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エネルギー基本計画(案)に声をあげよう

経産省が第7次エネルギー基本計画(案)」に対するパブリックコメント(意見募集)」をおこなっている。締切は、2025年1月26日23時59分。本来は、公聴会を開いて説明し、それに対する意見や質問を受ける「学び」のプロセスを設けるべきだ。日本は民主主義を担保する制度がいまだに遅れまくっている。


FoEの5連続オンラインセミナー

1月19日までに国際環境NGOFoEジャパンが5連続で開催した連続オンラインセミナーの一つで福島第一原発事故の教訓」というけれど…というテーマで話をすることを引き受けた。

FoE 連続オンラインセミナー:「エネルギー基本計画案」をどう読むか より 資料はこちら

第7次エネルギー基本計画(案)には、福島第一原発事故の「教訓」という言葉が使われている。そこで、「教訓」という言葉を検索し、それを中心に、私だったらこんな意見を出していきたいかな・・・という話をした。資料はこちらにアップされている。そして、それを元に、以下のような意見を出した。

私の出した意見(あくまでご参考まで)

P4 「I.はじめに」
(意見)
海外事情を書くならオーストラリアの事例(2030年までに再生可能エネルギー比率82%)も書くべきだ。
(理由)
P6には「再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入」することが書かれているのであり、再生可能エネルギーの主力電源化と整合する海外事情を書き込むべきである。

P6「II.東京電力福島第一原子力発電所事故後の歩み」の「1.総論」
(意見)
今なお避難生活を強いられている被災者の方々の心の痛みに」(14行目)向き合い、「現場主義を徹底」(15行目)し、「福島の復興に最後まで取り組」む(15行目)というというなら、全国各地、とりわけ福島県において、この案について、公聴会を開くべきだ。
(理由)
第6次エネルギー基本計画にはあった「可能な限り原発依存度を低減する」という言葉が削除されるなど、1F事故の「経験、反省と教訓」(6行目)を踏みにじっているからだ。

P6「II.東京電力福島第一原子力発電所事故後の歩み」の「1.総論」
(意見)
我が国を取り巻く情勢変化」(18行目など)に鑑みて、「エネルギー政策の決定プロセスで利害関係者(関心ある公衆のすべて)と協議することを法制化する」ことを加筆すべきだ。
(理由)
たとえば、欧州諸国等が加盟するオーフス条約(環境に関する、情報へのアクセス、意思決定における公衆参画、司法へのアクセスに関する条約)では、環境に関する政策や計画(エネルギー分野を含む)について、関心を持つ公衆が、意思決定手続きの初期に(第6条2項)参加する手続を取らなければならくなって久しい。「公衆が環境に関する意思決定の過程で効果的に準備し参画できるのに充分な時間的余裕があり、それぞれの段階に応じた合理的な時間枠を伴わなければならない」(第6条3項))と定めており、日本も、遅ればせながら、こうした取り組みを導入すべきだ。行政手続法によるパブリックコメントは、「初期」とは言えない、最終段階に近い参加制度でしかない。市民参加手続を一歩、進めるべきであり、このことこそエネルギー基本計画に書き込み、実行すべきである。

P6「II.東京電力福島第一原子力発電所事故後の歩み」の「1.総論」
(意見)
再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入」(18行目)する概念でエネルギー基本計画を徹頭徹尾、貫ぬくべきであり、「I.はじめに」(P4)で「脱炭素電源」として「再生可能エネルギー」と「原子力」を混在させて「脱炭素電源の拡大を図り、最大限活用」(33行目)するとの表現は削除すべきだ。
(理由)
「原子力」を混在させれば、原子力は定期検査があるだけでなく、大地震のたびに停止、点検しなければならず、それを補うために「火力」を温存、または、火力に依存することとなり、「脱炭素電源」とは言えないからである。

P6「II.東京電力福島第一原子力発電所事故後の歩み」の「1.総論」
(意見)
再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入」(18行目)とするのは何故か、どう実現できるか、何が再エネの主力電源化を阻害しているのかを、倫理、経済、持続可能性の観点から明らかにし、阻害要因を取り除くことを計画に書き加えるべきだ。
(理由)「原子力」を混在させて「脱炭素電源の拡大を図り、最大限活用」とすることで、「原子力」が再生可能エネルギーを主力電源の妨げになるからである。
毎日新聞2024年5月28日記事「電気が無駄に…? 九州で再エネ捨てる「出力制御」急増、なぜ」https://mainichi.jp/articles/20240528/k00/00m/020/217000c によれば、「2023年度の制御電力量は前年度比2・9倍の12億9000万キロワット時だった。平均的な家庭30万世帯の1年分の使用量に匹敵する電気が無駄になった計算」だからだ。

P34(3)原子力発電」「1総論」
(意見)
原発は「他電源と遜色ないコスト水準」(3行目)と書いてあるが、2023年以降に稼働した諸外国の原発では建設費が予定より跳ね上がり、フィンランドのオルキルト原発では4800億円の予定が1.7兆円に、米国ボーグル原発では1兆円が2.2兆円に、フランスのフラマンビル原発は4800億円が2.1兆円に増大したことを書き込むべきである。
(理由)
・経産省が言う「他電源と遜色ないコスト水準」は、2024年12月16日「発電コスト検証ワーキンググループ」資料などで、追加的安全対策の効果によるものとして原発事故発生確率が下がることを想定して、kWhあたりのコストが下がるなどの机上の計算の積み上げであるが、現実をみていないからである。
「安全神話に二度と陥らないとの教訓を肝に銘じなければならない」(P33、33行目)と言いながら、コスト検証で安全神話にはまっているからである。

P34(3)原子力発電」「1総論」
(意見)
原発は「天候に左右されず一定出力で安定的に発電可能な脱炭素電源」(4行目)は削除すべきである。
(理由)
原発は定期検査があるだけでなく、大地震のたびに停止、点検し、点検漏れさえ(たとえば停止中ではあったが志賀原発のブローアウトパネルが変形して外れていたことが11ヶ月後に判明したhttps://www.rikuden.co.jp/press/attach/24110802.pdf )ある。「安定的な発電」はできない。

P34(3)原子力発電」「1総論」
(意見)
増加が見込まれる電力需要」(5行目)は削除すべきである。
(理由)電力広域的運営推進機関の「全国及び供給区域ごとの需要想定(2024年度)」によれば、実績として、電力需要は微減し続けている。さらに、省エネ、効率化、節電志向、技術革新、人口減少など、総合的に見れば、微減し続ける要素は消滅する見込みはないからである。

P34(3)原子力発電」「1総論」
(意見)
「データセンターや半導体工場等の新たな需要のニーズに、原子力という電源の持つ特性は合致する」は削除すべきである。
(理由)
再生可能エネルギーを主力電源」(7行目)が本気なら、新たなデータセンターや半導体工場の設置条件に再エネ+蓄電池100%を義務付けれるという政策をとりうるからである。

P34(3)原子力発電「2 今後の課題と対応 」
(意見)
東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓」とは、国会事故調が指摘した「規制の虜」現象、すなわち、「規制当局が事業者の虜(とりこ)となり、規制の先送りや事業者の自主対応を許すことで、事業者の利益を図り、同時に自らは直接的責任を回避してきた」こと、「規制する立場とされる立場が『逆転関係』となることによる原子力安全についての監視・監督機能の崩壊が起きた」ことであることを明記すべきである。
(理由)「教訓」という言葉をどのような意味で言っているのかが、今のままではわからないからだ。

P34(3)原子力発電「2 今後の課題と対応 」
(意見)
任意団体にすぎない「原子力エネルギー協議会(ATENA)」が3回も登場するが、規制当局が事業者の虜(とりこ)となっている証左であり、1F事故から何も学んでいないことを示し、削除すべきだ。
(理由)
・現状、原子力規制委員/規制庁は、ATENAと二人三脚で原子力規制を緩和したり、推進したりする「規制の虜」現象が起きている。
・GXの代表格である2023年法改正(原発の停止期間分を最長60年とした運転期間に上乗せできることを可能にした)によって高経年化した原発の稼働を可能にする提案をおこなったのはATENAである。
・いつになるともわからない原発新増設のために「革新軽水炉」の規制の予見性が十分でないとして、ATENAが要望して、原子力規制委員会に「建替原子炉の設計に関する事業者との実務レベルの技術的意見交換会」を開催させている。

P36 (3)原子力発電「2 今後の課題と対応」
(意見)
説明会等双方向の対話に加え」「多様なステークホルダーとの丁寧な対話活動等」(12行目、13行目)に代わり、原子力政策のみならず、エネルギー政策および決定プロセスの初期段階での関心ある公衆との協議を行うことを法律上に位置づけることを「今後の課題と対応」の中に明記すべきだ。
(理由)
欧州諸国等が加盟するオーフス条約(環境に関する、情報へのアクセス、意思決定における公衆参画、司法へのアクセスに関する条約)では、環境に関する政策や計画(エネルギー分野を含む)について、関心を持つ公衆が、意思決定手続きの初期に(第6条2項)参加する手続を取らなければならくなって久しい。「公衆が環境に関する意思決定の過程で効果的に準備し参画できるのに充分な時間的余裕があり、それぞれの段階に応じた合理的な時間枠を伴わなければならない」(第6条3項))と定めており、日本も、遅ればせながら、こうした取り組みを導入すべきだ。行政手続法によるパブリックコメントは、「初期」とは言えない、最終段階に近い参加制度でしかない。市民参加手続を一歩、進めるべきであり、このことこそエネルギー基本計画に書き込み、実行すべきである。

P36 (3)原子力発電「2 今後の課題と対応」
(意見)
東京電力福島第一原子力発電所事故から13年が経過した今もなお、国民の原子力や行政・事業者に対する不信・不安は払拭できておらず」(1行目)というなら、原子力規制の中に、原子力安全(深層防護)の最後の砦である「避難計画」を審査の対象にし、地域住民との協議に位置づける法改正を国会に提出することを「今後の課題と対応」に明記すべきだ。
(理由)
原子力災害は、自然災害との複合災害となることが福島第一原発の教訓だ。しかも、地震、津波による被災者が、原発事故が起きたがために救出されず亡くなったことも、教訓である。複合災害が起きたときの自然災害現場からの被災者救出を含めて、避難計画に位置付け、それを審査の対象とすることが1Fの教訓を元にした対応である。

P36 (3)原子力発電「2 今後の課題と対応」
(意見)
令和6年能登半島地震での経験や教訓」(16行目)というなら、原子力規制の中に、原子力安全(深層防護)の最後の砦である「避難計画」を審査の対象にし、地域住民との協議に位置づける法改正を国会に提出することを「今後の課題と対応」に明記すべきだ。
(理由)
能登半島地震の教訓は、停止中であったとはいえ、もし志賀原発が稼働中で(あるいは計画されていた珠洲原発が住民の反対で中止になっていなければ)、避難(陸路、海路、空路)も屋内退避(家屋崩壊、長期にわたるライフラインの途絶)もままならないことが、明らかになったからだ。実効性のある避難計画が策定されているのかを、地域住民が確認できる法的な手続が不可欠だからだ。

P39(3)原子力発電「2 今後の課題と対応 」
(意見)
既設炉の最大限活用」の内容をすべて削除すべきだ。
(理由)
原発再稼働は「再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入」することを阻害してきた実績があるからだ。

P41(キ)国際的な共通課題の解決への貢献
(意見)
東京電力福島第一原子力発電所事故の経験から得られた教訓を国際社会と共有する」とあるが、むしろ、日本が、スリーマイル島(TMI)原発事故から学んでいないこと、すなわち、TMI2号機事故(1979年3月28日)の翌年から、市民の懸念に対応するために、米国原子力規制委員会は市民パネル(選挙で選出された人とそうでない人、技術者とそうでない人、原発推進、中立、原発反対の立場の人、一般住民と専門家など12人で構成)を13年間、78回にわたって開催したことを、エネルギー基本計画に記載すべきだ。
(理由)
こうした知見が日本ではまったく共有されておらず、いかされていないからである。

P41(キ)国際的な共通課題の解決への貢献
(意見)
東京電力福島第一原子力発電所事故の経験から得られた教訓を国際社会と共有する」というが、とあるが、むしろ、日本が、チョルノービリ原発4号炉事故から学んでいないこと、すなわち、チョルノービリ原発4号には1Fの燃料デブリの5分の1以下の約200トンの溶岩状の燃料が冷え固まったものが、大量、広範囲、硬いとわかり、その取り出しの検討を中断していることや、1997年に欧州復興開発銀行がシェルター改善計画を作って、10年がかりで設計寿命100年の「新安全コンファインメント」(NSC)を完成(高さ110m、幅257m、長さ164m)させ、いずれは4号炉や旧シェルター(日本では「石棺」と呼ばれている)をその中で解体する予定であることを、エネルギー基本計画に記載すべきだ。
(理由)
こうした知見が日本ではまったく共有されておらず、いかされていないからである。

P34 (3)原子力発電「2 今後の課題と対応」への加筆
(意見)
原発の新設やリプレースは認めないことを加筆する。
(理由)
地震大国の日本においては、事故リスクが大き過ぎるからだ。
国際紛争やテロの標的になりうるからだ。

P34 (3)原子力発電「2 今後の課題と対応」への加筆
(意見)
福島第一原発の廃炉が終了するまでは東京電力の柏崎刈羽原発再稼働は認めない。
(理由)
福島県には依然として帰還困難区域が存在し、廃炉の見込みはなく、東京ドーム11杯分の汚染土壌の最終処分の見込みもないからだ。そのような状態を作り出した原子力事業者が、その解決をみないまま、別の原発を稼働することは倫理的に許されない。他の原子力事業者に対しても間違ったメッセージを送るからである。

P34 (3)原子力発電「2 今後の課題と対応」への加筆
(意見)
・原子力規制基準(立地規制)を強化し、原子炉直下に活断層がある場合だけではなく、近傍に活断層がある場合には稼働できないとすべきである。
(理由)
福島第一原発の直下に活断層があったわけでもないのに、過酷事故が複数基で起きたからである。

私が提出した意見をコピペ

Q&Aで「核燃料サイクルは中止すべき」じゃないかなという意見も出ていて、その通りだと思った。思い思いに、みなさん、自分なりの声をあげてみましょう。

意見入力のコツ

オンラインセミナーの司会、満田夏花さんも言っていたが、意見を出す時、パブコメページを開き、①「意見募集要綱」という青字で書かれたファイルをクリックして開いた上で、②「意見募集要綱の全部を確認しました」のチェックボックスをチェックしないと、右下の「意見入力へ」をクリックできないので注意しましょう。

パブコメページ https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620224019&Mode=0 をスクショ

【タイトル画像】

エネルギー基本計画(案)パブコメページをスクリーンショット

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