岸田内閣:原発「運転期間」の削除の立法事実
岸田内閣は、目下、原発の運転期間を削除する法案を用意している。しかし、閣議決定寸前で、「国会審議などにおいてしっかりと説明ができる準備を進めた上で」(既報)と待ったをかけた(逆に読めば、老朽原発を管理するルールづくり(既報:原発「運転期間」延長の焼け太りー電気事業法)を急がせているとも言える)。そこで、そもそも立法事実は何かを一度整理しておく。
現在の2つの原発規制ルール
原発を規制するツールには、現在、大きく分けて2つある。
設置許可:原発施設が満たすべき(新規制)基準や電力会社の能力を原子力規制委員会が判断するツール(原子炉等規制法第43条の3の6)。
運転期間:原子力規制委員会の判断で原則40年(最長60年まで延長)稼働できるが、それ以上は問答無用で廃炉にするツール(原子炉等規制法第43条の3の32)。
2つの違いは、前者は人間の判断により左右されるが、後者は人間の判断によらず老朽原発が自動的に廃炉になるということ。
「運転期間」60年超の立法事実
岸田内閣は、後者のツールを原子炉等規制法から取り去る一方、既に(原発「運転期間」延長の焼け太りー電気事業法)で書いたように、電気事業法に60年超運転を可能にする要件を書き込もうとしている。
その立法事実(立法や法改正のきっかけや背景となる事実)は、少なくとも3つ、原発事業者から提案や要望としてあったことが、国会審議で明らかにされたことも書いた(原発の運転期間の延長「要は、お金の話なんじゃありませんか、委員長?」)。改めて、具体的にそれらを辿ると以下の通り。
1.2017年、原発事業者が規制庁に提案
2.2019年、日本経済団体連合会が提案
3.2021年、電気事業連合会が「安全対策投資の回収が厳しい」から要望
どこまで言っても、原子炉等規制法から運転期間を削除して、電気事業法にもっていく立法事実はこれしかない。この際、ここだけは強調しておさらいした。
【タイトル写真】
2023年2月22日(水)第1回高経年化した発電用原子炉の安全規制に関する検討チーム (筆者撮影)