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敦賀原発2号機パブコメを経て「変更不許可」

2024年11月13日、原子力規制委員会は、日本電子力発電(以後、原電)の敦賀原発2号機の「設置変更許可をしない」決定した。

K断層は活動性が否定できず、2号炉原子炉建屋直下を通過する破砕帯との連続性が否定できない」。つまり、原子炉等規制法第43条の3の6第1項第4号の「原子力規制委員会規則で定める基準に適合する」とは認められないという理屈だ。


パブコメ282件中「科学的・技術的意見」は67件

これは、8月29日から30日間のパブコメを経て決定したものだ。
意見を寄せたのは、282人(個人と法人を含む)。
(全意見の一覧はこちらから「資料1机上資料」をダウンロード)

原子力規制委員会は、67件を「科学的・技術的意見」として受け止め、意見に対する考え方を応答したが、残り215件は「科学的・技術的意見」に該当しないものとした。「今回の意見募集は(略)科学的・技術的意見が対象です」(下図)と紋切り型の応答で済ませている。

2024年11月13日原子力規制委員会 資料1 日本原子力発電株式会社敦賀発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(2号発電用原子炉施設の変更)に対する処分P5~91のパブコメには原子力規制庁としての「考え方」を応答P92以降は・技術的意見」に該当しないとした。

原電「再申請に向けどのような追加調査を行うかは年度内に」

この審査結果を受けて、原電は、松村衛社長と剱田裕史副社長が「地域や関係者にご心配をおかけした」として、役員報酬の50%を2ヶ月自主返上すると発表

松村社長は既に8月2日に敦賀原発2号機を「廃炉にしない」と述べていた(既報)が、11月13日の委員会後に取材に応じた常務執行役員の齋藤史郎・開発計画室長は、「再申請に向けてどのような追加調査を行うかは年度内に明らかにする」と述べた。今日の決定を受けた不服審査や行政訴訟提起の予定はないという。また、原電が法人としてパブコメに意見を出したことを認めた上で、「社員に対しては何か意見を出すような指示はしてはいない」と筆者の問いに答えた。

原電常務執行役員 齋藤史郎・開発計画室長(2024 年11月13日、
原子力規制委員会記者スペースにて筆者撮影)

さらに、原子力規制委員会が「科学的・技術的意見」に該当しないとした215件についても、「これから中身を読ませていただき、今後の申請に向けた調査活動に参考になるものがあれば考えていきたい」と述べた。

建設時の許可を「取消しすべき」とのパブコメには

山中伸介原子力規制委員長は、会見(動画)で記者から「パブコメには断層があることを否定できないなら(変更申請の不許可に限らず)、建設時の許可の取消しをすべきだという意見があった」と見解を問われ、次のように回答した。

今回は設置変更許可の申請に絞って判断をした。建設時の何かについて判断したわけではない。その上で敦賀2号機は原子炉は停止しており、燃料も十分に冷却をされている。活断層の影響が仮にあったとしても安全上の問題はない。十分対処ができる状態にある。現許可の取消しをするという判断はしませんでした

山中伸介原子力規制委員長(2024 年11月13日、原子力規制委員会会見にて筆者撮影)

これを受けて筆者も更問い(動画)を行った。
「今回は、建設時の許可の判断に及ばない点について。変更申請だったからという回答は、手続論として理屈はわかりますが、先程、委員長は『今回は、原子炉は停止、燃料は冷えている。活断層の影響があったとしても問題はないので、現許可の(取消しの)検討をすることはしなかった』と仰った。(建設時と変更申請と)同じ審査項目を判断している中で、停止しているから燃料は冷えているからという理屈はわからない。どういうことか

喫緊の課題はないから措置命令を出さない?

これに山中委員長は「大前提が設置変更許可申請の審査をしたこと。それに対して許可できないという判断をした」と繰り返した上で、「現状の原子炉の状態を鑑みると喫緊の課題はないということで、なんらかの措置命令を出す必要もございませんし、現許可に立ち戻る必要もないと、委員会としては判断した」と述べた。

審査項目自体はまったく同じであって、それでも元々の審査は有効だというお考えか」と念押しをすると、山中委員長が「法律上、何か付け足すことは」と吉野亜文総務課長に振り向き、同課長が「現許可の取消しとなるとそれ自体は別の法律の構成に入っていく」と回答した。そんな条文があるなら使えばいいのだ。

2024 年11月13日、原子力規制委員会会見にて筆者撮影

建設時の許可の取消しのための条文とは?

そこで、会見終了後に吉野総務課長に「別の法律の構成」について確認した。

すると原子炉等規制法第43条の3の23(施設の使用の停止等)で「基準に適合していないと認めるとき」「必要な措置を命ずることができる」とし、その命令に背けば、第43条の3の20許可の取消し等)で取り消すことは可能だが、現在、敦賀原発2号機はその状況にはない状態だと判断したということだという。

要するに、既に止まっている原発であり、それ以上の「措置を命ずる」だけの押し迫った緊急性がないから、建設時の許可を取り消さないという屁理屈だ。いや、基準に適合していると認められないなら、緊急性があってもなくても「必要な措置」として取消すということができないものか、そう思いながら帰途に着いた。

【タイトル写真】

2024 年11月13日原子力規制委員会で、資料1 日本原子力発電株式会社敦賀発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(2号発電用原子炉施設の変更)に対する処分を審議する原子力規制委員たち(筆者撮影)





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