燃料デブリ3グラム以下の取り出し?
気候ネットワークのウェビナーで7月29日にお話した中(福島原発事故と13年後の今)から燃料デブリの取り出しについて、使ったPPT資料をもとに記録しておきたい。
中長期ロードマップに遅れ
福島第一原発の燃料デブリの取り出しは、「廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議」で決定する「中長期ロードマップ」で、工法の決定が2018年度上半期、取り出し開始が2021年内だとされていた。しかし、現在も見通しが立っていない。
支援機構は工法を選びきれず
原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の「燃料デブリ取り出し工法評価小委員会」は、2024年3月に報告書を出した。「燃料デブリの取り出しの難しさ」は言うまでもない。2号機の原子炉内部は後述するように650シーベルト(Sv)と推定され、数十秒で死に至るレベル。短時間でさえ立ち入ることができない。
同小委員会は3工法のメリット・デメリットを検討した結果、気中工法と一部で充填固化を行う工法を組み合わせ、水遮蔽の機能を活用すべきだと結論した。結局、3工法のどれだと選び切れず、3工法のいいとこ取りをする検討を提案したに過ぎない。
試験的取り出しさえ困難続き
耳かき一杯分のデブリを試験的に取り出してみようという試みも困難続きだ。原子炉内部に通じる貫通部(通称:X6ペネ)のハッチを開けようと思ったらボルトが固着。ボルトを外せたと思ってハッチを開けたら、溶融堆積物が出入り口を塞いでいた(東電は、一度はその堆積物の上部に穴を開けてカメラ撮影を行っているが、塞がり具合がここまでとは知られておらず、以下の写真が昨年、東電会見で出てきたときには大騒ぎになった)。今度はようやくそれを取り除いて、マジックハンドのような器具(通称:テレスコ)をX6ペネから差し込む準備ができた。
2019年にカメラで撮影された内部が以下だが、遠隔操作でテレスコの行く先には、これが待っている。
24mSv超なら取り出さない?
そのテレスコの先に「グリッパ」なるタイトル写真で示した治具を先端につけて、8〜10月を目処に3グラム以下のデブリを試験的に取り出すと東電が発表したのは7月25日。中長期ロードマップ会見の場だ。
デブリから20センチ離れたところで測定を行ない、24mSv以下なら、取り出すが、24mSv超なら、なんと原子炉に戻すのだという。
「24mSvの根拠は何か?」という記者質問には「被ばく線量から算出した」という回答があった。しかし、それでは意味が分からない。
そこで、「最大どれくらいが取れてしまうと想定しているのか。24mSv以下でなければ取り出さないのは、被ばく防護以外に何か理由があるか」と聞いてみた。
東電広報の回答は「3gなのでそれぐらいになると考えてはいるが、どれくらいになるかは正直、把握できない」という。
取り出したら茨城のJAEAに?
測定の結果、線量が取り出せるレベルなら、容器に入れた後、人手でビニール袋で養生し、もう一つの容器に入れ、台車に乗せてゴロゴロとグローブボックスに運び入れる。
たった3gを取り扱うグローブボックスだが、写真を見るとやけに手を突っ込む穴が多い。念のために会見後に「どうしてこんなに沢山の穴が?」と尋ねるも、穴が多いのは「どの角度からでも取り扱うことができるように」だという。
「測定した後はどこへ運ぶのか」については茨城にある日本原子力研究開発機構(JAEA)に運ぶというので、高濃度のデブリを運搬するための申請手続を尋ねると「まだわからない、これからのことだ」という回答が後日あった。
果たして、3g以下の試験的取り出しはできるのか?内部はケタ違いの650Sv想定だ。思惑通り24mSv以下で3g以下を取り出せたとして、この調子では880トンの取り出しには何年かかるのか。
【タイトル写真】
福島第一原発2号炉から3グラム以下の燃料デブリをつかむ予定の「グリッパ」(2024年7月25日 東京電力ホールディングス株式会社提供)
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