点検できない1F原発も、点検できる老朽原発(美浜原発3号機)も、配管には穴があく
8月に福島第一原発2号機で、使用済燃料プールから溢れる水を受け止める「スキマサージタンク」が空になった。高線量環境なので、原因は配管に空いた1センチの穴だったと発表されたのは2ヶ月後の10月3日だった(既報)。その続報。
ここまでの取材で分かったことは
事故前は配管の肉厚検査をしていたが、事故後は点検していないので腐食が拡大した。
美浜原発で4人が死亡した事件(参考:失敗知識データベース)の配管は、高温高圧水が流れる配管(発電用タービンを回した高温高圧水を循環させる一次系配管を冷やす二次系配管)だった。
一方、福島第一原発(1F)2号機は美浜と材質は同じ炭素鋼配管だが、水温は燃料プールを冷却する65度以下の一次系配管だった。
美浜原発で起きたのは「流れ加速型腐食」だが、1Fの配管の穴は、高線量空間にあるために、穴が空いたメカニズムの詳細調査はしない。
このことから言えるのは
配管は、高温高圧でなくても65℃程度の水が流れるところで腐食して穴が開くことがある。
事故原発でも通常の原発でも点検ができない箇所ではダメージは拡大するだろう。
突き詰めれば
1Fで事故処理の優先順序を考え直すべき
1Fでは、点検ができずに防止できない損傷が今後も突発的に起きる可能性がある。
だから、事故処理の優先順序を考え直すべきだ。燃料デブリの試験的取り出しは優先すべきことではない。突発的かつ致命的な故障が起きそうなところから事故処理を進めるべきだ
事故が起きていない原発の運転期間は
もともと40年を想定して製造された原発は、事故などにより劣化が起きていなくても、「点検」できない・しない部品がある以上、運転期間は40年でとどめるべきだ。
山中委員長に聞きたかったこと
10月9日の定例会見では山中委員長にこのことをぶつけてみることにした。聞きたかったのは、上記の2つの点だった。しかし、回りくどい聞き方になり、聞きたかった回答を引き出すことができなかった(反省)。点検ができない部品のある通常の原発の運転期間については食い下がってみたが、それでもダメだった。
「福島第一原発以外の通常の原発」のことを指して「点検対象外になっている部品がいっぱいある老朽原発」を延命させる政策は「誤りだったのではない」と聞いたが、山中委員長はあくまで1Fは特殊だという回答に終始した。
美浜原発(47歳)の配管に2つの穴
そして、それみたことかと言いたくなってしまうことが起きた。美浜原発3号機(47歳の老朽原発)の炭素鋼配管に、3ミリと6ミリの穴があいて、その周辺に配管の厚みが減肉している(薄くなっている)現象を確認したという。
10月5日に「巡視点検中の運転員」が見つけたとリリースに書いてあるので、「定期検査」の対象箇所だったとしても、その時点では、異常が見過ごされたことになる。しかし、リリースされたのは10日。
「今後、プラントを停止し、原因調査を実施する予定」とあり、関西電力のウェブサイトで確認すると、11日12時50分現在(加筆:13日現在も)も停止していない。
少しでも長く、1ワットでも多く発電したいという姿勢なのだろうか。
2004年の死亡事故原因は配管取替えの先送り(10月13日加筆)
2004年の美浜原発3号機の死亡事故の原因について、関西電力は事故の直接的な原因は「本来管理すべきであった箇所を長年にわたって管理できていなかった」、また「事故の調査を進める過程で、配管の取替え時期を評価する際、『原子力設備2次系配管肉厚の管理指針』(PWR管理指針)を不適切に運用し、配管の取替えを先送りしていた」とした。20年が経って同じことが繰り返されているのではないか?
2024年の2穴発見後、原発停止は10日先送り(10月16日加筆)
そして10月15日、5日に穴が確認されて以後、10日先送りした後、関西電力は「美浜発電所3号機においては、10月15日10時00分に負荷降下を開始しました。同日18時頃に発電を停止し、20時頃に原子炉を停止する予定」だと発表した。
【タイトル画像】
2024年10月9日 原子力規制委員会後の山中信介委員長会見にて筆者撮影。
この日、新宿区議会取材(既報)を終えて、六本木一丁目にたどり着いた。
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