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耐用年数20年の福島第一原発ALPS処理水タンク:設置から8年目の35基中5基が劣化

2024年11月28日の会見で、東電は、福島第一原発で点検した35基のALPS処理水タンク*文末のうち、5基に腐食などが見つかったと説明した。

2号機燃料デブリの試験的取り出しに使われる予定のロボットアームのケーブルがまだ実践で使ってもいないのに劣化したことは既報したが、タンクも例外ではないことを記録しておく。


東電は約1000基のタンクをエリア別にアルファベットをつけて管理している(各エリア別タンク一覧はこちら)。今回、点検結果を発表したのは、2016年に設置したK4エリアの35基ついて。

2024年11月28日 K4エリアタンク点検状況(東京電力)P2

A群(10基)、B群(10基)、C群(10基)は海洋放出のために使っている。3群をALPS処理水(*)の「受入」、「測定・確認」、「放出」工程に回して使う。その後、「希釈」「放水」の工程へと送り出すのだ。(参考)。

E郡5基のうち3基に減肉

残りのE群(5基)は他のタンクと同様、貯留用だが、2024年3~7月に水抜きをして内面を点検した結果、E1・E2・E5タンクで、塗装が剥離したり、剥離箇所が腐食して、タンクの厚みが薄くなる「減肉」が見つかったのだという。

本来の板厚は約15mmで、E1で最も薄くなったところで10.72mmだった。

しかし、タンクの構造強度に影響は及ぼさないと判断。溶接(以下、ステップ2)や塗装による補修を行った。

2024年11月28日 K4エリアタンク点検状況(東京電力)P4

C郡10基のうち2基に減肉

この結果を受けて、2024年度はもともと内面点検を本格調査で行う計画だったB群に加え、A、C群も内面点検も実施した。その結果、C群10基の2基(C5、D1)のタンクに減肉が見つかったと、質問をすると回答を得た(D1に関しては資料に記載がない)

2024年11月28日 K4エリアタンク点検状況(東京電力)P5

35基中5基に減肉

タンクの耐用年数は20年であるにもかかわらず、すでに約1000基のうち点検を済ませた設置から8年目の35基中5基(7分の1)に減肉が見つかっていることについて、福島第一廃炉推進カンパニーの小野明氏(廃炉・汚染水対策最高責任者)の見解を聞いた。

すると「基本的に耐用年数20年だが、点検をしっかりやらなければいけないということだと思う。点検をして補修できるものであれば補修する。必要があれば補修をして、耐用年数が守られていく」との見解だった。「耐用年数の20年は、何もしなくてではなく、メンテナンスしながら」(東電広報)得るものだという。

本格点検で必要肉厚(10.2mm)を下回っても、撤去をするのではなく、補修をする。そのための点検だという。

1000基のタンクの点検ペース

ALPS処理水等を貯蔵している溶接型タンクについては、年1回は、外面の目視点検と側板の超音波測定による肉厚測定。10年に1回は、水抜き後に超音波測定、水抜きが困難な場合は水中ドローンで確認するのだという。

2024年11月28日 K4エリアタンク点検状況(東京電力)P8

毎年膨大な数だ。建屋への地下水流入を完全止水してタンクを使い続けることを止めることを優先させるべきではないかと、いつものように尋ねたが、いつものように、建屋の局所止水やフェーシングを進めているというのが東電の回答だ。

タンクの耐震性はBクラス(360ガル)

資料P3には「許容値236MPaに対し約2.5倍の耐震裕度があることを確認」とあり、「一般人でもわかる言い方をするとどういう意味」かと尋ねると、そこに「水平地震力:0.36G(耐震Bクラス)」とある通り、耐震Bクラスに耐えるように考えている。たとえば、家屋や工場は耐震Cクラス。Bクラスはそれより高い。その上がSクラス。耐震Bクラスに対しても2.5倍の裕度があるということだ」と説明。さらに「ちなみに耐震Bクラスは、大体360ガルです」という。

*文末 「汚染水」「APLS処理水」「処理途上水」の定義

政府・東電は、当初、基準を超える「汚染水」まで「APLS処理水」と呼んでいた。実際、約1000基のうち約7割は最大で告示濃度比総和の基準の2万倍近い「汚染水」だ。ところが、そのことが明るみに出た後、汚染水まで「ALPS処理水」と呼んでいたのを2021年4月13日にやめた。「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水」だけを「APLS処理水」と呼ぶと「定義を変更」した。一方、東電では「APLS処理水」と呼べない「汚染水」を「処理途上水」と呼んでいる。

東京電力「処理水ポータルサイト」(2024年9月30日現在)より

東電は今後も海洋放出をし続けるする一方、地下水の燃料デブリにあたって生じる汚染水の量は増え続ける。いつどの程度の地震が来るのかは分からない。

燃料デブリを取り出しますと言い続けて、進む気配のないやり方が続いているが、廃炉の優先順位はこのままでいいのか、引き続き、注視して問い続けるしかない。

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出典:東京電力ホールディングス(2024年12月13日に、国際原子力機関(IAEA)タスクフォースが、K4タンクエリアを視察したときの様子)


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