日本最古の高浜原発1号機再稼働:関西・関東圏に電力を送る福井県で
(7月29日タイトルを変更:「関西圏に電力を送る」としていましたが、関西電力はいわゆる「東京電力エリア」でも販売をしている(*)ので、「関西・関東圏に電力を送る」と変更しました。)
関西電力は今日(7月28日)、高浜原発1号機を再稼働させ、明日29日に臨界に達すると発表した。
49歳の原子炉:設計は破綻した米企業
高浜原発は、1957(昭和32)年に原子力部門を発足させた関西電力が、高浜町議会の1966(昭和41)年の誘致決議を受けて建設されたものだ。
1号機は米ウェスチングハウス(2017年に経営破綻)の基本設計を元に三菱重工業が製造した。1974(昭和49)年3月に初臨界に達し、49年が経過している。
消費者のサイフから環流していた3.6億円の原発マネー
高浜町と関西電力の蜜月関係が続いていたことは、2018年、金沢国税局の税務調査をきっかけに明らかになった。
2011〜2018年、関西電力の役職員75名が、高浜町の森山栄治・元助役から約3億6000万円相当の金品を受け取っていた。
関西電力の報告書を見れば、そのお金を究極的には誰が支払っていたのかは、想像に難くない。関西電力の発注事業を、元助役が顧問を務めた土木建築会社「吉田開発」が直接・間接に受注した事実から言えば、電源開発促進税や電力料金を払っていた消費者だ。約3億6000万円は消費者のサイフを経由して、関西電力の役職員に還流した原発マネーだ。
2021年に大阪地検特捜部が不起訴処分にし、2023年4月28日になって、大阪第二検察審査会が「起訴議決に至らない」とし、誰も裁かれていないことは釈然としないが、原子力ムラの闇を垣間見る事件だった。
■2020年3月14日関西電力「金品受取り問題に関する第三者委員会からの調査報告書の受領について」
■2020年10月6日 経産省「関西電力株式会社から報告徴収命令に対する追加報告を受けました」
■2020年3月25日 東洋経済 「原発の闇」を利用した関西電力首脳の罪と罰 原発コスト専門家が語る「調査報告書」の核心
電力自由化にも独禁法にも反して
一方、2023年3月、公正取引委員会は、関西電力、中国電力、中部電力、九州電力が、独占禁止法違反行為をおこなったと発表。彼らは電力自由化の趣旨に反し、顧客を奪い合うことを避けるためのカルテルを結んでいた。
これを受け、初めて気付いたかのように、電力の自由化を監視する役目を果たすはずの電力・ガス取引監視等委員会が経産大臣に勧告を行い、経産省が業務改善命令等を行ったのは、つい先日(2023年7月14日)の話。
それから今日までわずか2週間だ。こんなにも反社会的な活動を続けてきた企業に原発を運転させることができる法律しか、この国にはない。それどころか、国はグリーントランスフォーメーション(GX)の名で、原子力ムラ全般に支援の手を差し伸べようとしている。
抗議声明「事故が起きれば偏西風の風下にも」
そんな中、名古屋地裁で高浜原発1号機等の運転期間延長取り消しを求める訴訟などを行ってきた老朽原発40年廃炉訴訟市民の会は、7月3日、福井県知事と福井県議会に「高浜原発の運転再開同意を撤回して!」と要請、また7月19日には弁護団と共に「全国一古い「老朽原発」を再稼働するな!」と抗議声明を、国と関⻄電⼒に発した。
同会らは、原子炉等規制法による原則40年の運転期間は、東京電⼒の福島第⼀原発1号機が運転開始40年近かったことが、その立法背景だったことを踏まえ、次のように強調した。
福井県の原発なのに、なぜ名古屋で訴訟が闘われているのか。多くの人は忘れているかもしれないが、福島第一原発事故では、海(東)へと高濃度の放射能雲が流れたために、陸域における汚染の範囲は、今の汚染範囲にとどまった。それでも広大過ぎるほどの人々の故郷が奪われたままなのだ。しかし、福井県で起きる原発事故はそれでは済まない。
この裁判で判明した、原子力規制委員会による日本最古の原発の審査の実態は、こちらで書いた通り。より詳述すべきだが、今日はここまでにする。
(*)新電力ネットのランキングによれば、関西電力は、関東地方の電力の販売量ランキングで第2位(2023年7月29日参照)となっている。
【タイトル写真】
関西電力 原子力発電所の運転出力 リアルタイム表示(7月28日17時0分時点データ)をスクリーンショット
オススメしたい関係報道 使用済み燃料について
「国内最古の原発が再稼働…高浜1号機 使用済み核燃料の行き場は確保されないまま」2023年7月28日 東京新聞
「これが「県外搬出」? 使用済み核燃料がフランスへ 対象わずか5% 原発の地元福井は戸惑い」2023年6月20日 東京新聞