評価すると思いますし、残りの9割の上場会社もプライム企業を目指して、株価、企業価値向上に取り組むと思います。結果としてPBRも改善が図られることになるかと思います。

今の多くの上場企業の問題点として、『プライム上場企業になること』がゴールになっている点が考えられます。本来であれば、上場及び市場変更は企業価値向上の一環であり、ステップアップであるべきです。プライム上場企業になった後もその企業価値を向上させていくために、海外進出やM&A等で事業を拡大していくことが求められます。
私見として上場企業は公的企業(public company)であり、日本の経済成長を支える根幹であるべきです。日本の経済成長を望むのであれば、上場会社は成長し続ける義務があり、現状維持のスタンダードという考え方はむしろおかしいのです。現状維持を望むのであればむしろ上場を廃止すべきです。

<市場を2つに統合>

私がもし岸田首相なら、上場企業が常に切磋琢磨した企業の集団であり続けるための案として、プライムとスタンダードの統合を考えます。プライムとスタンダードの企業は時価総額を追うべきであり、PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)の『金のなる木』『スター』だと考えます。一方、グロース及び東証プロマーケット(TPM)は将来の成長企業で『問題児』となりますので、この2つは明確に目的で市場を分けます。『プライム&スタンダード』と『グロース&TPM』の二つの市場です。

<『プライム&スタンダード』は時価総額を!>

『プライム&スタンダード』上場企業は、時価総額の向上を目的とします。時価総額を元に企業側にインセンティブが働くような仕組みを作ります。
まず四半期ごとに時価総額を並び替え、上位500社をプライム企業と認定します。このプライム企業を元にTOPIXを作ります。英文開示は任意です。時価総額を上げるために必要だと判断すれば各企業が実施します。評価は市場からの評価のみとします。すなわち時価総額です。 
時価総額がある企業なのに、プライムとかスタンダードを東証が形式的に決めていることが今の弊害を生んでいると考えています。そこは市場が決めればいいのです。『時価総額』という唯一の尺度を用いて日本のトップ500社を決めます。このトップ500社が日本経済をけん引しているのは間違いありません。トップ500社に入るために各企業が切磋琢磨するのが、あるべき市場の姿ではないでしょうか。 
一方、時価総額下位100社は四半期ごとに監理・指定銘柄に指名します。4四半期連続で下位100社として監理銘柄に指名された会社は上場廃止とします。時価総額の向上を目的とする『プライム&スタンダード』上場企業とはみなされないからです。

<『グロース&TPM』は成長を!>

『グロース&TPM』上場企業は成長性を重視しますので、時価総額は目的としません。何を持って成長するかは企業によって異なるため、上場企業という名称を有意義に使い、自社の成長のために日々努力します。『プライム&スタンダード企業』に市場変更するタイミングも企業次第です。100社の足切りがあるため、十分な成長をした上で、時価総額がしっかりつく土台がついた企業から順次上がっていく形です。
成長を目的とした市場ですので、成長が止まった又は諦めた企業には退出して頂きます。10年という期間を設け、10年以内に『プライム&スタンダード』市場にいくか、上場を廃止することを決断してもらいます。

<審査は2回のみ>

市場の審査は2回だけです。『グロース&TPM』市場に上がる時と、『プライム&スタンダード』市場に市場替えするときです。

構造的に新陳代謝が自動的に起こるような仕組みを作れば、日本の市場は活発になり、海外機関投資家も含め株主の見方は変わるものと思います。上記はjust ideaで記載したものですが、もっといいやり方もあるかと思います。日本を幸せにするために、市場のあり方も時代に応じて変わるべきだと考えております。今日本に必要なことは決断することです。今回の決断をきっかけに市場の再編が進み、日本の経済が活発になることを祈念しております。 


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