500kgのパイプを人手で回転させる設計 #福島第一原発2号機燃料デブリ
福島第一原発2号機の3gデブリ取り出し失敗に関する疑問。8月22日(既報)に得られなかった答えを(26日と29日の東電会見に出席できず)、9月2日会見で得ようと出向いた(動画いずれリンク切れする)。
タイトルの内容についてだけ知りたい方は、目次から「500kgの押し込みパイプを人手で回転?」に飛んでください。
大臣への説明「延期」の理由を言わない東電
2日午前、東電社長が経産大臣に調査結果を午後に報告するとの報道(NHK)が流れていた。会見のメインはそれだと思ったら、説明資料がない。
「あれ?資料はないんですか?」と聞くと「例の件ですか?」「口頭で説明します」という。首を傾げていると、経産省記者クラブには朝9時半に東電が大臣に説明するとリリースがあり、13時過ぎに延期の知らせが入ったと分かった。
延期理由は、「経産省側から確認したいことを問われて、精査が必要になったから東電側から延期を申し出た」としか言わない。何を問われたのかは、どの記者が何度尋ねても「まとめて回答する」としか言わない。いつになるかも言わない。
私の質問までには、その押し問答が既に十分にあったので、「まとめて回答」させたいことを聞くことにした。
「間違い」ではなく「分かりにくい説明」に変化
ただし、その前に「一夜明け、写真説明が間違っていたと東電広報が:2号機の燃料デブリ3g取り出し失敗」で書いた写真説明の間違いについて、「なぜまだ訂正していないのか」と聞いたら、間違っていないという。
なんのことはない。会見後に、電話取材を受けた担当が飛んで来て、「間違っていた」のではなく「わかりにくいですねと説明した」という。変化した。
「地味な取材ノート」の画面を「こういうことですよね」と私が作ったもの(右上)を見せると、「そういうことです」という。「それなら、この説明(左上)は訂正すべきですよ」と意見したが、「ご意見として承ります」という。
2番目(②)にくるべきものを1本目として1.5m押し込んだという重要な情報だから、東電の写真説明(左)は、控えめにいっても誤解を呼ぶ。はっきりいって間違いだったと認めた方がよい。神は細部に宿る。冒涜しないほうがいい。
ちなみに右で「ラックらしい」と書いたが、「ラック」だと確認できた。またパイプの両端に巻いてある黄色は「養生材」だということも確認できた。
「まとめて回答」を頼んだこと
さて、どの記者が何度尋ねても「まとめて回答する」としか言わないので、まとめる時には回答してもらいたいことを質問(一部再質問)しておくことにした。
改めて、作業員60人の構成(元請、孫請、曾孫請)。東電社員は立ち会ってさえいなかったのか。→東電広報「現在整理中。まとめて回答する」
黄色の養生材が(1か月気づかなかった)一因ではないかということが問われているが、何か新しいことはわかったか?→東電広報「併せて報告する」
元請(三菱重工)の工場のモックアップ(模型)で訓練をした人と、2号機の原子炉前で作業をした人は同じ人か、身につけた装備は同じだったか、作業空間の温度、湿度はどう設定されていたか、模型の重さは本物と同じだったのか。→東電広報「モックアップと現場の違いについても整理をしているところ。改めて報告する」
7月25日の資料には「工場にてモックアップによる機能検証を実施」とあるが、訓練自体、したのか? どのようなものだったのか? 答えるまで聞き続けるしかない。
500kgの押し込みパイプを人手で回転?
もう一つ、この資料で気になることがあった。3gを取り出すテレスコをつけた「内筒」を「押し込みパイプ」で押す時に、「90°反時計回りに回転(人手作業)」させると書いてあった。
高線量で、マスク、装備を身につけ、暑くて、湿度が高くて、狭くて、短時間で 6人8班の交代制で、500kgを人手で回すのは至難の業ではないか?
そこで、「組み立ての押し込みパイプは1個が95kgだが、それを反時計周りで90度回転させる作業を人手でやる予定だったが、5本で500kg近くなるが、人手で行うこと自体、可能なのかの確認も含まれるか?」という聞き方をした。
ところが、「ガイドパイプについては5本あるが、接続をしてパイプの送り装置があって電動で押し込んでいく」と回答があった。はて? 私の読み違えか? と思ったらすぐに「すみません。90度の回転は人手です」と訂正があった。
そもそも、なぜ回転させる必要があるのかも分からない。が、とにかく回答を待つ。正直な回答が来るのかどうかも不安だが。
「現場と広報」、「広報とトップ」のコミュニケーション
さて、経産大臣への説明延期について、唯一、私が聞いたのは、社長のアポ時間前に、東電事務方から経産省事務方に資料を送ったか、それに対して経産省が確認質問をしてきたのかだが、それすら「詳細は分からない」という回答だった。
事故から13年。「現場(受注企業)と広報」、「広報とトップ」のコミュニケーションは、なぜいまだにスムースにできないのだろうか。
【タイトル写真】
2024年9月2日東京電力本社会見(筆者撮影)
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