核のゴミはリサイクルできるか?①工場の廃止に70年
「GX脱炭素電源法案」には5つの重要法案が束ねられている。この取材ノートでしつこく書いてきたのは、原発の運転期間が、事業者の投資回収のために原子炉等規制法から消される問題だ。
今日は「再処理法案」の今の姿に焦点を当てたい。フルネームは「原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律」。核燃料サイクルの根拠法の一つだ。
1. 「核燃料サイクル」の簡単なおさらい
核燃料サイクルは、原発で燃やした核燃料(使用済燃料(しようずみねんりょう)という)を再処理して何度も使う政策のことだ。「日本は資源が少ないから」という理屈で(本当はそんなことはないが)進めようとしている。
経済合理性のなさから、ほとんどの資本主義国では断念し、フランスと日本だけが残っている。
2. すでに構想倒れの「核燃料サイクル」
日本は「残っている」と言っても、「サイクル」がつながっていない。本来、核燃料は、①原発→②再処理工場→③燃料加工工場→④高速増殖炉もんじゅ→⑤再処理工場→と回っていく構想だった。しかし、後述するが②再処理工場と③燃料加工工場はフランスに依存。④高速増殖炉もんじゅは破綻して廃炉決定。だから普通の原発でも燃やせる「MOX燃料」をフランスで作ってもらって、船で運んできて、それを使って発電している(プルサーマル発電という)。が、プルサーマル発電した後の使用済みMOX燃料を再処理する技術は未開発。だから構想倒れ。サイクルはつながらずに終わっている。①の原発に使用済み燃料は貯まる一方だ。
また、日本がMOX燃料を依存しているフランスではトラブルに見舞われている。毎日新聞が連載「迷走プルトニウム」で問題を報じている。仮にフランスで核燃サイクルが終われば日本も終わる。そこまで判断を引き伸ばすのか。
他の資本主義国は、核燃料サイクルではなく、直接処分と言って、一回だけ使って終わる政策をとっている。
3. 最初の再処理工場の廃止は2088年までかかる
日本には、茨城県東海村に一つ、「東海再処理工場」があるにはあったが、2018年に廃止が決定した。事業者である日本原子力研究開発機構が原子力規制委員会から認可を受けた廃止措置計画によれば、廃止までに70年かかる。費用は1兆円。その廃止作業が既にトラブルが起きた(朝日新聞「東海再処理施設の廃止作業2年ぶり再開へ 完了に70年」2021年8月1)。廃止作業が計画通りでも2088年まで。もっと延びても不思議はない。
使用済燃料を作るために26年稼働して、廃止に70年。他の国が、経済合理性がないと判断して、核燃料サイクルから足を洗ったのは、理解できる。
日本は、懲りずに、今から新しい再処理工場を稼働しようと考えている。次のコマでそれを書きたい。始まる前からとんでもないことが起きているからだ。
(続く)
【タイトル画像】
日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所再処理施設の廃止措置計画の認可について(案) 平成30年6月13日 原子力規制委員会 より。東海再処理工場の廃止までの順番が次のように書かれている。「約70年間の廃止措置計画は、高放射性廃液の処理等のリスク低減の取組み、主要施設の廃止、廃棄物処理・廃棄物貯蔵施設の廃止の順に進める。」
つまり、「再処理工場」を一度稼働させてしまえば、その工場自体が高濃度に汚染する。人間が被ばくしないように「リスク低減」から始まって注意深く解体を進めても、最後には、高レベル放射性廃棄物が大量に出る。そして、それを捨てる場所は確保されていない。
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