「新規制基準が奏功するという安全神話」検討チーム
2024年5月20日、第2回原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チームが開催された。
何が決まったか
第2回で何が決まったかというと、第1回(4月22日)の「検討チームの論点及びスケジュール」で「例えば」という言い方で示した3ケースのうち、次回以降は、ケース2、ケース3の屋内退避について考えるための「線量計算」をしてみようということ。
計算に使うのは、原子力研究開発機構が開発した被ばく線量評価コード「OSCAAR」(オスカー)だということ。
仮想的なモデルで仮の線量を計算する
このコードに入力するデータは、原子力事業者にもらうというので、チーム会合後に山本哲也・放射線防護技術調整官に「原子力事業者は誰か」と聞いたところ、「BWR(沸騰水型)であれば、柏崎刈羽原発の東京電力、島根原発の中国電力、女川原発の東北電力、東海第二の日本原電から、データをもらって仮想的なモデルを設定する」のだという。
各原発のデータでシミュレーションをするなら、それをそのまま公開すればいいのに、わざわざ「仮想的なモデルを設定する理由は何か」と問えば、「ある程度、代表性のあるプラントにデータ置き換えるため」だという。
新規制基準対策が功を奏するという安全神話
3つのケースは過酷事故が起きたときの想定だが、問題は3ケース全てが、新規制基準への対策が功を奏するという前提に立っていることだ。
ケース1は、新規制基準が奏功し、著しい炉心損傷が生じない。
ケース2は、新規制基準が奏功し、著しい炉心損傷が生じるが、格納容器が破損せず、放射性物質が放出される。
ケース3は、新規制基準が奏功し、著しい炉心損傷が生じるが、フィルタベントが奏功し、格納容器は破損しないが、放射性物質が放出される。
つまり、今回このチームは、新規制基準が功を奏するので、メルトダウンしても、格納容器は破損しないというスタート地点になって、屋内退避について考える。
最悪の事態である「格納容器の破損」が起きないという想定のもと、
ケース2「放射性物質が漏えいする」
ケース3「フィルターベントを通って放射性物質が漏えいする」
そのときにどれぐらいの放射性物質が5〜30キロ圏内(UPZ)に到達するのかを検討するのだという。その結果を見て、屋内退避について議論する。
つまり、「原子力災害対策指針」と関係のない議論
国際原子力機関(IAEA)の深層防護の考え方をもとに言えば、日本では、原発で過酷事故が起き、深層防護の第4層までの放射線防護が失敗した場合の第5層が「原子力災害対策指針」(以後、指針)だとされている。
しかし、上記で書いたように、今回、検討するのは、第4層が功を奏した場合。それはもやは「原子力災害対策指針」とはまったく関係がない話だ。
これについてもチーム会合後のぶら下がり取材でいの一番に確認した。
これでいいのか!? これでは、「原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チーム」という名の「新規制基準が奏功するという安全神話検討チーム」ではないか?
【タイトル写真】
2024年5月20日第2回「原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チーム」にて筆者撮影。