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放射線審議会の議論:汚染土壌を使う場所は「現存被ばく」と「計画被ばく」のどっち?
10月23日に続いて、明日(12月10日)、放射線審議会が開催される。
前のコマで、超党派議員連盟「原発ゼロ・再エネ100の会」での福島の中間貯蔵施設にある除去土壌の今後について環境省らと質疑を行ったことを書いたが、放射線審議会に関する質疑については、詳述しなかったので、ここで記録しておく。
10月23日の放射線審議会では、全国の公共事業等で汚染土壌を使う場所を、原発過酷事故後の「現存被ばく状況」とみなすのか「計画被ばく状況」とみなすのか議論が分かれたという話がでた。文書回答をここに↓再掲した上で、一部抜粋し、口頭で行われた質疑も記録しておく。
上記ファイルの文書質問4番目より
Q1 環境大臣が放射線審議会に諮問した基準の前提に「現存被ばく状況」 (1~20mSv/年)を置こうとしているのは、全国の公共事業等で除去土壌を「復興再生利用」するために、全国を一律に「現存被ばく状況」に 置くという考え方か。
Q2 1については国民にはどのように説明するつもりか。
(環境省の文書回答)
○ 御指摘の放射線審議会への説明資料においては、
「復興再生利用・最終処分における一般公衆の追加被ばくについて、
➢ 事故後の対応であることを踏まえ、現存被ばく状況における参考レベル(1〜20mSv/年)
➢計画被ばく状況における公衆被ばく線量限度(1mSv/年)
の両方を勘案し、1mSv/年を超えないこととする。」としております。
○ さらに、復興再生利用・最終処分について、線量基準(1mSv/年)以下とすることに加え、防護の「最適化」に係る国際的な安全基準を踏まえ、 経済的・社会的要因を考慮して合理的に達成可能な範囲で、追加被ばく線量を更に低減することについて、地域の関係者を含む関係機関等の参加の下で、オプションを検討することとする、としております。
○ 復興再生利用等の実施に当たっては、これらの内容について御説明したいと考えております。
「両方を勘案した結果としてですね」
文書回答に加えて、次のような口頭での補足があった。
環境省:一言、言っておきたいのは、現存被ばく状況に日本全体を置いて1〜20mSvの被ばくを許すようなことは考えていません。ここの回答にある通り、説明資料において、「計画被ばく状況における公衆被ばく線量限度(1mSv/年)」と「計画被ばく状況における公衆被ばく線量限度(1mSv/年)」の両方を勘案した結果としてですね、1mSv/年を超えないように進めていくというような方針にしております。
さらに復興再生利用とか最終処分もそうですが、線量基準以下とすることに加えて、防護の最適化にかかる国際的な考え方も踏まえて、合理的達成可能な範囲で被ばくをさらに低減することを地域の方々とするというようなことも考えております。
こういった中で進めていくことを考えておりますので、復興再生利用等の実施にあたってはこれらのことについてしっかりとご説明をしていきたい。
文書質問4番目続き
Q3 10月29日の放射線審議会では「現存被ばく状況」(1~20mSv/年)を勘案することについて異論が出たが、どのようなものだったか。放射線審議会の事務局である原子力規制庁に尋ねる。
規制庁(口頭回答):10月29日の放射線審議会が行われ、その中で、環境省から一般公衆の現存被ばく状況と計画被ばく状況の両方を勘案して1mSv/年を超えないこととするというように説明がありました。
委員の中から『「現存被ばく状況」か「計画被ばく状況」かの取り扱いにつきまして、除去土壌は福島県外で使用することを想定すると、計画被ばく状況下での利用になる』というご意見だったり、『計画被ばく状況は、線源の意図的な導入に伴う状況として定義されているので、除去土壌に関しては現存被ばく状況として説明した方が理解できる』という両者のご意見があった。また『両方を勘案するという説明だが、曖昧な印象を持つため、コミュニケーションの際に留意が必要だ』といった趣旨のご意見がありました。
汚染土壌を使う場所は「現存被ばく状況」か?「計画被ばく状況」なのか?
つまり、「現存被ばく状況」と「計画被ばく状況」の両方を勘案するというが、結局、どっちなのか、という話だ。これについて放射線審議会の事務局である規制庁からは、「次の放射線審議会で改めて環境省から回答をいただくという方針」だと回答した。以下、その部分のメモを貼り付けておく。
原発ゼロ・再エネ100の会 阿部知子衆議院議員:結果的に「計画被ばく線量になったわけですね」
規制庁:審議会の中で議論が起こり、課題、宿題として、環境省にあらためて考え方を示してくださいということを言っておりまして、次の放射線審議会で改めて環境省から回答をいただくという方針になった。
阿部議員:次の放射線審議会の目処はいつか?
規制庁:これは規制庁から発表されているが、12月10日の予定。
まさの:「現存被ばく状況」か「計画被ばく状況」はICRPの2007年勧告だと思うが、正式に日本として取り入れはしたのか?
規制庁:詳細把握していないが、放射線審議会の中で議論はされていて、各法令で必要があれば取り入れると認識しいる。すみません、把握していなくて。
阿部議員:重要なところなので、勧告を取り入れたかどうかということは、お答えを準備していただけたらと思う。
参加者:部分的に取り入れたところがあるが、まだ議論中だと思う。
阿部議員:ICRPの2007年勧告は個別に検討しているということか?
参加者:そうだと思う。
まさの:(もしそうなら)ICRPの2007年勧告の1〜20mSv/年(現存被ばく状況)を参考レベルとして1mSv/年を選んでいくというのは、これはこれですごく重要なことであって(略)ちょろっと復興再生利用という土壌の話でこれをオーソライズしてしまうようなやり方はどうなのか。
規制庁:色々、ご指摘いただいたが、まず、2007年勧告の参考レベルは、先ほど仰られたように各法令ごとに協議して決めることになっていて、実際にどう取り入れたのかどうかは検討中になっておりますというのと、法令ごとに協議することになるので、一律に取り入れるかどうかというのは、今後、検討していく。
そして明日(12月10日)の放射線審議会の議題1と議題3は次の通り。
議題1 ICRP2007年勧告の取り入れ(実効線量係数等)の今後の進め方について
議題3 放射性物質汚染対処特別措置法の規定に基づく放射線障害の防止に関する技術的基準の策定について(諮問)
どんなやりとりになるのか、明日の放射線審議会に注目する。
【タイトル画像】
放射線審議会総会 2024年10月29日 163-3-2号:放射性物質汚染対処特別措置法の規定に基づく放射線障害の防止に関する技術的基準について(説明資料等)(環境省提出資料)より一部抜粋