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敦賀原発2号機の新規制基準適合性:記者たちが原子力規制委の覚悟を迫った
福島第一原発事故後の新規制基準に基づいて、原発が不適合とされる日が来そうだ。
7月24日の会見で覚悟を迫り続けた記者たち
ほぼ確実にそうなること(破砕帯のデータ改ざんが起きたときからそうすべきだった)が見えてきた時から、報道各社は毎週の記者会見で、毎回のように山中伸介原子力規制委員長に見解を尋ね続けた。
山中委員長「社長との意見交換」で「これを最後にしましょう」と
以下は、その一部に過ぎないが、7月24日の会見模様だけ貼り付けておきたい。
○記者 共同通信社のウエムラです。(略)今週26日金曜日に敦賀原発の審査会合を開くという発表がありました。この会合でどういったことを議論されるのか、改めて教えていただけますでしょうか。
○山中委員長 26日に敦賀2号機の審査をするということは伺っております。これまでの流れからいたしますとK断層の連続性についての議論を26日にすることになるかと思います。(略)
○記者 朝日新聞のフクチと申します。(略)早ければ26日にも結論が出るわけですけど規制委員会規制庁に取ってこの敦賀の審査というのは特別な意味を持つ面もあるのかなと思うのですが(略)。
○山中委員長 (略)審査そのものは9年近くかかっているということで、その中で、データの書換えですとか、あるいはそのデータの間違いですとか、サンプルの取り違えとか、審査に関する検査をしなければならないという事態に陥った審査であるという、非常に異常な形での審査であったというふうな理解では私自身おりますし、規制委員会としてもこれは非常に異例の審査ではあったというふうな理解でおります。
○記者 読売新聞のハヤシと申します。(略)今回のたしか1年前に出された補正書を最後というか、最終版として議論を進めていくということで先方の事業者のトップとのその合意がした上で行われてきたという御説明があったのですけれども、当時山中委員長がおっしゃっていた言葉をちょっと振り返ると「これが最後のつもりで」というような表現を多分されていたのではないかと思うのです(略)
○山中委員長 まず、今回の審査を始めるに至った経緯を考えていただきますと、やはりこれは繰り返しになりますけど、9年もの時間をかけて、ほとんど敷地内の活断層、特定の活断層の活動性についての議論を繰り返してきたわけでございます。その中で、データの取り間違いですとか、資料の取り間違え、あるいはデータの改ざんといった、検査をしなければならないような事案が、この9年間の中で、審査の中で発生をした。その上で、社長との意見交換を改めてさせていただいて、これを最後にしましょうということで、補正書を出していただいたわけでございます。しかも、補正書に基づいて、1年間かなり集中的に、これは事務方にも確認を後でしていただければと思いますけれども、これだけ論点が絞られた案件について、集中的にこれだけ審査をしたというのは初めての例でございます。
それだけ時間をかけて一定の結論を審査チームとして出されるということの重みは、私は非常に大きなものであるというふうに感じておりますし、最終的な結論というのは、委員会で改めて議論させていただきたいと思いますけれども、まずは26日の審査会合で、審査チームが出された結論を聞いた上で、委員会としては結論を出していきたいというふうに思っております。
7月26日、日本原電幹部が粘り続けた審査会合
そして26日、午後に敦賀原発の審査会合が始まった(以下はその部分の頭出し)。
最終的なまとめで、敦賀原発2号機事業者である日本原電は、さらなる追加説明資料を提出したいと粘ったが、石渡明委員は「最終的な結論を出せるような段階に達していると考える」と告げて審査は終了。
原子力規制庁は「K断層の活動性と連続性について、設置許可基準規則第3条第3項に適合していると認められないと判断した」とまとめた。(以下動画は、最後のまとめから粘り、結論まで頭出し)。
7月26日審査会合の原子力規制庁によるまとめ資料2つは次の通り。
第1272回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合 当日作成資料:
「敦賀発電所2号炉K断層の活動性及び連続性についての基準適合性の確認結果」「敦賀発電所2号炉審議結果」
なお、ここで書かれている実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則 第3条第3項は以下の通り。たった一文、されど一文だ。
(設計基準対象施設の地盤)第3条
3 耐震重要施設及び兼用キャスクは、変位が生ずるおそれがない地盤に設けなければならない。
日本原電が自社で廃炉を判断した敦賀原発1号機に続いて、もやは、2号炉も廃炉せざるを得ない流れだ。記者たちは後戻りさせまいとでも言うように、原子力規制委員会の覚悟を迫り続けた。
余談 東海第二原発は?
なお、同社は4月と7月に詳述したように、東海第二原発では不良施工が発覚した防潮堤で、工事を設計から根本的にやり直すことになっている。
2024年4月19日
東海第二原発の防潮堤不良施工について:県議は、市議は、村議は、規制庁は2024年7月11日
東海第二 防潮堤は「やり直し」
茨城県の江尻議員が述べたように(4月19日で既報)、東海第二原発もまた「廃止すべき原発ではないか」と思うのだが、いずれによせ、今後、排出される巨大な原発ゴミ問題は、永遠の時を刻み始めることになる。
【タイトル画像】
2024年7月26日 原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合資料「敦賀発電所2号炉K断層の活動性及び連続性についての基準適合性の確認結果」より筆者作成