原子力災害対策指針(原災指針)を「見直したい」と山中原子力規制委員長が1月10日の会見で回答し(既報)、その後、論点整理を2月の半ばぐらいまでに原子力規制庁が行い、原子力規制委員会がそこから「議論を開始したい」(1月31日会見録)と山中委員長は述べた。
しかし、紆余曲折中なので、改めて、この件を原子力規制委員たちが1月17日の原子力規制委員会で、どのように議論したのかを以下に記録しておく。
1月17日原子力規制委員会での委員5人の発言
この発言を受け山中委員長は、1)委員たちの発言を矮小化し、2)地震とは関係ないという矛盾に満ちた姿勢で、論点整理を片山長官に依頼した。以下の通りだ。
矮小化された4委員発言と「地震とは関係しない」と矛盾に満ちた委員長の姿勢
規制庁の「基本的な考え方を変更する必要はない」という姿勢
その後、原災指針については、多くの声が上がった。1月31日には、能登半島地震で、原災指針の欠陥が露呈したから「原発をこれ以上動かすべきではない」との要請が行われた。さまざまな問いが問われ、応答した原子力規制庁からは、次のような回答があったという。
「1月17日に開催された原子力規制委員会で行われた議論では、家屋倒壊が多数発生するような地震等の自然災害と原子力災害との複合災害に際しては、人命最優先の観点から、まず自然災害に対する安全が確保されたあとに原子力災害に対応することが重要であるという考え方が示された。能登半島地震を踏まえ、原子力災害対策指針における防護措置の基本的な考え方を変更する必要はない、というのが委員の共通認識であった。原子力規制庁として能登半島地震を踏まえて原子力災害対策指針を見直すことは考えていない」。(FoEジャパンの集会報告より)
しかし、上に書き出した2024年1月17日原子力規制委員会議事録からも明らかなように、それが「委員の共通認識」とはとても言えない。論理的であること、誠実であることは、行政に携わるものとしては当たり前のことであるにもかかわらず、彼らは、今、その真逆の姿勢で仕事に臨んでいる。
ちなみに、1月10日に山中委員長が原災指針の見直しに言及したときの記者2人との質疑を貼り付けておく。
1月10日の山中委員長の見直しの姿勢
線量(モニタリングポスト)に応じた避難行動ができない
つまり、、原災指針で「線量に応じた避難行動というのを決めている」「原子力災害対策指針の在り方から考え直す必要もある」と問われ、山中委員長自身がモニタリングポストが「116か所のうち最大18か所欠測した」と述べた。
そこで、同様に、「18台のうち13台は輪島市と穴水町に集中していた」「珠洲市では9割の家屋が全壊あるいはほぼ全壊」「逃げようと思っても道路も寸断されているし、港も使えない」と指針の見直しについて問われると、委員長は気象に左右される航空機や、道路寸断時には使えないモニタリングカーで測定すると事実を無視した発言を言い、家屋倒壊についてだけは、「木造家屋が多いようなところで屋内退避ができないような状況というのが発生した」として、「知見をきちっと整理した上で、もし災害対策指針を見直す必要がありましたら、そこはきちっと見直していきたい」と述べたのだ。
能登半島地震を踏まえない指針見直しはありえない。
【タイトル画像】いまだに1つが欠測しているモニタリングポスト
石川県 環境放射線データ リアルタイム表示(県内全域) より
観測日時:2024年02月05日 10時00分