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歴史に残る判決を!鬼怒川水害控訴審が結審
2024年11月11日、鬼怒川水害訴訟の控訴審の第2回口頭弁論が東京高裁で開かれた。弁論は終結し、結審。2025年2月26日(水)14:00に判決と決まった。2022年地裁判決については2024年9月9日に書いた。
控訴したのは両者
茨城県常総市若宮戸地区(左岸25.3km付近)の溢水氾濫による損害(3000万円)賠償責任については、原告9人の主張を認めたので、国が控訴。
常総市上三坂地区(左岸21.0km付近)での堤防決壊による氾濫の損害(2億2218万円)賠償責任ついては、水戸地方裁判所が、国の主張を認めたので、原告20人(19人と1法人)が控訴した。
第2回口頭弁論では、書面が取り交わされた他、一審の時には、病気で陳述ができなかった原告の細川光一さん(縫製業)が、自らが被った損害について陳述した。
「水害は自然災害だと思っていた」が「人災だ」
閉廷後に原告は弁護団と司法記者クラブで会見を行った。
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「どういった判決を期待したいか」の記者質問に、原告団共同代表の片倉一美さんは、次のように語った。
「ここに座る前は、水害は自然災害だと思っていました。裁判なんて思いもよらなかった。今も、日本全国で毎年、水害が起きていますが、国の責任はどこにも出てこない。被災者はみな、天災だと思って泣き寝入りしていると思う。でも、それは国の責任でないと思い込んでいるだけだ。なぜ鬼怒川水害が起きたかをよく聞いていくと、人災だということがよくわかる。そのことを全国の方に知ってもらいたい。
水害裁判は負けてきた。でも、今回は勝って、「鬼怒川水害判例」が残り、誰が責任を取らなければいけないかを定めてくれる判決を出していただきたい。国が対応したら、すべてとは言わないが、救われる国民がいると信じています」
仮想的に低い堤防を優先したのは誤り
今回、原告側が力を入れたのは、堤防が決壊した上三坂地区地点の堤防整備を下流より後回しにした理由として、国が主張したスライドダウン評価に基づく河川整備の優先順位への反論だ。
スライドダウン評価とは、堤防の幅が、計画した堤防の断面(計画堤防断面)より狭い場合、それをスライドダウンさせ、仮想的に堤防が低いとみなすことを言う。
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国が主張し、地裁が認定した考え方は、この評価により、仮想的に堤防が上三坂より低い堤防整備を優先したが、上三坂も改修を行う予定で遅れていただけだから、国に責任はないというもので、過去の大東水害訴訟判例に依拠した主張だった。
しかし、原告側は、スライドダウン評価によって仮想的に低い①の堤防整備を優先し、実際に堤防が低い③(上三坂)を後回しにしたのは間違いだ。架空の世界ではなく、現実の上三坂の堤防を見て優先すべきだったと主張した。
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余談だが、筆者は関東東北豪雨後の2015年9月14日に取材に行き、上三坂の堤防が他より低いことを実感し、地域住民もそう認識していることを見聞きした。
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会見後は参議院議員会館で集会が開かれ、陳述を行った細川光一さんが「鬼怒川水害裁判を支える会」の染谷修司さんが10月26日に亡くなりました。勝訴をご報告したいと思う」と思いを語った。
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(2024年11月11日筆者撮影)
裁判資料はCALL 4の鬼怒川大水害訴訟で見ることができる。
【タイトル写真】
2015年9月14日、茨城県常総市上三坂地区(左岸21.0km付近)の堤防決壊地点を左手に、上流に向かって筆者撮影。決壊の勢いで、家屋が流出、道路が崩壊、地面がえぐれ、電信柱が傾いていた。