被ばく事故:東電は元請4人を認識していた
11月30日、東京電力の「福島第一廃炉推進カンパニー」の面々が、毎月最終木曜恒例の「中長期ロードマップ進捗状況」会見を開いた。
新しい事項に関する質問の後、被ばく事故について、東芝エネルギーシステムズと東電が、事故後3週間して初公表したことについて、福島第一原発の廃炉・汚染水対策最高責任者である小野明氏に見解を尋ねておくことにした。
現場に「5人いた」が「10人」になり、10人のうち「4人が元請けの東芝エネルギーシステムズ」の人間で、うち1人による弁の操作が事件の原因だったことが、「3週間して初めてわかった」ことについての受け止めを、と尋ねた。
私自身はビックリだったので、それに近いシンプルな感想を想定していた。ところが、小野氏は、11月16日以前と変わらない感想を言い始めた。
11月16日以前と変わらない感想
元請4人の存在「隠すつもりは」なかった?
事業者と取材者で「驚きポイント」が違うのは仕方がない。が、私が聞きたかったのは、なぜ基本情報が3週間も隠されていたのか。そう気づき、聞き方を変えた。
「伺いたかったのは、5人と言っていたのが10人で、元請の存在が隠されていた。つまり偽装請負の隠蔽工作だったのではないかと思えるのですが」
すると、代わって回答したのは、広報担当の松尾桂介氏だった。
こちらで書いたように、11月16日に初めて公表したことはたくさんある上に、推測も混じっている。他にも隠していることがまだあるのではないかと思えば、東電の再発防止策が本当に再発防止策になるのかも信用できない。
多重下請け構造「公表予定ない」
納得がいかず、もう一度手をあげ、ALPSにおける多重下請け構造について聞いた。質問趣旨を問われ、どう聞けば伝わるかとしどろもどろ気味で質問した。
「今回は指示命令系統が一社ではなく多重にわたっていた。カッパを着ない、弁の操作が行われた、などは多重下請け構造に(原因が)あったと思うので、果たして同じような構造が6系統(既設、増設ALPS)全てで行われているのかどうか。同じチームが6系統全ての洗浄作業を行なっていたのかどうかとか」
すると、今度は、ALPS処理水対策責任者の松本純一氏が答えた。
「請負体制の公表」それだ!
質問下手の功名か、こちらの言いたいことを汲み取ってくれた。
請負体制の公表。それだ!それをして欲しいのだ!
「ぜひ公表していただきたいと思います」と要望してマイクを返した。
繰り返すが、松本氏は、
・弁操作により水圧に急激に変化を起こしてしまったこと、
・ホースが不十分な固縛であったこと、
・不十分な現場管理体制と、防護装備を適切に着用しなかったこと、
その3点が主要な要因だと述べ、
背後要因として多重請負構造があるかもしれないと言った。
しかし、その3点は、多重請負構造に起因しており、ほぼ根本原因だと言ってもいいのではないか。
【タイトル写真】
福島第一廃炉推進カンパニーの面々。左から松尾桂介氏(広報担当)、小野明氏(プレジデント兼廃炉・汚染水対策最高責任者)、松本純一氏(ALPS処理水対策責任者)、高原憲一氏(広報担当)。2023年11月30日中長期ロードマップ会見にて筆者撮影。
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